建設業の残業上限は緩和すべき?元国土交通大臣も話題にする規制の困難さ

建設業界では2024年4月より残業規制が始まりました。
月ごとの上限、月平均、年間上限などの、残業上限が規制されています。
しかしこの残業上限に対して、緩和を求める声も上がってきました。
本記事では、建設業の残業上限緩和を求める声を紹介。
45時間/月や、720時間/年のルール緩和が求められています。
さらに元国土交通大臣や全国建設業協会会長も、建設業界の特性から、規制の困難さを指摘しています。
建設業界の今後を知るためにも、ぜひ最後までお読みください。
【残業上限緩和を求める声】群馬県建設業協会のアンケート結果
群馬県建設業協会では、2025年1月から2月にかけて、アンケートを実施しました。
このアンケートには237社が回答し、残業上限の緩和を求める声が多数寄せられています。
残業上限時間の緩和を求める声
建設業協会のアンケートでは、残業上限の緩和を求める声が挙がりました。
- 45時間/月を超える残業は6か月以内:35%
- 複数月平均残業80時間以内:26%
- 残業時間は720時間/年:26%
「残業が45時間を超える月は、1年の中で6か月まで」この上限緩和を求める声が、1番多くありました。
また他の残業上限についても、4社に1社といえる割合で、緩和を求めています。
2024年に始まった建設業の残業規制では、他にもさまざまな点が問題として挙げられます。
詳しく知りたい人は、以下の記事もお読みください。
残業上限緩和を求める背景
なぜ多くの建設会社が、残業上限緩和を求めているのでしょうか。
アンケート結果からは、その背景にある具体的な業務上の課題が分かります。
- 工事書類・図面作製などの内業が多い
- 監理技術者や主任技術者の業務が多岐にわたる・業務量が多い
- 屋外作業のため気象に左右される・施工できない日がある
- 現場が遠隔地のときは通勤時間がかかる
- 工事毎に内容や工期が変化し検討時間がかかる
以前から指摘されている課題が、多く見られます。
これには建設業の特徴である、屋外作業・現地生産・1品受注生産(1点もの)が関係します。
屋外作業なので、雨風で作業ができなかったり、強風でクレーンを動かせなかったりする日もあるでしょう。
施工場所が現場によって変わるので、施工条件も変化。さらに同じものは作りません。
これらの特徴から、書類や仕事量が増えてしまいます。
さらに繁忙期やゆとりがある時期など、仕事に波もありますよね。
そんな中で、残業時間を一定以下にするのは厳しい面も。
そのため建設業では、残業上限の緩和を求める声が多数挙がります。
手書きの書類もいまだに根付いており、デジタル化できていない建設会社が多数です。
元国土交通大臣も残業上限を話題にしている
建設業の残業上限の厳しさは、業界内に留まらず、国会でも取り上げられました。
2025年3月14日の衆議院国土交通委員会では、赤羽元国土交通大臣が群馬県建設業協会のアンケート結果を取り上げました。
時間外労働せざるを得ず、上限規制を守るのが大変な現状を伝えています。
さらに天候や気温に左右される点についても意見しました。
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最近、豪雪地域、積雪地域では、十二月から二月の三か月程度も、実際は現場工事ができない。また、最近は猛暑でありますので、六月から九月の勤務時間も、その半分、三十度以上ということで、夜間に動かしたりとか、実質的に夏場は二か月間現場作業ができないというような話でございます。
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悲痛な内容のアンケートだとして、国土交通省の幹部に答弁を求めました。
たしかに建設業では、実質稼働できるのは1年のうち7~10か月。
公共工事はまだしも、民間工事は工期もタイトです。
元国土交通大臣も指摘するほど、残業上限緩和は考えなければならない問題です。
全国建設業協会会長も残業上限に対する柔軟な対応・緩和を求める
さらに2025年4月9日には、自民党政策審議会でも建設業の残業上限が問題として挙げられました。
全国建設業協会の会長が、業界団体ヒアリングで残業上限規制の困難さを発言しています。
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近年の猛暑等により、屋外での活動が制限され、時間外労働規制への対応が難しい状況にあり、働けるときにしっかり働き、休む時には休むといった柔軟な働き方
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屋外作業の多い建設業では、天候や気温に作業が左右されます。
夏の猛暑日や積雪寒冷地での作業。
これらを考慮すると、時間外労働の上限規制への対応は困難であると強調しました。
「働ける時にしっかり働き、休める時に十分に休む」このような柔軟な規制の適応を求めています。
建設業の残業上限は緩和すべきか?
建設業の残業上限は緩和すべきかという問いに対し、現場で働く人々の声からはさまざまな意見が聞かれるでしょう。
- 家族がいるからもっと残業がしたい
- 残業代が減って厳しい
- 働きたい人は働けるようにしてほしい
一方で残業上限規制の緩和には、「元の状態に戻ってしまうのではないか」といった懸念も存在します。
さらに根本的な解決策として、賃上げも必要でしょう。
残業上限を厳しくするのであれば、現場で働く人の対価を上げるべきです。
企業は顧客から適正な価格で受注できなければ、簡単に賃上げはできません。
特に民間工事では、発注側が安価な費用を求める傾向があり、これが賃金向上を阻む要因となっています。
安価な受注が続くと、建設業全体の価値が低く評価されてしまうでしょう。
建設業の残業上限緩和には、残業時間だけでなく、賃上げの課題も関係しています。
まとめ:建設業の残業上限には緩和を求める声が多い
建設業の残業上限緩和については、群馬県建設業協会だけが声を挙げているのではありません。
元国土交通大臣や全国建設業協会会長も、残業上限を課題として捉えています。
建設業には、屋外作業や1点ものなどの特性があります。
そのため単純な残業規制では、現場にとって負担もあり難しいといえるでしょう。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。