工期ダンピングとは?原因・問題点・適正工期ガイドラインとの関係をわかりやすく解説

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工期ダンピングとは、本来必要な期間よりも「著しく短い工期」で工事契約を結ぶ行為のことです。短納期で受注すれば一見メリットがあるように見えますが、現場では長時間労働・安全リスク・品質低下・離職の連鎖といった深刻な問題を引き起こします。2025年施行の改正建設業法では、発注者だけでなく受注者(元請・下請)側にも規制が拡大され、「著しく短い工期で契約してはならない」と明確に禁止されました。

この記事では、工期ダンピングの定義・原因・問題点をはじめ、国交省が公表した適正工期ガイドライン(工期に関する基準)との関係、そして入札制度との結びつきまで、現場目線でわかりやすく解説します。施工管理として働く方、建設企業の経営者、入札・積算担当者にとって必ず押さえておきたい内容です。

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工期ダンピングとは?基本的な意味と定義

工期ダンピングとは、本来必要とされる工期よりも著しく短い期間で工事契約を結ぶことを指します。建設業界では深刻な問題として認識されており、2025年施行の改正建設業法でも強く規制されている行為です。工期を不当に短く設定すると、安全・品質・働き方のすべてに悪影響が及ぶため、国も強い姿勢で是正を求めています。

工期ダンピングが問題視される背景には「価格競争の激化」「人手不足」「多重下請構造」など、業界特有の構造が存在します。まずは、その基本的な意味と、なぜ国交省が「深刻な問題」と繰り返し警告しているのかを整理しておきましょう。

工期を必要以上に短く設定して受注する行為

工期ダンピングとは、適正な工期よりも極端に短い工期で契約を結ぶことです。
例としては以下のようなケースがあります。

  • 本来「3ヶ月」必要な工事を「1ヶ月」で契約する
  • 天候や作業工程を無視して無理なスケジュールで受注する
  • 下請に短納期のしわ寄せをする

建設業法19条の5では「通常必要な期間に比して著しく短い工期の契約は違法」と明記されており、発注者も受注者も締結してはならない行為とされています。

低価格受注(ダンピング)とセットで起こる構造的問題

工期ダンピングは、多くの場合価格ダンピングと同時に発生します

  • 低価格で受注
  • 利益を確保するために工期を圧縮
  • 実際の現場は余裕ゼロ
  • 長時間労働 → 品質低下 → クレーム増 → さらに低価格競争へ…

この悪循環は、元請だけでなく下請・専門工事業者にも連鎖し、業界全体を疲弊させる最大の原因になっています。

工期が短ければ人件費を削れるように見えますが、実際には事故・手戻り・補修・遅延損害金のリスクが増え、経営的にも大きな損失を生みます。

国交省が「深刻な問題」として指摘している理由

国土交通省が工期ダンピングを明確に問題視する理由は、以下の3点です。

労働環境の悪化(建設業の2024年問題)

短工期は長時間労働を必然的に生み、人材の定着を妨げます。
担い手不足が加速する最大要因とされています。

品質・安全の確保が困難になる

工事の品質不良は構造物の安全性に直結し、事故のリスクを高めます。
公共インフラの老朽化が問題になる中、品質・安全基準の厳格化は不可欠です。

産業の持続性が損なわれる

短期的な利益を追求した無理な工期は、
会社の財務リスク・現場離職・技能者不足など長期的ダメージを与えます。

国交省は「適正工期の確保は建設業界全体の基盤」と明言しており、工期ダンピングは単なる「悪質な契約」ではなく、産業全体の持続可能性を損なう行為とされています。

なぜ工期ダンピングが起こるのか?背景と構造

工期ダンピングは、単なる「悪質な受注」ではなく、建設業界の構造的課題から生まれる問題です。価格競争の激化、慢性的な人手不足、多重下請構造——これらが複合的に作用することで、適正工期が守られにくい環境が形成されています。ここでは、現場で実際に起きている背景を整理しながら、なぜ工期ダンピングが常習化しやすいのかを解説します。

低価格競争による無理な受注

建設業界では「価格競争」が固定化しており、
価格で勝つために工期を削る という受注が発生しがちです。

  • 受注競争が激しい
  • 利益を確保するためには工期を短縮せざるを得ない
  • 「短くすればコストも下がる」という誤解が拡大
  • 結果、工期と価格の両方がダンピングされる

