次の10年で建設業はどう変わる?施工管理が知るべき新しい政策ビジョン

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建設業界は今、大きな転換点に立っています。

  • 人手不足。
  • 技能者の高齢化。
  • 若手の離職。
  • 賃金や処遇の課題。
  • 重層下請構造。
  • 中小建設会社の経営力不足。
  • 地方自治体の技術系職員の減少。
  • 災害対応力の維持。
  • 民間工事における契約方式の限界。

こうした課題は、どれか一つだけを解決すれば済むものではありません。

建設業がこれからも社会インフラを支え、地域経済を守り、若い世代に選ばれる産業であり続けるためには、業界全体の仕組みを見直す必要があります。

そうした中で、国土交通省は「持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会」を設置し、建設業政策の新しいビジョン策定に向けた議論を始めました。

今回の検討会では、今後10年先までを見据え、建設業を「成長し、希望を持てる産業」にしていくための方向性が議論されます

このニュースは、国の政策や業界団体だけの話に見えるかもしれません。

しかし、施工管理者にとっても非常に重要です。

なぜなら、これから議論される処遇改善、月給制、企業評価、入札・発注制度、重層下請構造、OBCF契約、技術者制度の見直しは、すべて現場の働き方や施工管理の役割に関わってくるからです。

この記事では、建設業政策ビジョンの議論をもとに、次の10年で建設業がどう変わるのか、施工管理者がどのような視点を持つべきかを解説します。

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建設業は「成長産業」として見直される段階に入った

これまで建設業は、社会インフラや建築物を支える重要な産業でありながら、
どちらかといえば「人手不足の業界」「高齢化が進む業界」「若手が入りにくい業界」として語られることが多くありました。

しかし、これからの建設業には、別の見方も必要です。

  • 老朽インフラの更新。
  • 災害に強い国土づくり。
  • 半導体工場やデータセンターを支えるインフラ整備。
  • 都市再開発。
  • 地域の維持管理。
  • 脱炭素化に対応した建築。
  • AIやICTを活用した生産性向上。

こうした需要を考えると、建設業は単に「人が足りない産業」ではなく、今後も社会から必要とされ続ける成長分野でもあります。

問題は、その需要に応えられるだけの人材、企業体力、施工体制、契約制度が整っているかどうかです。

仕事はある。
社会的な役割も大きい。
しかし、人が残らない。
若手が育たない。
協力会社が疲弊している。
適正な価格で受注できない。
現場管理が属人的になっている。

この状態では、建設業は成長産業になりきれません。

だからこそ、政策ビジョンでは、単に建設投資を増やすだけでなく、
建設業で働く人や企業が将来に希望を持てる仕組みづくりが重要になります。

施工管理者にとっても、これは大きな意味があります。

今後は、現場をただ納めるだけではなく、働く人が続けられる現場、協力会社が疲弊しない現場、若手が成長できる現場をつくれるかが、会社の競争力に直結していくからです。

「次の10年」が建設業の明暗を分ける

 

今回の検討会では、「次の10年こそが建設業の明暗を分ける岐路」という認識が共有されています。

これは非常に重い言葉です。

なぜなら、建設業の課題は、今すぐ表面化しているものだけではないからです。

  • 今のベテランが引退した後、誰が現場を支えるのか。
  • 若手が入っても、育つ前に辞めてしまわないか。
  • 専門工事会社の施工力は維持できるのか。
  • 地方の小規模建設会社は地域インフラを守り続けられるのか。
  • 災害時に動ける建設会社は残っているのか。
  • 技術者や技能者に十分な処遇を示せるのか。

こうした問題は、数年で急に解決できるものではありません。

人を育てるには時間がかかります。
会社の体制を変えるにも時間がかかります。
旧来の業界慣行を変えるにも時間がかかります。
発注者や元請、下請の関係を見直すにも時間がかかります。

だからこそ、10年先を見据えたビジョンが必要になります

施工管理の現場でも同じです。

目の前の工程を守ることは大切です。しかし、それだけでは次の現場を支える人が育ちません。

若手にただ作業を振るだけではなく、なぜその管理が必要なのかを教える。
協力会社に無理をお願いするだけではなく、長く付き合える関係をつくる。
ベテランの判断を、個人の経験だけで終わらせず、記録や仕組みに残す。
現場の改善を、次の工事に活かす。

こうした積み重ねが、次の10年の建設業を支えることになります。

処遇改善は「月給制」まで踏み込む段階へ

今回の検討テーマの一つに、他産業以上の処遇を実現するための月給制への転換があります。

建設業では、現場で働く技能者の処遇改善が長年の課題です。

日給月給や出来高に近い働き方では、天候や工事量に収入が左右されやすくなります。雨で作業が止まる。猛暑で作業時間が短くなる。工事の繁閑で仕事量が変わる。こうした状況では、若手が将来の生活設計を描きにくくなります。

