大工不足の原因は住宅産業の変化!今後の需要増に備えた解決策は?
大工が激減し、住宅業界では相次ぐトラブルが発生しています。
NHKの「クローズアップ現代」で2024年7月2日に放送された住宅トラブルでは、住宅やリフォームの注文主が受けた被害を紹介していました。
そもそも何故、大工が減ってしまったのでしょうか。
大工不足の原因は住宅産業の変化です。
客から直接注文を受けていた時代から、住宅メーカーが注文を受けるようになり、大工を取り巻く環境は変化しました。
本記事では住宅産業の変化として、以下がそれぞれ大工不足の要因の一つであると解説しています。
- 住宅メーカーに注文が集中
- プレカットの影響
- ビルダーの参入
大工不足の原因と、解決策を知り、今後の建設業界の動きに注目しましょう。
大工不足が引き起こすトラブルについてはこちらの記事をお読みください。
大工不足の原因は住宅産業の変化
住宅産業の変化が、大工不足の原因です。
1980年代、大工の人数はピークで90万人以上いました。
当時は客(施主・注文者)から直接注文を受けることがほとんどでした。
大工は棟梁(親方)として弟子を使いながら、注文を受けた家を建築。
直接注文を受けるため、年収が3,000万円を超える大工もいたそうです。
バブルが崩壊し住宅産業は変化しました。
- 住宅メーカーに注文が集中
- プレカットの影響
- ビルダーの参入
具体的には上に挙げることが原因となり、大工がどんどん減っています。
1点ずつ詳しく解説します。
大工不足の原因①:住宅メーカー
バブル崩壊後、住宅は大工に直接注文するのではなく、住宅メーカーへ注文するものに変わりました。
消費者のニーズが変化し、住宅メーカーへの注文が増加。
注文を受けた住宅メーカーは、地元の工務店に依頼します。
地元の工務店は、個人事業主である大工に委託する流れです。
元請であった大工は、2次下請けになってしまいました。
元請時に年収3,000万円であっても、2次下請けになれば貰える額も減ります。
住宅メーカーの台頭により、大工の収入は減少しました。
大工不足の原因②:プレカット
プレカット技術の普及も、大工不足に拍車をかけました。
事前に加工する、という意味。
木造住宅の構造木材をあらかじめ工場で加工する方法です。
プレカットが登場する前は、大工が現場で木を切って削って組み立てていました。
しかし住宅メーカーの工場で木材を設計通りに加工するプレカットが登場すると、現場での作業は組み立てのみ。
すべてが組み立てのみではありませんが、現場での加工は不要になりました。
大工の木を切ったり削ったりする技術が求められなくなり、大工の仕事が減ったと言えます。
大工不足の原因③:ビルダー
2000年代になると、住宅業界にビルダーが参入してきました。
地域密着型の企業のため土地探しにも強く、土地とセットで販売する分譲建売住宅が主力です。
パワービルダーと呼ばれる、年間に何千棟もの家を建築する企業も出てきました。
大手ハウスメーカーが40~50坪の土地に4,000~5,000万円で家を建てるのに対し、
20坪ほどの土地に2,000~4,000万円で家を建てます。
狭い土地に低価格で家を建てるため、若い世代にはとくに人気です。
安く提供するためにコストカットが必要であり、大工に支払う費用が減らされます。
ビルダーの参入で、大工は収入が減ってしまいました。
大工不足により今後起きること
20年前と比較して、半分の人数になった大工。
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これ以上減少すると、何が起きるでしょうか。
番組内で、芝浦工業大学の教授である蟹澤さんは以下のように推測します。
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以下の要因により、さらに人手不足が深刻化すると予想されています。
- 残業規制
- 国土強靭化
- 省エネ法施行
クローズアップ現代の番組内でも、省エネ法により建物の省エネ化や断熱・耐震の改修が必要な建物がたくさん出てくることを懸念していました。
2024年の残業規制についてはこちらの記事を参考にしてください。
技能職全体の人手不足については、こちらの記事にまとめています。
住宅価格上昇でも大工の報酬が上がらない原因
1980年代には年収3,000万円の大工もいましたが、現在は年収400万円未満の大工も4割います。
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住宅価格が上がったのであれば、その分大工の報酬に還元できないのでしょうか。
2次下請けかつ個人事業主(一人親方)である状況から、報酬に還元できない実態が分かります。
2次下請けで大きな組織と契約する個人は、どうしても立場が弱いと言えます。
値下げの圧力には負けてしまいますし、個人事業主であるため残業規制もありません。
弱い立場だからこそ、住宅価格が上がっても報酬が上がりません。
地方では1日2万円もらえるのが精一杯です。
働き盛りの大工で、1日2万円です。
ここから税金や経費を引くと生活するのがやっと。
若い人にはこんな業界おすすめできません。
1か月25日働いたと計算して、50万円です。
ここから道具や移動の経費を払わなければなりません。
住宅メーカーの決算期に仕事が詰め込まれます。
人手不足も追い打ちとなり、クレームや怪我が発生しています。
仕事量に波があり、忙しい時期は人手が足りません。
非常に厳しい状況だと言えます。
大工不足の解決策は社員化
大工だけでなく、職人全般が人手不足であり、厳しい状況です。
現在考えられる有効な解決策は、大工を社員として雇用することです。
大手住宅メーカーでは実際に、グループ会社や子会社で大工を社員として雇っています。
個人事業主の一人親方では構造的な弊害があったため、社員にして弊害を減らす目的です。
- 給与やボーナス
- 社会保障
- 福利厚生
これらを整えることで、安心して働けます。
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年収400万円未満が4割もいる中で、年収が最大900万円に上がる可能性があるため、社員化への期待は高まります。
チーフ級大工、のようにキャリアパスを作ることも大事です。
大工が一人親方で2次下請けという構造が、人手不足の原因になっています。
だからこそ社員化が大工不足の解決策として挙げられます。
まとめ:大工不足の原因は住宅産業の変化と個人事業主という構造
住宅産業の変化により、大工は収入と仕事を減らされました。
大工不足になった具体的な原因は以下です。
- 住宅メーカーに注文が集中
- プレカットの影響
- ビルダーの参入
住宅産業が変化し、大工は元請から2次下請けになりました。
個人事業主で立場が弱い構造もあり、大工は激減していきました。
大工を社員化し安心して働ける環境にしようと、大手住宅メーカーは考えています。
大工を取り巻く厳しい状況が、少しでも改善することを願います。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。