特に民間案件では、発注者の知識不足から「短い工期=良い会社」という誤った評価基準が生まれる場合もあり、無理な短期契約が増加します。

人手不足・技能者不足による「回せない現場

工期ダンピングが起こる最大の原因は、深刻な技能者不足です。

  • 職人の高齢化
  • 若手の入職者減少
  • 2024年残業上限規制で人員不足がさらに顕在化

本来であれば「人がいない → 工期が伸びる」が自然な流れですが、現実は逆。
人員不足の穴を埋めるために工程が圧縮され、「人が足りないのに短納期」という矛盾が現場に強制されます。

その結果、無理なスケジュールを前提にした契約が生まれ、工期ダンピングが常態化します。

元請・下請の構造(請け負い階層の利益圧縮)

日本の建設業界は多重下請構造が特徴で、
元請 → 一次 → 二次 → 三次… と請負階層が深くなるほど利益が薄くなっていきます。

そのしわ寄せとして、

  • 下位の下請業者へ短納期で発注
  • 実質的なコストと工期の「押し付け」
  • 「断れば次がない」という弱い立場につけ込まれる

結果として、元請が適正工期で受注していても、下請段階で工期ダンピングが発生するケースも多く、国交省が深刻な問題として取り上げています。

公共工事・民間工事での発生パターンの違い

工期ダンピングは公共工事と民間工事で構造が異なります。

●公共工事

  • 入札制度があるため価格競争が激化
  • 遅延損害金のルールが厳格
  • 工程調整に行政の都合が絡む
    → 効率より「年度内完了」が優先されるケースもあり、短工期化しやすい

●民間工事

  • 発注者が工事に不慣れなケースが多い
  • 短納期要求が「当たり前」という誤解
  • 現場の実情を理解されにくい

民間のほうが工期交渉が難しく、結果として短納期の圧力は民間のほうが強い傾向があります。

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工期ダンピングが引き起こす問題点

工期ダンピングは「工期を短くしてコストを抑えるための手段」と誤解されがちですが、実際には安全・品質・働き方・企業評価 のすべてに深刻な悪影響を及ぼします。現場に無理なスケジュールを強いることは、短期的にも長期的にも大きなリスクを生み、企業の信頼と利益を奪う行為です。ここでは、現場で起きている代表的な問題を整理し、なぜ工期ダンピングが「絶対にやってはいけない」とされるのかを明確にします。

長時間労働・休日ゼロの過酷な現場

短い工期で工事を終えるためには、
残業・休日作業が前提のスケジュールが組まれます。

  • 毎日12〜14時間労働
  • 休みが月に1〜2日だけ
  • 現場代理人の拘束時間が極端に長くなる
  • 疲労で判断力が低下し事故が増える

工期ダンピングが生む長時間労働は、2024年残業規制(建設業の働き方改革)とも完全に矛盾しており、国交省が強い危機感を示す大きな理由です。

品質低下・施工不良・クレーム増加

工事の品質は「適正な工期」によって守られます。
工期が短縮されると、以下のような工程が削られやすくなります。

  • 養生・乾燥時間の不足
  • 検査工程の省略
  • 手順を飛ばす「置き去り施工」
  • ベテラン不在での強行施工

結果として、

Danger
Danger
Danger
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など、企業の利益と信用を大きく失うリスクが高まります。

安全管理の崩壊・事故リスクの増大

工期が短い現場では、
安全管理より「とにかく工程を進めること」が優先されてしまいがちです。

  • KY活動の形骸化
  • 安全設備の設置遅れ
  • 高所無足場施工の強行
  • ヘルメット・ハーネス未着用
  • 危険行為の黙認

これらはすべて、死亡災害・重傷事故に直結します。
国交省の資料でも、事故が発生した現場の多くで過密工程が要因だと指摘されています。

若手が定着しない 「離職の連鎖

長時間労働・疲弊した現場では、若手が育ちません。

Danger
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この 負のスパイラル が、工期ダンピングで最も深刻な影響といわれます。

