大工の腕の見せ所も賃金も値打ちも減少|プレカットや既製品による影響

大工はピーク時から、約1/3の人数まで減っています。
バブルが弾けて不況になり、住宅メーカーの台頭やプレカットなどでコストが削られたのが原因です。
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大工が減った理由について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
大工が減った件については、施工管理チャンネルのYouTube動画にさまざまなコメントを頂きました。
本記事では頂いたコメントから、5つピックアップして紹介します。
現在の建設業界状況を知りたい人は、ぜひ最後までお読みください。
プレカットにより賃金だけでなく大工の値打ちも下がった
69歳で現役の一人親方大工の人からコメントを頂きました。
25歳で独立し、経験は45年です。
プレカットが普及する前は年間3件くらい建設していました。
自分で墨を付け、刻みから建前、造作完成引渡しとやりがいもありました。
大工が減った原因は、プレカットの普及だと思います。
下請けしても単価が下がりましたし、大工の値打ちも下がりました。
プレカットは大きい影響があったという考えです。
昔は1棟すべてを大工が施工し、お客さんからも敬われるような存在。
当然、元請けとして施工していました。
しかし今では住宅メーカーの下請け。
賃金も減ってしまいます。
プレカットの登場で、大工の値打ちも下げてしまいました。
大工は必要だと思っています。
日本は災害の多い国。いざ災害が起きたとき、工事してくれる工務店が少なく、かなり待たされます。
私の年代よりも上の先輩は、「手に職を付けた方がいい。公務員よりも職人になれ」と親から言われたそうです。
たしかに私たちの年代よりも、優秀な人が多くいました。
後世に残る大工仕事はやりがい・誇りである
私の親世代でお世話になった大工の大先輩は、男4人兄弟でした。
成績の良かった2人は大工になるよう、親から勧められたそうです。
残りの2人も左官として活躍され、全員亡くなりましたが、その道で大成功されていました。
先ほどのコメントにもあったように、昔は優秀な子どもには親が大工を勧めていました。
瞬時に計算する必要もあり、成績の良い人には向いているとされていたようです。
3年ほど前にその先輩棟梁が建てたお宅を大改築。
解体の際に、先輩棟梁の棟札(むなふだ)が出てきました。
ご自身で書かれたであろう、達筆な棟札です。
棟梁の奥様がご健在でお持ちしたところ、喜んで涙を流していました。
私も棟梁として建てた家には、棟札が祭ってあります。
何十年も残るので、やりがいであり誇りです。
棟札とは、棟上げの時に棟木に祭る・打ち付ける札です。
日付や建築者などが書かれ、建物の歴史を知れます。
現在でも屋根裏の棟にある柱に祭っている家がほとんどです。
「最後まで無事に」と思いを込めて、祭ります。
もしも建てた大工が亡くなっても、建てた家は何十年も残り続けます。
コメントのように、解体時に棟札が出てくるケースもあるでしょう。
後世に残る仕事として、やりがい・誇りを感じる人もいらっしゃいます。
賃金待遇を理由に大工を辞めざるをえない人もいる
若手大工の収入についての、リアルなコメントも頂きました。
まだまだ若手ですが、10年続けて辞めました。
1人前の手間賃になり、その先に伸び代がないと痛感。
家庭を持ち、子どもにかかるお金を考えると、無理だと思いました。
家庭・子どもにかかるお金のために、辞めた人のコメントです。
他業種で安心して500万円以上は稼げる仕事を探します。
「来月は仕事あるかな」という不安から解放されたのは、唯一の救い。
大工は転職だったし、大好きな仕事だったので悔しさもありますが……。
若手大工の年収は500万円よりも少ないのが現実です。
平均は年収400万円ともいわれています。
続けたくても、待遇を理由に辞める人は多くいるでしょう。
生活していくには必要なお金。
金銭面が厳しく続けられないのは、珍しい話ではありません。
プレカットや既製品で大工の腕の見せ所が激減した
お父様が大工だった人からのコメントです。
父は中卒で弟子入りし、75歳で引退した昭和時代の大工です。
簡単な仕事でも日当25,000円以下は受けないようにしていると言っていました。
このコメント主自身は、設計者としてお父様と仕事をしたそうです。
私は大手ハウスメーカーで、戸建住宅の設計を12年しました。
リフォーム会社に転職後は、父の建てる住宅の意匠設計や図面作成、インテリアコーディネートを担当。
父は材木の刻みから、階段・建具を現場で加工して取り付けていました。
しかしプレカットや既製品、本格的な和室がなくなったことにより、大工の技術が少なくても家が建つようになりました。
これこそ日当が下がった原因です。
亡くなってしまいましたが、腕の良い父と仕事ができて良かったと感じています。
大工のやりがいが、コメントからも伝わってきます。
昔は造作物が多く、工夫のしがいや技術の見せ所がありました。
しかし、住宅メーカーの下請けではどうでしょうか。
大工の腕の見せ所は、ほとんど既製品に奪われています。
建具の既製品化や本格和室の需要低下。
これにより大工の腕の見せ所は激減してしまいました。
低賃金で不安定な大工になりたい人は減ってしまった
私の父が大工です。他のコメントと同様に、墨入れや柱・梁の加工をしていました。
関連業者も自分で手配して家を建設していましたが、工期が長いとクレームが出るように。
ハウスメーカーは、段取り良く短納期で家を建てるからです。
日本はかなり工期に厳しい特性があります。
一方海外では、工期が延びるのも当たり前だそうです。
プレカットだけでなく、内装工事も壁・天井がシート貼り付けになり大工の仕事が減りました。
さらに家を建てる費用・単価が安くなり、大工を苦しめています。
土地価格が上がり、施主のために家の建設費用を下げなくてはなりません。
さらに最近の住宅建設には、大工の特殊技能を発揮する場も少ない状況です。
賃金が安くなり安定した仕事がない。これで大工になりたい人はいなくなったのでしょうね。
昔の大工は墨入れや刻みだけでなく、業者の手配も行っていました。
大変な中にやりがいも多くあったでしょう。
しかし今ではそれもなくなり、低賃金・不安定な状況になりました。
まとめ:大工仕事はやりがいや誇りを感じられるのにプレカットや既製品で腕の見せ所が減ってしまった
日本は素晴らしい大工技術があるのにもかかわらず、安さや便利さを重視して、衰退してしまっています。
もったいないと感じる建設業関係者も多いのではないでしょうか。
プレカットだけでなく、既製品や生活環境変化により、大工の腕の見せ所は減っています。
伝統技術がこのまま消えてしまうのは、もったいないと感じますよね。
頂いたコメントは、以下の記事でも紹介しています。
大工さんからのコメント、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。