日本の橋が一気に老いる。建設50年以上の橋が7年で13万→24万橋に

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普段、何気なく車や電車で渡っている橋。

その多くが今、急速に「高齢化」しています。

国土交通省が2026年8月26日に公表した最新の「道路メンテナンス年報」によると、
建設から50年以上が経過した橋梁は、2018年度末の約13万橋から、2025年度末には約24万橋へ増加しました。

わずか7年間で、約11万橋増えたことになります。

ただし、

「日本の橋が急に壊れ始めた」

という話ではありません。

日本では高度経済成長期を中心に、道路や橋が集中的に整備されました。

その大量の橋が今、次々と建設後50年という節目を迎えているのです。

一方、国の点検では、早期または緊急に措置が必要と判定された橋は、2018年度末の約6.9万橋から2025年度末には約5.1万橋へ減っています。

つまり今、日本の橋では、

古い橋は急増している。しかし、危険度の高い橋への修繕も進んでいる

という二つの変化が同時に起きています。

これから施工管理者が向き合う現場も、「新しい橋をつくる仕事」だけではありません。

既存の橋を点検し、補修し、できるだけ長く使う。

日本のインフラは本格的な「維持管理の時代」に入りつつあります。

道路・橋・水道を誰が守るのか|老朽インフラ時代の建設業界

2026.05.11

建設50年以上の橋が7年間で約11万橋増えた

国土交通省によると、建設後50年以上が経過した橋梁は、

  • 2018年度末:約13万橋
  • 2023年度末:約21万橋
  • 2024年度末:約23万橋
  • 2025年度末:約24万橋

と増えています。

2018年度末から2025年度末までの7年間だけで、

約13万橋 → 約24万橋

です。

ほぼ倍近くになっています。

では、なぜこれほど急激に増えているのでしょうか。

理由の一つが、日本で橋が大量に建設された時期にあります。

高度経済成長期には、

  • 高速道路。
  • 国道。
  • 地方道路。
  • 都市部の道路網。

こうした交通インフラが全国で急速に整備されました。

過去の国交省資料でも、建設年度が分かる橋のうち、昭和30年代から50年代に建設されたものが多いことが示されています。

当時つくられた橋が、今まさに次々と50年を迎えているわけです。

つまり「橋が突然古くなった」のではなく、

同じ時代につくられた大量の橋が、一斉に高齢期へ入っている

と考えた方が分かりやすいでしょう。

「50年経った橋=危険」ではない

ここで一つ注意したいことがあります。

建設後50年以上という数字は、

50年経ったら橋が使えなくなる

という意味ではありません。

適切に点検・補修されていれば、50年以上使用されている橋は数多くあります。

逆に、建設からそれほど年数が経過していなくても、環境や構造によって損傷が進むこともあります。

橋の状態は、

  • 交通量
  • 大型車の通行
  • 雨水
  • 海からの塩分
  • 凍結防止剤
  • 気温変化
  • 地震
  • 使用材料
  • 施工時の条件

などによって変わります。

重要なのは、

何年経ったか」だけではなく、「現在どのような状態なのか

です。

そこで日本では、橋の状態を定期的に確認する仕組みが整備されています。

日本中の橋を「5年に1回」点検している

2013年の道路法改正などを受け、2014年度から道路管理者には、橋梁やトンネルなどを5年に1回の頻度で点検することが義務付けられています。

点検結果は、健全性に応じて4段階に分類されます。

大きく整理すると、

判定区分Ⅰ:健全

構造物の機能に支障が生じていない状態。

判定区分Ⅱ:予防保全段階

機能に支障はないものの、予防保全の観点から措置を行うことが望ましい状態。

判定区分Ⅲ:早期措置段階

機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を行う必要がある状態。

判定区分Ⅳ:緊急措置段階