若手が定着しなければ、中長期的に企業の競争力が下がり、
受注力・技術力の両面でダメージを受けます。

企業の評判悪化・次の入札が不利に

工期ダンピングの影響は現場に留まりません。

  • 施工不良による瑕疵
  • 下請からの不満の蓄積
  • 労働環境の悪評
  • 監督官庁からの指導・勧告
  • 公共工事の入札で不利評価

特に公共工事では、
安全・品質管理の評価点 が入札に影響するため、
工期ダンピングを繰り返す企業は確実に不利になります。

信用低下は、最も高い代償です。

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適正工期ガイドライン(工期設定の考え方)との関係

工期ダンピングの問題が深刻化したことで、国土交通省は「適正工期の確保」を建設業界の最重要テーマとして扱い、工期設定の基準(ガイドライン)を整備してきました。特に2024年以降は、残業規制の導入や担い手不足の加速に合わせてガイドラインが強化され、発注者・受注者の双方が守るべき 「工期の考え方」が明確化されています。

ここでは、その要点と実務での使い方をわかりやすくまとめます。

2024年に強化された「適正工期確保」の国交省方針

国交省は2024年、建設業界の働き方改革を本格化させるため、
工期に関する基準」(工期ガイドライン)を改定しました。

改定の狙いは以下の通りです。

  • 2024年残業上限規制に対応し、過密工程を防ぐ
  • 工期ダンピングの抜け道を塞ぐ
  • 発注者側にも工期設定の責任を明確化
  • 若手が定着できる工期=持続可能な工期を業界標準化

ガイドラインでは、工期を設定する際に必ず考慮すべき要素が具体的に明示されており、

「通常必要と認められる期間」=“発注者が勝手に決められない

という原則が、従来より明確に示されています。

工期ダンピング防止のためのチェックポイント

ガイドラインでは、工期を設定する際のチェック項目が細かく示されています。
特に重要なポイントは次の通りです。

(1)工程ごとの必要日数の算定

  • 基礎、躯体、仕上げなど各工程ごとに必要日数を明確化
  • 下請の作業量も反映することを義務化

(2)準備・片付け・検査などの付帯作業も含める
目に見えない工程も「必要日数」として計上する必要があります。

(3)天候・季節要因の考慮

  • 雨天・積雪など想定停止日数を盛り込む
  • 台風シーズン等は工期余裕を持たせる

(4)技能者数・施工管理体制を反映
「この人数でこの日数は可能か?」という視点で工期算出。

(5)安全対策・検査のための時間確保
安全・品質を担保する最低限の時間を省略してはならない。

このように、工期は 「積み上げ方式」で算定すべきものと明示され、
「発注者の希望」や「経験則」だけで決めることは禁止方向になっています。

民間工事にも適用可能な考え方

適正工期ガイドラインは公共工事向けに整備されたものですが、
国交省は 民間工事にも積極的に活用を推奨 と明言しています。

理由は下記の通りです。

  • 民間工事のほうが工期ダンピングが多い
  • 発注者の理解不足がトラブルを生みやすい
  • 適正工期の根拠を示すことで交渉しやすくなる
  • セットバックや工事内容変更への説明責任を果たせる

つまり、ガイドラインは「公共工事専用のルール」ではなく、
建設業界すべてに共通する「工期の基準」という位置づけです。

工期変更(延長)の正当な理由とは?

現場では工事開始後に工期が延びるケースは珍しくありません。
ガイドラインでは、工期延長が正当と認められるパターンが整理されています。

代表例は以下の通りです。

  • 設計変更・追加工事
  • 予期しない天候悪化(長雨・台風・豪雪)
  • 近隣調整・安全確保のための中断
  • 資材高騰による納期遅延
  • 発注者の判断待ち・協議遅延
  • 災害・事故など不可抗力

これらはすべて 工期延長を認めるべき事由 とされ、
発注者は協議に誠実に応じることが義務化されています(入契法・建設業法)。

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工期ダンピングと入札制度の関係

工期ダンピングは、単なる企業内部の問題ではなく、入札制度の仕組みそのものと密接に関係しています。
特に公共工事では、価格競争や評価制度の影響により「過度な低価格受注」が生まれ、それとセットで無理な短工期が発生しやすくなります。