建設業が若手に選ばれる産業になるには、収入の安定が欠かせません。

月給制への転換は、そのための一つの方向性です。

ただし、月給制にすればすべて解決するわけではありません。

企業側には、仕事量の繁閑にどう対応するかという課題があります。忙しい時期と仕事が少ない時期がある中で、安定した給与を支払うには、受注の平準化、工期の分散、複数現場の調整、維持管理業務の確保などが必要になります。

施工管理者にとっても、これは関係があります。

工程の組み方、協力会社の手配、作業の平準化、繁忙期の人員配置は、現場の収入安定にも影響します。

無理な工程で一時的に人を集中させるのではなく、できるだけ安定して働ける施工計画を考えることが、今後さらに重要になるでしょう。

建設業の処遇改善は、単に賃金を上げる話ではありません。
働き方、工期、発注、施工計画、企業経営を一体で見直す必要があるテーマなのです。

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企業評価は「安さ」から「良い会社を選ぶ」方向へ

検討会では、「企業評価WG」の設置も決まりました。

このワーキンググループでは、処遇改善や生産性向上を実践する企業をどう評価するか、評価結果をどう活用するかが議論されます

これは、今後の建設会社にとって非常に重要な流れです。

これまでの建設業では、入札や受注において価格が大きな要素でした。もちろん価格は重要です。しかし、価格だけを重視しすぎると、処遇改善、安全対策、生産性向上にきちんと取り組んでいる会社が評価されにくくなります。

これからは、単に安い会社ではなく、良い現場をつくれる会社が評価される必要があります。

  • 技能者の賃金を上げているか。
  • 社会保険や法定福利費を適正に確保しているか。
  • 若手育成に取り組んでいるか。
  • ICTやデジタル化で生産性を上げているか。
  • 安全衛生管理を徹底しているか。
  • 専門工事会社の施工能力を見える化しているか。
  • 協力会社にしわ寄せをしていないか。

こうした取り組みが、企業評価に反映されるようになれば、建設業の競争軸は変わります。

施工管理者も、自分の現場での取り組みが会社の評価につながる可能性があります。

日報や写真管理をきちんと行う。
安全教育の記録を残す。
若手の育成状況を見える化する。
協力会社との打ち合わせ記録を残す。
ICT活用の効果を記録する。
品質トラブルを未然に防いだ事例を共有する。

こうした現場の積み重ねが、会社としての評価材料になる時代が来るかもしれません。

重層下請構造の見直しは現場管理にも直結する

建設業の大きな課題の一つが、重層下請構造です。

建設工事は、多くの専門工事会社によって成り立っています。そのため、元請、一次下請、二次下請、三次下請といった構造が生まれやすい業界です。

専門性を持つ会社が分業すること自体は必要です。

しかし、重層化が進みすぎると、さまざまな問題が起こります。

  • 指示が末端まで伝わりにくい。
  • 安全教育の責任が曖昧になる。
  • 誰が実際に施工しているのか見えにくい。
  • 賃金や法定福利費が技能者まで届きにくい。
  • 追加変更の費用が下位会社まで届きにくい。
  • 施工力の実態が把握しづらい。

施工管理者にとっても、重層下請構造は日常的な課題です。

現場に人は来ているが、どの会社の所属なのか分かりにくい。
指示した内容が、実際の作業員まで正しく伝わっていない。
職長に伝えたつもりでも、別の班に共有されていない。
安全ルールの理解度に差がある。
追加作業の精算で協力会社間の認識がずれる。

こうした問題は、工程や安全、品質に直結します。

今後、政策ビジョンの中で重層下請構造の改善が議論されることは、現場にとっても大きな意味があります。

施工管理者は、施工体制台帳を整えるだけでなく、現場の実態として、誰が、どの会社の指揮命令系統で、どの作業をしているのかを把握する必要があります。

重層構造を見える化することは、現場を安全に動かすための基本でもあります。

入札・発注制度の見直しは現場の余裕を左右する

検討会では、「入札・発注WG」も設置されます。

このワーキンググループでは、地方自治体の技術系職員の減少を踏まえ、円滑な入札・発注を支える制度改善が議論されます。災害時の対応も視野に入っています。

これは、施工管理者にも大きく関係します。

  • 発注が遅れる。
  • 設計図書が不十分なまま発注される。
  • 工期設定が厳しい。
  • 予定価格が実勢価格に合っていない。
  • 設計変更の判断が遅い。
  • 発注者側に技術的な相談相手が少ない。