機能に支障が生じている、または生じる可能性が著しく高く、緊急に措置する必要がある状態。

という考え方です。

2014年度から2018年度までに1巡目。

2019年度から2023年度までに2巡目。

そして2024年度からは、3巡目の点検に入っています。

2025年度末時点で3巡目の点検進捗率は、橋梁で39%となっています。

全国の膨大な橋を、繰り返し点検して状態を追い続けているのです。

古い橋は増えているのに「修繕が必要な橋」は減っている

今回の最新データで特に重要なのがここです。

建設後50年以上の橋は、

約13万橋 → 約24万橋

へ大幅に増えました。

一方で、早期または緊急に措置が必要な「判定区分Ⅲ・Ⅳ」の橋梁は、

約6.9万橋 → 約5.1万橋

へ減少しています。

一見すると不思議です。

古い橋が増えているのであれば、修繕が必要な橋も増えそうに思えます。

しかし、点検によって損傷を発見し、補修や更新を行ってきたことで、状態の悪い橋は減少しています。

つまり日本の橋梁老朽化対策は、

「何もしていないまま古くなっている」わけではありません

点検。

診断。

補修。

再点検。

というサイクルによって、状態を管理しながら使い続けています。

国交省も、修繕などの措置が進み、「予防保全」への移行が進捗しているとしています。

「壊れてから直す」では遅い

橋梁メンテナンスで重要になっているのが、

予防保全

という考え方です。

例えばコンクリート橋で小さなひび割れを放置したとします。

そこから雨水や塩分が内部へ入り込む。

鉄筋が腐食する。

鉄筋が膨張する。

コンクリートが浮く。

剥落する。

さらに内部の劣化が進む。

こうなってから大規模に補修すれば、工事費も工期も大きくなる可能性があります。

一方、損傷が小さい段階で対処できれば、大規模な更新を先延ばしできる場合があります。

これは人間の健康診断にも似ています。

病気が深刻になってから治療するのではなく、

定期的に状態を確認し、小さな異常のうちに対応する

橋についても同じ考え方が重要になっています。

それでも地方自治体では修繕が追いついていない

一方で、すべてが順調というわけではありません。

最新の道路メンテナンス年報では、地方公共団体が管理する橋の修繕に遅れがあることも示されています。

2020年度の点検で判定区分Ⅲ・Ⅳとなった橋について、本来は次回点検までの5年以内に措置を行うことが求められています。

しかし地方公共団体が管理する橋では、2025年度末時点の修繕などの**着手率が79%**にとどまっています。

つまり、早期または緊急に措置が必要と診断された橋でも、約2割は修繕などへの着手に至っていないことになります。

背景には、

予算。

技術者。

施工会社。

設計会社。

点検人材。

交通規制。

地域条件。

など複数の問題があります。

特に地方自治体では、大きな橋だけを管理しているわけではありません。

地域の生活道路に架かる小さな橋も大量に管理しています。

一つひとつは小さくても、そのすべてを点検し、設計し、発注し、補修するには大きな負担がかかります。

橋を「全部残す」ことも難しくなっている

今後さらに重要になりそうなのが、

橋を本当にすべて維持し続けるのか

という問題です。

人口が減少している地域でも、過去に整備された橋は残っています。

利用者が少なくなった橋でも、

点検。

補修。

塗装。

舗装。

耐震化。

などの維持管理は必要です。

そこで国は、修繕だけでなく、

  • 橋梁などの集約
  • 撤去
  • 機能縮小

という選択肢も進めています。

2025年度末時点では、地方公共団体の97%が施設の集約・撤去・機能縮小などを検討していると国交省は報告しています。

また2025年度には、こうした取り組みを行う124団体を国が支援しました。

つまりこれからのインフラ管理は、

「古くなった橋は全部修理する」

だけではありません。

利用状況。

代替ルート。

維持費。

地域人口。

防災上の役割。

などを考え、

残す橋。

集約する橋。

撤去する橋。

を選ぶ時代に入りつつあります。

橋の補修工事は「新設」と何が違う?