ここでは、最低制限価格制度や総合評価方式、担い手確保型入札、さらにCCUSによる技能者評価が工期算定にどう影響するのかを、実務目線で整理します。

最低制限価格制度の限界(工期は縛れない)

公共工事では、過度な価格競争を防ぐために
最低制限価格制度 が導入されています。

しかし、この制度には大きな限界があります。

  • 最低制限価格は「価格」だけを規制する
  • 「工期の妥当性」まではチェックしない
  • 安値受注は止められても、短工期受注は止められない
  • 実際は「安値+短工期」がセットで発生しやすい

そのため、最低制限価格制度だけでは工期ダンピングを防止できず、実務では
価格は適正でも、工期が不適正
という案件が依然として発生しています。

この限界が、工期ダンピングが続く一因になっています。

総合評価方式で「技術・安全」が重視される流れ

近年の公共工事では、価格一本勝負ではなく
総合評価落札方式(総合評価方式) が主流です。

ここでは以下の要素が評価対象になります。

  • 安全管理体制
  • 品質確保の実績
  • 技術者の能力
  • 工程管理計画
  • 若手育成・働き方改善への取り組み

特に国交省が強調しているのは、
無理のない工期で実施できる工程計画か?

つまり総合評価方式では、

短工期 → 減点
適正工期 → 加点対象

という流れが強まり、工期ダンピングが不利になる方向へ制度が動いています。

担い手確保型入札方式で工期が見直される理由

若手不足・技能者不足の深刻化を受けて、
国交省は 担い手確保型入札方式 の導入を進めています。

担い手確保型では、以下が重視されます。

  • 過密工程の排除
  • 適正工期の確保
  • 働き方改革(週休2日モデル工事)
  • 若手・技能者の処遇改善
  • 下請への適正な工期・単価の提示

この入札方式では、「短い工期」はむしろ評価が下がります。

つまり、担い手確保型の普及により
適正工期でないと落札できない時代
へ確実に移行しています。

CCUS(技能者レベル)が工期見積りに影響する時代へ

CCUS(建設キャリアアップシステム)の技能者レベルは、
工期設定の根拠として扱われる時代に入っています。

  • レベル1〜4の技能者構成
  • 現場に配置できる人数
  • 技能者の熟練度(=作業スピード)
  • 若手比率と育成計画

これらは、工期算定に直接影響します。

例:レベル4が多い現場 → 工期が短縮可能
  若手が多い現場 → 工期に余裕が必要

国交省も「技能者レベルに応じた工期設定」を推奨しており、
CCUSは単なる勤怠・資格管理ツールではなく、
適正工期の根拠としてのデータベースとして機能し始めています。

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工期ダンピングを防ぐための対策(企業・現場でできること)

工期ダンピングを根絶するには、法改正だけでは不十分です。企業側の「見積もり精度の向上」や「工程管理の再設計」、現場の「安全・品質を優先した判断」がなければ、短工期を押し返すことはできません。ここでは、企業経営・施工管理・現場の実務で今日からできる具体的対策をまとめます。

工期見積りの標準化(工種別・工程別の工数算出)

工期ダンピングが起こる根本原因の一つは、
根拠のない工期見積もり」 にあります。

そのため、以下のように工期算定を 「標準化」することが重要です。

(1)工種ごとの必要工数を算出

  • 基礎、躯体、造作、仕上げなど
  • 工種別の標準歩掛かり(1日あたり作業量)を明確化

(2)工程ごとに必要日数を積み上げる

  • 準備作業
  • 仮設・養生
  • 品質検査
  • 片付け
  • 曜日・季節ごとの想定停止日

(3)予備日を必ず設定

急な雨天・指示待ち・資材遅延など現場では必ず想定外が起きるため、
最初から予備日を工期に入れておく必要があります。

これにより、
「なぜこの工期が必要なのか?」を根拠ある数字で説明できるようになります。

技能者数・施工管理工数を可視化する仕組み

短工期のしわ寄せが起きる最大原因は、
「人員配置と工期の矛盾」です。

そのため、工期算定には技能者・管理者の「稼働実態」を反映します。

  • 自社社員のスキル(CCUSレベル)
  • 協力会社の技能者数・配置可能日
  • 現場代理人・監督員の負荷
  • 多現場掛け持ちの制限
  • 週休2日推進工事の場合の稼働可能時間