こうした状況では、現場にしわ寄せが来ます。

特に地方自治体では、技術系職員の減少により、発注や設計変更、工事監督、検査などの負担が大きくなっています。発注者側の体制が弱くなると、受注者側との協議もスムーズに進みにくくなります。

施工管理者は、発注者と現場の間に立って調整する立場です。

そのため、入札・発注制度の改善は、現場の負担軽減にもつながります。

適正な工期で発注される。
現実的な予定価格が設定される。
設計変更のルールが明確になる。
災害時の発注手続きが円滑になる。
発注者と受注者の情報共有が進む。

こうした仕組みが整えば、施工管理者は現場運営に集中しやすくなります。

OBCF契約は民間工事の新しい選択肢になる

今回の検討会では、民間工事も見据えたオープンブック・コストプラスフィー契約、いわゆるOBCFの活用促進も議論されます。

OBCFとは、受注者が実際にかかったコストを発注者に開示し、その実費に事前に合意した報酬を加えて支払う契約方式です。

物価変動が大きい時代には、従来の総価一式契約だけでは対応しきれない場面があります。

  • 資材価格が契約後に上がる。
  • 労務費が見積時点より上がる。
  • 設計内容が途中で変わる。
  • 発注者の要望が追加される。
  • 設備工事の仕様が確定しない。
  • 協力会社の見積りが変わる。

こうした状況で、最初に決めた総額の中だけで現場を動かそうとすると、どこかに無理が出ます。

OBCFは、コストを見える化しながら、発注者と受注者がリスクを分担する契約方式です。

施工管理者にとっては、現場で発生した費用や変更を正確に記録する力がより重要になります。

どの資材がいくら上がったのか。
どの追加作業が発生したのか。
協力会社の作業量がどう変わったのか。
仮設や安全対策にどれだけ費用がかかったのか。
設計変更で何日工程が伸びたのか。

これらを記録し、説明できなければ、OBCFは機能しません。

契約方式が変わるということは、施工管理者の記録力や説明力も変わるということです。

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施工管理者に求められるのは「現場を見える化する力」

政策ビジョンの議論を施工管理者目線で見ると、共通しているテーマがあります。

それは、現場を見える化する力です。

処遇改善を進めるには、現場で働く人の実態を見える化する必要があります。
企業評価を高めるには、安全管理や生産性向上の取り組みを記録する必要があります。
重層下請構造を改善するには、施工体制を実態として把握する必要があります。
入札・発注制度を改善するには、現場で発生している課題を発注者に伝える必要があります。
OBCF契約を活用するには、コストや変更履歴を透明にする必要があります。

これからの施工管理者は、現場で起きたことを「自分の頭の中」だけに置いておくわけにはいきません。

誰が作業したのか。
どの工程で遅れが出たのか。
どの安全対策が必要だったのか。
どの変更で費用が増えたのか。
どの協力会社にどれだけ負担がかかったのか。
若手がどこまでできるようになったのか。

こうした情報を記録し、共有し、次の現場に活かすことが重要になります。

現場を見える化できる会社は、発注者にも協力会社にも若手にも説明できます。

反対に、現場の情報が属人化している会社は、制度が変わるほど対応が難しくなります。

まとめ

国土交通省が設置した「持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会」では、建設業政策の新しいビジョンに向けた議論が始まりました。

検討会では、次の10年を見据え、建設業を成長し、希望を持てる産業にしていくための方策が議論されます。

主なテーマは、処遇改善、月給制への転換、仕事量の繁閑への対応、企業評価、重層下請構造の見直し、入札・発注制度の改善、OBCF契約、技術者制度などです。

これらは、施工管理者にとっても無関係ではありません。

処遇改善は、現場で働く人の定着に関わります。
月給制や仕事量の平準化は、工程管理や人員配置に関わります。
企業評価は、安全管理や生産性向上の記録に関わります。
重層下請構造の改善は、施工体制や安全指示に関わります。
入札・発注制度の見直しは、工期や設計変更、現場の余裕に関わります。
OBCF契約は、コストや変更履歴の記録に関わります。

つまり、建設業政策の新しいビジョンは、現場管理のあり方そのものに影響します。

これからの施工管理者に求められるのは、単に工程を守る力だけではありません。

人が定着する現場をつくる力。
協力会社に無理を押し付けない調整力。
安全や品質を記録として残す力。
コストや変更を説明する力。
若手を育てる力。
現場の実態を会社や発注者に伝える力。

次の10年で、建設業は大きく変わる可能性があります。

その変化の中心にあるのは、制度や政策だけではありません。

実際に現場を動かす施工管理者一人ひとりの取り組みです。

建設業を、若手が希望を持てる産業にできるか。
地域や社会を支え続ける産業にできるか。
働く人が誇りを持てる産業にできるか。

その答えは、これからの現場づくりにかかっています。

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