2023年に建設業界で必ず起きる4つのこととは?国土交通省の狙いは?

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国土交通省の声明によれば、建設業界では2023年より次の4つの新制度が始まります。

  1. BIM/CIM
  2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)
  3. 建設業退職金共済制度(建退共)
  4. 社会保険の加入確認

今回はこれらの中から『1. BIM/CIM』に焦点を絞り、その概要と、今後どのような対応が必要なのかをお話します。

BIM/CIM導入の概要

BIM/CIMとは、三次元で図面を可視化できるというものです。

立体的になることで、見た目としては”完成予想図”に近い図面が作成できます。

BIM/CIMの正式名称

それぞれの正式名称は次の通りです。

  • BIM:Bulding Information Modeling
  • CIM:Construction Information Modeling

Buldingは建築、Constructionは土木をそれぞれ表しています。

双方に共通している”Information Modeling”は、”情報を含んだモデル(模型)”といった解釈で良いでしょう。

つまり、BIMは建築物を作る際に3Dモデルを活用することで、CIMは土木系の工事をする際に3Dモデルを活用することです。

国土交通省は「令和5年度(2023年4月1日)から全ての詳細設計・工事でBIM/CIMを原則適用する」と公表しています。

BIM/CIM導入のメリットと国土交通省の狙い

それでは国土交通省が推進しているBIM/CIMは、一体どんなメリットがあるのでしょうか?

完成図がイメージしやすくなる

従来の2次元の図面は、一般人からすると複雑で、なかなか完成図をイメージしづらい部分がありました。

しかしBIM/CIMを通じて3次元の図面が一般化されれば、誰から見ても理解しやすい資料が出来上がります。

修正作業が楽になる

2次元の図面には、平面図・正面図、側面図という”3面図”があります。

もし形状に変更があった場合、3枚すべての図面の修正が必要でした。

しかしBIM/CIMの図面になると、3Dの小さなオブジェクトで構造物が設計されているような仕様になります。

よって、値を変更するだけで全体に適用され、図面の修正が完了となるのです。

数量拾いが効率化される

例えば長方形のような立体があったとしましょう。

2Dの図面では、3面図から数値を拾い出して計算していくような流れでした。

しかしBIM/CIMになると、パーツが立体として組み上がっているので、体積が自動的に算出可能となっています。

変更を加える際も値だけ修正すれば、新しい体積がまた自動的に出てくるという仕組みです。

数量拾いとは

数量拾いとは、設計図面からあらゆる数量を求め出すことです。

数量の範囲は幅広く、面積はもちろん、材料として使うコンクリートの数量や重量、かかる人の作業量や時間などの単位も求めます。

工種の単位もあり、”掘削は㎥”、”舗装は㎡”、”縁石はm”という風に、それぞれの数量が導き出せるようになっています。

このようにBIM/CIMは便利な機能が充実しています。

つまり国土交通省の狙いは、BIM/CIMのメリットを活かして働き方改革を推進し、作業効率の向上や残業時間の削減に繋げたいということにあるのです。

発注者側の要求事項 ”リクワイヤメント”とは

ここまでを見ると「2023年4月1日からBIM/CIMを導入すれば良いんでしょ?」と思ってしまいますよね。

しかし実は、BIM/CIMの導入にはリクワイヤメントが必須とされています。

リクワイヤメントとは、発注者から受注者に対しての要求事項のことです。

“BIM/CIM活用工事のリクワイヤメント”は次の通りです。

  1. BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化
  2. BIM/CIMを活用した変更協議等の省力化
  3. リスクに関するシミュレーション(地質、騒音、浸水等)
  4. 対外説明(関係者協議、住民説明、広報等)

それでは順に説明します。

1. BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化

国土交通省の資料より概要を引用します。

「『ICTの全面的活用』を実施する上での技術基準類を含めて、BIM/CIMモデルを活用した効率的な監督・検査を行うことを目的とする」

つまり受注者側は、発注者支援業務・役所側が行う検査などを、BIM/CIMを活用して効率化しなさいということです。

受注者側だけではなく、発注者側の業務効率化も要求事項の1つとされているのですね。

2. BIM/CIMを活用した変更協議等の省力化

概要は次の通りです。

「BIM/CIMモデルに変更協議に係る日時、箇所、内容等の情報を検索しやすいように関連付けることによる、変更協議の省力化を目的とする」

BIM/CIMは3Dのオブジェクト1つ1つに情報を入力できます。

よって、変更協議があったオブジェクトに対しては、日時・箇所・内容などの情報の紐づけが求められています。

後から見たときに変更協議内容がすぐわかるからです。

しかし変更協議が起こる度に情報をすべて入力するのは、なかなか骨の折れる作業かもしれませんね。

3. リスクに関するシミュレーション(地質、騒音、浸水等)

