地域建設会社の受注はなぜ厳しい?技術者不足とコスト高で揺れる地方の現場
地域建設会社の経営環境が、厳しさを増しています。
全国建設業協会の調査によると、加盟する建設会社のうち、直近1年の工事受注状況について「悪い」「悪化してきた」と回答した企業は46.9%でした。
前年よりわずかに改善したものの、依然として半数近い企業が受注環境の厳しさを感じています。
背景には、公共工事の発注量減少、競争激化、技術者不足、資機材価格の高騰があります。
特に深刻なのは、仕事がないから困っている会社だけでなく、仕事があっても技術者不足で受注できない会社が出ていることです。
これは地域建設業にとって大きな問題です。
地域建設会社は、道路、河川、上下水道、災害復旧、除雪、インフラ維持管理など、地域の暮らしを支える重要な役割を担っています。
その会社が安定して受注できず、利益も確保できなければ、地域インフラを守る体制そのものが弱くなってしまいます。
この記事では、全建調査をもとに、地域建設会社の受注悪化がなぜ続いているのか、利益を圧迫している要因は何か、施工管理者がこれから意識すべきポイントを解説します。
参考にした記事:地域建設会社、受注状況「悪化」傾向続く/技術者不足で見送りも/全建調査 (日刊建設工業新聞)
地域建設会社の受注状況はなぜ悪化しているのか

地域建設会社の受注状況が厳しい最大の理由は、公共工事の発注量減少です。
全建調査では、受注悪化の要因として「公共工事の発注量減少」が87.0%と非常に高い割合を占めました。
地域建設会社にとって、公共工事は安定した受注基盤です。
- 道路改良。
- 河川改修。
- 砂防工事。
- 上下水道工事。
- 舗装補修。
- 橋梁補修。
- 災害復旧。
- 除雪。
こうした工事は、地域の安全や暮らしを支えるだけでなく、建設会社の事業継続にも関わります。
しかし、市町村の発注件数が減る一方で、地域内の建設会社数が大きく変わらなければ、限られた工事を多くの会社で取り合う形になります。
その結果、競争が激しくなり、受注できる会社とできない会社の差が広がります。
競争激化が地域建設業を圧迫している
受注悪化の要因として、「競争激化」も47.3%と高い割合でした。
公共工事の発注量が減ると、各社が少ない案件に集中します。
その結果、入札競争が厳しくなり、利益を確保しにくくなります。
受注できても利益が薄い。
受注できなければ人員を維持できない。
人員を維持できなければ次の工事を受けられない。
このような悪循環が起きやすくなります。
地域建設業にとって必要なのは、単に安く受注することではありません。
災害対応や維持管理を担い続けるために、適正な利益を確保し、人材を育て、設備を維持できる受注環境が必要です。
技術者不足で「受注したくてもできない」会社が増えている

今回の調査で注目すべきなのは、技術者不足です。
受注悪化の要因として「技術者不足」を挙げた企業は46.6%でした。
これは、単に仕事が少ないという問題とは違います。
工事の引き合いがあっても、現場を管理する技術者が足りなければ受注できません。
- 監理技術者。
- 主任技術者。
- 現場代理人。
- 施工管理技士。
- 測量や書類を担う若手。
- 協力会社をまとめる現場担当者。
これらの人材が不足すると、会社は受注機会を逃すことになります。
つまり、地域建設会社では「受注したいのに受注できない」という状況が起きています。
これは、売上だけでなく地域インフラにも影響します。
工事を担える会社が減れば、災害復旧や維持管理の対応力も弱くなるからです。
技術者不足は現場負担をさらに大きくする
技術者が足りない会社では、既存の施工管理者に負担が集中しやすくなります。
- 一人が複数の現場を見なければならない。
- 書類業務が増える。
- 発注者対応に追われる。
- 若手教育の時間が取れない。
- 残業が増える。
- 現場確認が後回しになる。
この状態が続くと、施工管理者の疲弊につながります。
若手が入っても、教育する余裕がなければ定着しにくくなります。
結果として、さらに技術者不足が進む可能性があります。
技術者不足は、採用だけで解決できる問題ではありません。
業務の省力化、書類削減、ICT活用、働き方改善、若手育成をセットで進める必要があります。
利益悪化の背景にはコスト上昇がある