施工管理者にとっても、維持修繕工事には新設工事とは異なる難しさがあります。

1. 開けてみないと分からないことがある

既設構造物では、施工前の調査ですべての状態を把握できるとは限りません。

舗装を撤去したら想定以上に床版が傷んでいた。

コンクリートをはつったら鉄筋腐食が広がっていた。

古い図面と現地の構造が違っていた。

ということもあります。

そのため補修工事では、

現場の状態に応じて施工方法を調整する力

が重要になります。

2. 橋を使わせながら工事する

新設橋であれば、供用前の構造物を施工できます。

しかし補修工事では、すでに地域住民が使っている橋を工事します。

全面通行止めができなければ、

片側交互通行。

車線規制。

夜間施工。

足場からの施工。

などが必要になる場合があります。

品質・工程・安全だけでなく、

一般の道路利用者を守りながら施工する

ことも重要です。

3. 作業場所が狭い

橋梁補修では、

橋の下。

桁の間。

高所。

河川上。

交通量の多い道路上。

といった場所で作業するケースがあります。

大型重機を自由に配置できる新設工事とは条件が異なります。

仮設足場や吊り足場、交通規制など、施工そのもの以外の計画も重要になります。

施工管理の仕事は「つくる」から「長く使う」へ

日本では長い間、

道路をつくる。

橋をつくる。

トンネルをつくる。

という新設工事が建設業の大きな仕事でした。

もちろん今後も新しいインフラは必要です。

しかし、すでに全国には膨大な社会インフラがあります。

そして、その多くが同時に高齢化していきます。

これから施工管理者に求められるのは、

「どうつくるか」だけではありません。

どこが傷んでいるのか。

なぜ傷んだのか。

どう補修すればよいのか。

あと何年使えるのか。

次の補修はいつ必要なのか。

既存構造物を理解しながら、長寿命化させる施工管理の重要性が高まります。

橋梁点検もDXが進む

膨大な数の橋を5年に1回点検するには、人だけに頼る方法にも限界があります。

そのため現在は、

  • ドローン
  • AIによる画像解析
  • 3次元データ
  • センサー
  • 遠隔点検
  • 点検支援技術

などの活用も進んでいます。

橋の下面をドローンで撮影する。

過去と現在の画像を比較する。

AIでひび割れ候補を抽出する。

センサーで変形や振動を監視する。

こうした技術を活用すれば、人が危険な場所へ近づく作業を減らしたり、点検を効率化したりできる可能性があります。

橋の老朽化が進む一方で、点検や維持管理の方法そのものも変わっていくでしょう。

「橋が古くなる」以上に大きな問題

約13万橋から約24万橋。

数字だけを見ると、

「日本の橋は大丈夫なのか」

と不安になるかもしれません。

しかし、本当の問題は単純に橋が50歳になることではありません。

重要なのは、

増え続ける高齢橋を、限られた人と予算でどう管理し続けるか

です。

点検する人が必要です。

診断する技術者が必要です。

補修設計が必要です。

工事を行う技能者が必要です。

そして、それらをまとめる施工管理者も必要です。

橋の数が急激に減るわけではありません。

しかし建設業では人手不足が進んでいます。

つまり今後は、

維持すべきインフラは多いのに、それを支える人は少なくなる

という問題にも向き合わなければならないのです。

まとめ|日本は「橋をつくる時代」から「橋を守る時代」へ

国土交通省が2026年8月に発表した最新データでは、建設後50年以上が経過した橋は、

2018年度末:約13万橋

から、

2025年度末:約24万橋

へ増加しました。

7年間で約11万橋増えたことになります。

一方、早期または緊急に措置が必要な判定区分Ⅲ・Ⅳの橋は、

約6.9万橋から約5.1万橋へ減少しています。

つまり日本では、

橋の老朽化が急速に進む一方で、点検・修繕によって状態を管理する取り組みも進んでいます。

ただし地方公共団体では、修繕への着手に遅れもあります。

さらに今後は、

  • 補修。
  • 長寿命化。
  • 更新。
  • 集約。
  • 撤去。

といった選択を、橋ごとに考えなければなりません。

高度経済成長期、日本の建設業は大量のインフラを「つくる」ことで社会を支えてきました。

これからは、その膨大なインフラを、

どう点検し、どう直し、どう長く使うか。

そして時には、

何を残し、何をなくすのか。

まで考える時代です。

施工管理の役割も、

「新しいものをつくる仕事」から、

「すでにある社会インフラを次の世代へつなぐ仕事」

へ、さらに広がっていくのではないでしょうか。

参考資料

国土交通省「橋梁等の2025年度(令和7年度)点検結果をとりまとめ~道路メンテナンス年報(3巡目2年目)の公表~

国土交通省「道路メンテナンス年報(令和7年度)

国土交通省「道路メンテナンス年報

国土交通省「道路施設の集約・撤去ガイドライン

 

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