これらのデータを見える化することで、

この人数では、この工期は不可能

と企業として根拠を持って回答できます。

管理者の工数が見える化されていれば、
「管理書類地獄」の防止にもつながります。

DXによる工程管理(BIM・ANDPAD・遠隔臨場)

適正工期を守るためには、
工程管理のDX(デジタル化)が必須 です。

特に効果が大きいのは以下のツールです。

BIM

  • 施工順序を視覚化
  • 工程の重複・干渉を見える化
  • 工期短縮や工程変更の根拠を作れる

ANDPAD / KENTEM / SPIDER等の工程管理ツール

  • 進捗の遅れが即座に可視化
  • 現場写真・報告の一元管理
  • 発注者との情報共有を効率化

遠隔臨場

  • 監督の移動時間を削減
  • リアルタイムで状況把握
  • 立会検査の効率化で実質的な工期余裕が生まれる

DXは「工期を短縮するための魔法」ではなく、
工期の根拠を説明し、ムリ・ムダ・ムラを削減するための仕組みです。

元請・下請間の適正な契約・調整

工期ダンピングの多くは、
元請 → 下請 → 二次… と下に押し付けられる構造
の中で発生します。

対策としては以下が重要です。

  • 工期の協議は受注前に実施
  • 工種ごとの工程調整を元請が主導
  • 下請の「不可能」を尊重する
  • 工期短縮は価格の見直しとセットで検討
  • 品確法・建設業法に沿った契約内容を遵守

法律改正後は、下請が短工期契約を結ぶこと自体が違法となるため、
元請側も 押し付けが通用しない時代 に入っています。

現場からの「工期再検討」の提案方法

現場側が「この工期は不可能」と感じた場合、
正式に工期変更を提案する必要があります。

提案時に必ず入れるべきポイントは以下です。

  • 過密工程になっている具体的理由
  • 技能者数と作業量の不一致
  • 天候・安全面でのリスク
  • 代替案(延長案・工程変更案)
  • 遅延を防ぐための改善策

“現場の声” は法的にも重要な根拠
(建設業法19条の5)。

発注者・元請は誠実に協議する義務があるため、
現場の意見は軽視できません。

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工期ダンピングは施工管理の働き方にどう影響する?

工期ダンピングは、施工管理の働き方に最も大きな負担を与える行為です。
「工事が予定通り進むか」「安全管理ができるか」「下請調整が可能か」——
これらのほぼ全責任が施工管理に集中するため、短工期は働き方改革の流れと真逆の結果を招きます。

ここでは、施工管理の実務と働き方がどう変わるのかを整理します。

残業規制(2024年問題)との矛盾

2024年4月から、建設業にも「残業上限規制」が適用されました。

月45時間
年360時間が原則(例外も厳格化)

しかし、工期ダンピングが起きている現場では、

  • 毎日12時間労働
  • 休日ゼロ
  • 現場の作業が終わるまで帰れない
  • 書類作成は夜に回される

という状況が続いており、法改正と現場が完全に矛盾しています。

施工管理は現場の遅延を補うために自ら長時間勤務を行い、
「働き方改革の対象外のような状況」 が生まれています。

結果として、

  • 心身の疲弊
  • 若手が辞める
  • 管理職のなり手が不足
  • スキル承継が進まない

といった深刻な影響が連鎖的に発生します。

現場管理の負担増と「管理書類地獄」

短工期の現場では、工程調整どころではありません。

施工管理が背負う負荷は以下のように増加します。

  • 毎日の進捗会議が長期化
  • 手戻り・トラブル対応が増加
  • 安全書類・施工計画書の修正が頻発
  • 追加作業の対応調整
  • 夜間に書類作成・写真整理
  • 発注者との協議が増える

つまり短工期は、
施工管理の仕事量を2倍にする と言っても過言ではありません。

短工期ほど書類が増え、現場が荒れ、作業効率が低下するため、
施工管理のストレスは限界に達しやすくなります。

適正工期が確保されると働き方はどう変わる?

