3次下請け以降は不可!?本格化する国交省の”下請け重層化”施策とは
建設業界でかねがね問題視されている”下請けの重層化”。
重層下請け構造はある程度必然的・合理的な側面があるとされる一方で、施工に関する役割や責任の所在が不明確になること、品質や安全性の低下等、さまざまな影響や弊害が指摘されてきました。
このたび2022年より、国土交通省が改善に向けて本格的に動き始めたことでさらなる注目を浴びています。
今回は、現状進行している下請け重層化に関する施策を見ていきましょう。
持続可能な建設業に向けた環境整備検討会
2022年8月、国土交通省でとある検討会が開催されました。
名称はずばり、”持続可能な建設業に向けた環境整備検討会”。
このように国土交通省が”検討会”と名の付くものを開催したときは、業界の課題に対してルールが制定されたり、行政の方針が見直されたりする流れが起きます。
検討会で取り上げられた課題には、ほぼ何らかの対策・施策が打ち出されると考えていいでしょう。
そして”持続可能な建設業に向けた環境整備検討会”においては、まさにこの”重層下請け構造”が課題として取り上げられました。
国土交通省が重層下請け構造は重要課題だという認識を持ったからこそ、改善に舵を切ったということですね。
鹿島建設の下請け制限に関する施策
重層下請け構造問題に対し、すでに施策を打ち出しているのがスーパーゼネコンの1社である鹿島建設です。
スーパーゼネコンとは、単体の売上高が1兆円以上あるゼネコンを指し、国内では次の5社が該当します。
- 大成建設
- 鹿島建設
- 清水建設
- 大林組
- 竹中工務店
では、どのような施策を打ち出しているのでしょうか。
2021年11月に鹿島建設のコーポレートサイトで発表された声明の内容を見てみましょう。
つまり二次までの下請け制限を行うと言っているのですが、さらに”2023年度までに100%達成”を掲げているところも見逃せません。
2023年4月以降は、当社が施工する全ての建設工事において、例外措置を明確化した上で、『原則2次下請までに限定した施工体』制を実現すべく取り組んでいく」
鹿島建設としては、”二次下請以内”が限界であり、三次下請より下は重層下請けとして問題視しているようです。
では、このような下請け制限は何を目的として行われるのでしょうか?
また、元請としてさらに目が行き届く管理体制になるため、一次下請の職長が二次下請の職長に適切な指示や指導をより丁寧に行うことができ、「見るべき人が見る安全管理」にもつながっていく」
この声明によれば、鹿島建設が下請け制限を行う目的は次の3つです。
1つ目は、下請け構造が深くなるほど技能者にわたる賃金が減ってしまうため、それをやめたいということ。
2つ目は、このように待遇が良くすることで若手入職者の増加を促したいということ。
3つ目は、下請けの階層を制限することで安全管理の目を行き届かせたいということ。
鹿島建設はスーパーゼネコンの1社で、いわば建設業界のリーディングカンパニーです。
よって、このように明確な目的と期限を定めてまで下請け重層構造の是正に取り組んでいるということですね。
国土交通省の下請け制限に関する施策
では国土交通省では現状、下請け重層化に対してどのような施策が講じられているのでしょうか。
実は一部の自治体ではすでに下請け制限が開始されています。
詳しくは次の資料をご覧ください。
こちらはすでに下請け制限に取り組んでいる1府・7県の一覧です。
おおよそ土木は2次まで、建築は3次までと規制がかけられているのがおわかりでしょうか。
さらにあまりひどい場合には、ペナルティとして指名停止などが実施される場合もあります。
このように現在は一部の自治体のみでの規制となっていますが、国土交通省も検討会を設けたほどですから、このような下請け制限の動きはどんどん本格化するものと思って良いでしょう。
まとめ
今回は”下請け重層化”をテーマに、国土交通省やスーパーゼネコンの鹿島建設ですでに行われている施策を紹介しました。
次の記事では、下請け重層構造が起きるそもそもの原因と、国土交通省の今後の対応について解説します。
この記事の続きは以下の記事になります。