職人の人材紹介・人材派遣は禁止!人手不足が加速する要因と流動性抑制の理由

とび・左官・大工などの職人。
職人の人手不足要因として、労働者派遣法が関係しているのをご存知でしょうか。
法律で禁止されているため、職人の人手不足が加速しています。
本記事では、髙木健次さんの建設ビジネスより、職人の人材紹介と人材派遣について説明します。
職人の人材紹介・人材派遣が禁止されている理由、それによる制約を知ってください。
これらを知ることで、建設業界の人材流動性が抑制されている現象を理解できます。
職人の人材紹介・人材派遣は禁止されている
建設業界は人手不足です。
とくに職人の人手不足は顕著であり、10年後は全体の8割にまで減少すると予想されています。
職人の人材紹介や人材派遣は、法律で禁止されています。
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土木、建設の現場で行われる作業に直接従事する業務に労働者派遣を行うこと及び受け入れることは禁止されています。
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人材紹介・人材派遣が禁止されていると知らず、驚く人もいるでしょう。
髙木さんも著書の中で、他の業界とは事情が違うと説明しています。
製造業や飲食業でも人手不足が叫ばれていますが、建設業界は事情が違います。
他の業種では使える、人材紹介・人材派遣が禁止されているからです。
同じ建設業界でも、職人以外は派遣があります。
- 施工管理業務
- 現場事務所の事務員
- CADオペレーター
これらでは、人材紹介・人材派遣は禁止されていません。
職人の人材紹介・人材派遣が禁止されている理由
職人に対して、人材紹介・人材派遣が禁止されているのはなぜでしょうか。
髙木さんは著書の中で、2つの理由を挙げています。
指揮命令の問題と繁閑による解雇防止です。
理由①:指揮命令の問題
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1つの現場で複数の会社が一緒に作業をしており労働災害時の責任の所在が曖昧になるのを防ぐ
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大規模な建築現場では、100社を超える多くの会社が関わるケースもあります。
たくさんの会社が入っていると、事故発生時に責任の所在・指揮命令が曖昧になります。
それぞれの会社が連携しなくてはならない状況で、指揮命令が入り組むと複雑です。
お金をもらっている会社からの指揮命令か、そうではないのか、とさまざまな問題が発生します。
理由②:季節繁閑による解雇防止
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年度末の3月に工事が集中し季節繁閑が大きいので必要なときだけ雇って仕事がなくなったらすぐ解雇になるのを防ぐ
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建設業界では、1年のうち仕事に波があります。
均等に仕事はありません。
工事は年度末に集中するため、秋から冬にかけて忙しくなります。
一方、春から夏は比較的余裕があります。
とくに土木工事では、この仕事の波が顕著です。
仕事があるときだけ派遣を雇いなくなれば解雇する、という循環が起きかねません。
そのため職人の人材派遣は禁止されています。
建設現場に派遣社員が増える理由は職人でなく現場監督
建設業界の派遣社員は就業者全体のたった2.5%です。
他の産業と比べると、非常に低い数値です。
建設現場に派遣社員が増えているのは、施工管理・現場監督の仕事が影響しています。
ゼネコンでも派遣社員は増えています。
現場監督と職人は、1:10の割合です。
この圧倒的に多い職人に人材紹介・人材派遣が禁止されているので、建設業界の派遣社員は低い割合です。
人材紹介・人材派遣が禁止されている職人の雇用方法
職人の人材紹介・人材派遣が禁止されているので、雇用方法も制約されます。
転職エージェントの利用は禁止
人材紹介が禁止なので、転職エージェントでは職人・工事会社を紹介できません。
「手に職をつけたいので他にありませんか?」と言うと、株式会社ライズのような施工管理を紹介するケースもあります。
しかし「とび、左官、大工でこんな仕事もありますよ」とエージェントは紹介できません。
エージェント経由での紹介は禁止です。
職人は人手不足で困っているのに、エージェントを使えません。
急に人を集められない
大型プロジェクトや災害で、急に職人の数が必要になったとします。
しかし人材紹介が禁止されているので、人材を集められません。
異常気象や災害時に必要な、復旧工事。
人手が足りなくて急いで集めたくても、職人を雇う工事会社だけでは集められません。
工事会社の求人方法は制限されている
髙木さんは著書の中で求人の例として、旧友にSNSで連絡を取る方法を挙げていました。
他には求人媒体に求人を出す方法が挙げられます。
ハローワークのような求人媒体やツテを使った求人方法しかありません。
採用手法は限られており、これも人手不足を加速させる要因になっています。
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工事会社の経営者はじゃんけんでいえばグーとチョキしか出せない制約
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転職エージェントを使って転職活動をするのは、現代の主流です。
しかしこの方法が使えず、制約によって苦しい状況になっています。
職人の人材紹介・人材派遣禁止により人材の流動性が制限されている
政府は人材の流動性を高め、賃上げを促す方針を掲げています。
しかしその流動性は、建設業界では制限されています。
人材紹介・人材派遣が禁止されている職人は、流動性がないためです。
施工管理のように人材紹介・人材派遣ができないので、人手不足は加速しています。
ある程度の人手不足が緩和される可能性があります。
人材派遣については指揮命令のような問題もありますが、人材紹介は解禁してもいいでしょう。
今までの経緯があるため、解禁は簡単ではありません。
しかしこのままでは職人の人手不足は加速するばかりです。
人材紹介・人材派遣の禁止により、職人の人材流動性は損なわれています。
まとめ:職人は指揮命令や繫閑期の理由により人材紹介・人材派遣が禁止されている!
職人の人材紹介・人材派遣が禁止であると知らなかった人も多くいるでしょう。
建設業界の人手不足解消には、このような労働者派遣法も関係しています。
- 指揮命令や責任の所在が曖昧になるので禁止されている
- 繁閑期の解雇を防ぐために禁止されている
- 転職エージェントが使えないので採用手法が限られる
- 大規模な災害復旧時に急いで人を集めるのが難しい
- 人材の流動性は損なわれている
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