受注状況だけでなく、利益状況も厳しくなっています。
全建調査では、利益状況について「悪い」「悪化してきた」と回答した企業が36.5%でした。
前年よりは改善しているものの、「良い」と回答した企業は6.4%にとどまっています。
利益を圧迫している要因として多かったのは、受注量の減少、資機材価格の高騰、労務費の上昇、競争激化です。
特に、資材費、人件費、燃料費、リース料の上昇は、多くの地域建設会社に影響しています。
建設現場では、重機、燃料、仮設材、資材運搬、協力会社費用など、さまざまなコストが発生します。
これらが上がっているにもかかわらず、請負金額に十分反映されなければ、利益は削られます。
現場管理費・一般管理費の増加も無視できない
利益を圧迫する要因として、現場管理費や一般管理費の増加も挙げられています。
建設会社は、現場で直接使う資材や労務費だけでなく、会社を維持するための費用も負担しています。
- 賃上げ。
- ICT化。
- 安全対策。
- 人材育成。
- 社会保険。
- 車両・重機維持。
- 事務所経費。
- 書類作成や電子申請対応。
これらは、会社として必要な費用です。
しかし、積算や請負金額に十分反映されなければ、利益を圧迫します。
特に地域建設会社は、大手に比べて経営体力が限られていることもあります。
必要な投資をしたくても、利益が残らなければ、人材育成やICT化に回す余裕が生まれません。
標準歩掛かりと施工実態のズレも課題になる
調査では、利益を圧迫する具体的な声として「標準歩掛かりと施工実態の乖離」も挙げられています。
これは、現場実務にとって非常に重要なテーマです。
標準歩掛かりは、積算の基礎になります。
しかし、実際の現場では、標準通りに作業が進まないことがあります。
- 現場が狭い。
- 交通規制が必要。
- 住民対応が多い。
- 施工箇所が点在している。
- 資材搬入が難しい。
- 既設構造物との取り合いが複雑。
- 少量施工で効率が悪い。
- 天候に左右されやすい。
こうした条件があると、標準的な施工効率では進められません。
それでも積算上の条件が現場実態に合っていなければ、施工会社の負担になります。
施工管理者の記録が実態を伝える材料になる
標準歩掛かりと施工実態のズレを伝えるには、現場記録が重要です。
- どの作業に時間がかかったのか。
- なぜ予定通り進まなかったのか。
- 交通規制や住民対応でどの程度影響が出たのか。
- 狭小作業や夜間作業で効率が落ちたのか。
- 資材搬入に制約があったのか。
これらを記録しておけば、発注者との協議や次回工事の条件整理に役立ちます。
施工管理者は、日々の出来高や写真だけでなく、施工条件の難しさも記録として残すことが大切です。
現場の実態を伝える材料がなければ、適正な積算や工期設定につながりにくくなります。
地域差が大きいことも見逃せない
今回の調査では、受注状況の悪化には地域差も見られました。
「悪い」「悪化してきた」とする割合は、東北が54.6%で最も高く、近畿、中部、中国も50%を超えています。
地域ごとに公共工事の発注量や産業構造、人口動態、災害リスク、自治体の財政状況は異なります。
そのため、建設会社の受注環境も全国一律ではありません。
ある地域では災害復旧やインフラ更新の需要があっても、別の地域では発注量が減少している場合があります。
また、同じ公共工事でも、市町村発注と国・都道府県発注では案件規模や発注時期が異なります。
地域建設会社にとっては、自社の地域でどの分野の工事が今後増えるのか、どの分野が減るのかを見極めることが重要です。
維持管理・災害対応の需要は残り続ける
一方で、地域インフラの維持管理や災害対応は今後も必要です。
道路は老朽化します。
橋梁やトンネルは点検・補修が必要です。
河川や砂防施設も維持管理が必要です。
豪雨災害や地震が起きれば、地域建設会社の対応力が求められます。
つまり、地域建設会社の役割がなくなるわけではありません。
むしろ、地域の安全を守る存在として重要性は高まっています。
だからこそ、安定した受注環境と適正な利益確保が必要になります。
地域建設会社が疲弊すれば、地域インフラを守る担い手が減ってしまうからです。
施工管理者がこれから意識すべきこと
地域建設会社の受注悪化と利益悪化が続く中で、施工管理者が意識すべきことは大きく5つあります。
第一に、現場の生産性を高めることです。
測量、写真管理、出来形管理、書類作成、発注者対応などを効率化し、限られた人数でも現場を回せる体制をつくる必要があります。
第二に、コスト増の根拠を残すことです。
資材費、労務費、燃料費、リース料、協力会社費用が上がっている場合、その内容を記録し、発注者との協議に使える状態にしておくことが大切です。
第三に、技術者不足を前提に工程を組むことです。
無理な同時進行や短工期は、施工管理者の負担を増やします。人員配置を踏まえた現実的な工程管理が必要です。
第四に、若手育成を現場任せにしないことです。
忙しい現場でも、写真管理、測量、出来形確認、発注者対応などを段階的に教える仕組みが必要です。
第五に、地域の役割を意識することです。
地域建設会社は、単に工事を受注する会社ではなく、災害時や維持管理で地域を守る存在です。その役割を理解しながら、現場品質と会社の継続性を両立させることが重要です。
地域建設会社の現場力を守るために
地域建設会社を取り巻く環境は、今後も簡単には改善しない可能性があります。
だからこそ、施工管理者は受注量、利益、技術者不足、コスト上昇を自分の現場にも関係する課題として捉えることが大切です。
施工管理チャンネルMAGAZINEでは、今後も地域建設業・技術者不足・公共工事・ICT施工・適正利益に関する情報を発信していきます。
関連記事もあわせて確認し、限られた人員でも地域を支え続けられる現場づくりを進めていきましょう。
まとめ:地域建設会社には安定受注と適正利益が必要
全建調査では、地域建設会社の受注状況について「悪い」「悪化してきた」と回答した企業が46.9%を占めました。
利益状況でも36.5%が悪化傾向にあると回答しています。
背景には、公共工事の発注量減少、競争激化、技術者不足、資機材価格の高騰、労務費上昇、現場管理費・一般管理費の増加があります。
特に深刻なのは、技術者不足によって「受注したくてもできない」会社があることです。
これは、建設会社の経営だけでなく、地域インフラを守る体制にも関わります。
地域建設会社が安定して受注し、適正な利益を確保できなければ、道路、河川、橋梁、上下水道、災害復旧などを担う地域の力が弱くなります。
施工管理者に求められるのは、厳しい環境の中でも現場を効率化し、コスト根拠を記録し、若手を育て、地域に必要な工事を確実に進める力です。
受注環境が変化する今こそ、地域建設会社は「安く取る」だけでなく、「続けられる受注」「守れる利益」「育てられる現場」を意識する必要があります。