一方、適正工期が確保される現場では、働き方は劇的に改善します。

(1)計画的な工程管理が可能

  • 工程が無理なく組める
  • 安全・品質の時間が確保
  • 下請との調整もスムーズ

(2)書類作成の時間が確保

  • 夜間残業が激減
  • 書類ミスが減る
  • 発注者対応も丁寧にできる

(3)安全管理が強化され事故が減る

  • KY活動を丁寧に実施
  • 検査の時間が確保
  • 現場全体が整う

(4)若手教育がしやすくなる

  • ベテランが新人を指導できる余裕
  • 技能承継が進む
  • 続けられる現場に変わる

施工管理は「人と現場を動かす仕事」であり、
時間的な余裕があるほど現場が安定し、働き方も改善します。

DX時代の施工管理に求められる能力

適正工期の時代では、施工管理に必要な能力も変わります。

【今後求められるスキル】

  • 工程をデータで組む力(積算的思考)
  • BIM・CIMの基本操作
  • ANDPADなどの工程管理アプリの運用
  • 遠隔臨場での検査・監査対応
  • CCUSを活用した技能者管理
  • 発注者との協議能力(交渉力)
  • チームマネジメント力

DXを使いこなせる施工管理は、今後間違いなく価値が上がります。

特に
適正工期をデータで説明できる施工管理
は、企業にとって不可欠な存在になります。

よくある質問(FAQ)

工期ダンピングは違法ですか?

はい、違法です。
建設業法19条の5で「通常必要と認められる期間に比べて著しく短い工期」での契約は、発注者・受注者双方に対して禁止されています。違反すると指導・勧告、企業名公表、悪質な場合は営業停止などの行政処分が行われます。2025年以降は規制がさらに厳格化し、短工期契約は「やってはいけない行為」 と明確になりました。

工期設定の責任は誰にありますか?

工期設定は発注者と元請の共同責任です。
発注者は工期を根拠なく押し付けてはならず、元請は下請に無理な工期を提示してはいけません。工期は工程ごとの必要日数・技能者数・天候などを踏まえた「積み上げ方式」で算定する必要があります。

発注者が不可能な短工期を指定してきた場合は?

契約前に必ず工期協議を行う義務があります。
国交省ガイドラインを根拠に、必要日数・安全リスク・手戻りリスクを説明し、正式に工期の再協議を申し入れましょう。無理な工期と知りながら契約すること自体が受注者側の違法行為に該当するため、曖昧に飲むことは避けるべきです。

工期延長はどのような場合に認められますか?

以下はガイドラインでも明確に「工期延長が正当」と認められる代表例です。

  • 設計変更・追加工事が発生した場合
  • 資材納期の遅延、資材高騰による調達困難
  • 長雨・大雪・台風などの天候不良
  • 発注者の承認遅れや判断待ち
  • 地中障害・不測の障害物の発見
  • 労働安全確保のための中断措置が必要な場合
  • 災害・事故など不可抗力

これらは発注者が原則として拒否できない事由であり、記録を残しながら協議することで適切に工期延長を認められます。

民間工事でも工期ダンピング防止のルールは適用されますか?

はい、実質的に適用されます。
ガイドラインは公共工事向けに作られましたが、国交省は「民間工事でも積極活用すべき」と明言しています。民間のほうが短工期の押し付けが起こりやすいため、ガイドラインを根拠に協議することでトラブル防止に大きく役立ちます。

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まとめ|適正工期は“安全・品質・働き方”のすべてを守る基盤

工期ダンピングは、業界が抱える多くの問題の根源と言われています。短工期は一見効率的に見えても、実際には安全リスクの増大、品質低下、長時間労働、若手離職、企業評価の低下といった深刻な影響を引き起こします。

国交省は2024〜2025年にかけて「工期に関する基準(適正工期ガイドライン)」を強化し、発注者・受注者の双方が無理な工期で契約しないよう明確なルールを示しました。今後は、適正工期を根拠ある数字で説明し、工種ごとの必要日数・技能者数・安全管理の実態を踏まえた「積み上げ方式」で工期を決めることが必須となります。

施工管理にとって、適正工期の確保は単なる「働きやすさ」ではなく、
現場の安全を守り、品質を高め、企業の信頼と利益を守るための基です。
建設業界全体が持続可能な産業へと進むためにも、工期ダンピングを許容しない風土づくりが求められています。

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