概要は次の通りです。

「地質・土質モデルにより地質・土質上の課題等を容易に把握し、後工程におけるリスクを軽減するための対策につなげることを目的とする」

要するに、地盤の状況や、騒音、浸水など施工条件を加味したリスクシミュレーションを実施しなさいということです。

4. 対外説明(関係者協議、住民説明、広報等)

概要は次の通りです。

「対外説明において、BIM/CIMモデルにより分かりやすく事業計画を説明することにより、円滑かつ確実に合意形成を図ることを目的とする」

つまり、近隣住民や関係自治体に説明を行う際は、BIM/CIMを活用して分かりやすい資料を準備しなさいということです。

BIM/CIM活用業務のリクワイヤメントについて

リクワイヤメントの要求事項は、”工事”と”業務”で別々に設定されています。

工事に関してはすでに述べた通りですが、業務のリクワイヤメントは次の6つとなります。

  1. 設計選択肢の調査(配置計画案の⽐較等)
  2. リスクに関するシミュレーション(地質、騒⾳、浸⽔等)
  3. 対外説明(関係者協議、住⺠説明、広報等)
  4. 概算⼯事費の算出(⼯区割りによる分割を考慮)
  5. 4Dモデルによる施⼯計画等の検討
  6. 複数業務・⼯事を統合した⼯程管理及び情報共有

リクワイヤメントの今後

このように、BIM/CIMの導入にあたってはリクワイヤメントと呼ばれる要求事項が求められています。

よって、”AutoCADなどで作成していた2次元の発注図面を、Revitによる3次元図面に変更し、工事を行う”だけでは認められません。

Revit…オートデスク社が開発した3次元CADソフトウェア

BIM/CIMを導入したのならば、あくまでリクワイヤメントを満たせるような活用を行わなければならないということです。

またBIM/CIM導入初期である現在は、ごく少数の要求事項に留まっていますが、リクワイヤメントは今後も段階的に増えてくると予想されます。

たとえば、次のようなことを求められる日が来るかもしれません。

  • 「〇月にはここまで完成できる」といった進捗シミュレーションの資料作成・提出
  • コストの記載
  • 材料検査日の詳細情の記入

建設業界で身を置く人にとっては、さまざまなリテラシーやスキルを高め、BIM/CIMを使いこなせるようになることがまず直近の課題と言えるでしょう。

BIM/CIMの運用状況

現在、BIM/CIMが活用されている公共工事は大規模工事のみとなっています。

よって小規模工事に関わる人達は、2023年からいきなり変更を求められるような形になり、かなりハードな1年となるでしょう。

一方、地方自治体では、まだ大きな変化は起こらないと思いますが、行政の最上位団体である国土交通省がBIM/CIMを本格的に推進していることは1つ頭に置いておきましょう。

まとめ

今回は、国土交通省が明らかにしている2023年スタートの新制度の中から、BIM/CIMとリクワイヤメントについて解説しました。

ポイントは次の通りです。

  • 建設業界では、2023年に4つの変化が起きる
  • BIM/CIMは図面を3次元で可視化できるもの
  • BIM/CIMは便利な機能が多く、業務効率化が期待されている
  • BIM/CIMは導入するだけでなく、リクワイヤメントを満たせるように活用しなくてはならない
  • 建設業界に身を置く人にとってBIM/CIMの習得は必須

BIM/CIMの導入だけを見ても、2023年度は建設業界の大変革の年と言えそうです。

何が起きるのかを事前に知ることで、しっかりと心構えをしておきましょう。

この記事が皆さんの参考となれば幸いです。


この記事の内容は以下の動画で解説しています。

理解を深めたい方はこちらの動画もご覧ください。

この記事の続きは以下の記事になります。

2023年から完全実施!建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

2022.11.11

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