測量会社が22年連続減少。「工事の入口」を支える人たちが減っている
建設工事は、いきなり重機を動かすところから始まるわけではありません。
土地の位置や高さを測る。
現況の地形を把握する。
基準となる点を確認する。
設計図と現地の位置関係を合わせる。
こうした「測る仕事」があって、初めて設計や施工を正確に進めることができます。
その工事の入口を支えるのが、測量です。
しかし、その測量を担う事業者が長期的に減少しています。
国土交通省が2026年8月28日に公表した最新データによると、2025年度末の測量業の登録業者数は10,924業者となりました。
測量業者数が減少するのは、これで22年連続です。
ピークだった2003年度には14,750業者ありました。
つまり約20年間で、3,826業者、割合にすると約26%減少したことになります。
一方、建設現場ではドローン測量やレーザースキャナー、3次元点群データなど、新しい測量技術の活用が広がっています。
「測量会社は減っているのに、測量技術の重要性は高まっている」
建設業では今、この一見矛盾した変化が同時に進んでいます。
今回は最新データから測量業界の現在地を確認するとともに、測量会社の減少が施工管理の仕事にどのような影響を与えるのかを考えます。
測量業者は22年連続で減少

国土交通省は毎年、測量業、建設コンサルタント、地質調査業について、国土交通大臣に登録している事業者数を集計しています。
2025年度末の登録業者数は、
- 測量業:10,924業者
- 建設コンサルタント:3,917業者
- 地質調査業:1,229業者
でした。
このうち、特徴的なのが測量業です。
測量業は前年の11,140業者から216業者減少し、10,924業者となりました。
減少率は1.9%です。
2025年度中には新たに271業者が登録していますが、一方で487業者が登録消除となっています。
前年も測量業者は173業者減っており、減少は一時的なものではありません。
2003年度の14,750業者をピークに、22年間連続で減少しています。
一方で、建設コンサルタントはピーク時から多少減っているものの近年はおおむね横ばい。
地質調査業についても横ばい傾向です。
建設関連業の中でも、測量業だけが長期的な減少を続けていることが分かります。
「登録業者が減った=測量する人が同じ割合で減った」ではない
ここで注意したい点があります。
今回発表された数字は、あくまでも測量業の登録業者数です。
測量技術者の人数そのものを示した数字ではありません。
そのため、
「22年間で測量士が26%減った」
という意味ではありません。
また、登録消除487業者についても、すべてが倒産したという意味ではありません。
今回の統計だけから、測量業者が減っている原因を一つに断定することもできません。
ただし、測量業者として仕事を請け負うためには、個人・法人、元請・下請を問わず、測量法に基づく登録が必要です。
さらに、登録する営業所ごとに測量士を1人以上置くことが求められています。
その測量業者という建設生産を支えるプレイヤーが、22年間にわたって減少し続けているという事実は無視できません。
なぜ測量は「工事の入口」なのか

施工管理をしている人であれば、測量が現場に欠かせないことはよく分かっているでしょう。
例えば工事では、
- 現況地形の確認
- 基準点や水準点の確認
- 建物や構造物の位置出し
- 切土・盛土量の把握
- 道路や構造物の高さの確認
- 出来形の確認
など、さまざまな場面で「位置」と「高さ」の情報を扱います。
もし最初の測量にズレがあれば、その後の施工にも影響します。
設計図が正しくても、現地に落とし込む座標や高さが間違っていれば、正しい構造物をつくることはできません。
国土交通省が進めるi-Constructionでも、建設生産プロセスは、
調査・測量 → 設計 → 施工 → 検査 → 維持管理
という流れで整理されています。
つまり測量は、施工よりも前の段階から建設プロジェクト全体を支えている仕事なのです。
測量会社が減ると現場には何が起こる?
測量業者数が減ったからといって、明日から現場で測量ができなくなるわけではありません。
しかし、この傾向が続けば施工管理にも無関係ではありません。
1. 測量を「いつでも頼める」とは限らなくなる
建設現場では工程に合わせて測量を依頼することがあります。
工事の進捗によっては、
「来週までに現況を測りたい」
「ここを確認してから次工程に入りたい」
といった場面もあるでしょう。
測量を担える事業者が地域で少なくなれば、仕事が特定の会社へ集中する可能性があります。
その場合、施工管理側でもこれまで以上に早い段階から測量工程を組み込んでおく必要が出てきます。
測量は数日遅れても問題ない作業ではありません。
測量が終わらなければ、その先の施工に進めないケースもあります。
だからこそ、「必要になってから頼む」のではなく、工程の中で測量を先回りして考えることが重要になります。
2. 地方の建設現場ほど影響を受ける可能性もある
測量は現地で行う仕事です。
データ処理の一部は遠隔でもできますが、現況確認や基準点測量など、現場へ行かなければできない仕事は残ります。
そのため重要なのが、地域の測量事業者です。
特に道路、河川、砂防などの公共工事では、地域の地形や条件を理解した測量事業者が建設プロジェクトを支えています。
災害復旧でも、被災状況を確認し、復旧工事を進めるためには現地の位置や地形を把握する必要があります。
全国の登録業者数が減少していく中では、単に「日本全体で何社残っているか」だけではなく、
必要な地域に測量を担える事業者が存在しているか
という視点も重要になってきます。
しかし、測量そのものがなくなるわけではない
ここまでを見ると、測量業界そのものが縮小しているように感じるかもしれません。
しかし、もう一つ重要な変化があります。
それが測量のデジタル化です。
建設現場では従来、人が測量機器を持って一つひとつ測っていた作業の一部を、
- UAV(ドローン)
- レーザースキャナー
- GNSS
- 3次元点群データ
などを使って行えるようになっています。
国土地理院も、UAVによる写真測量やレーザ測量、地上レーザースキャナーなどを用いた3次元測量技術について、公共測量に活用できるよう技術マニュアルの整備を進めています。
例えばドローンを飛ばして現場を撮影すれば、広い範囲の地形情報を3次元データとして取得することができます。
従来のように「点」を一つひとつ測るだけではなく、現場全体を大量の点の集合である「点群」として把握できるようになっているのです。
測量は「測る仕事」から「データをつくる仕事」へ
3次元測量が広がることで、測量の役割も変化しています。
取得した3次元データは、測量だけで終わりません。
現況地形の3次元データと設計データを重ねれば、
「どこをどれだけ掘るのか」
「どこへどれだけ盛土するのか」
といった施工数量の把握にも利用できます。
さらに、そのデータをICT建機へ渡し、施工に活用することもできます。
施工後には再び3次元計測を行い、出来形管理にも使えます。
つまり、
測量 → 設計 → 施工 → 検査
という別々だった工程が、3次元データによってつながり始めています。
国土交通省もi-Construction 2.0を進めており、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍向上させることを目標としています。
2025年度には、AIを活用した海底測量の効率化なども実施されました。
人が減るから測量ができなくなる、という単純な構図ではなく、
少ない人数でも測量できる仕組みをつくる方向へ業界そのものが変わっている
と見ることもできます。
2026年には「国の地図」も3次元化が始まった
測量を取り巻くデジタル化はさらに進んでいます。
国土地理院は2026年4月1日から、「3次元電子国土基本図」の提供を開始しました。
従来の2次元情報に加えて、建物、道路、鉄道などに高さ情報を持たせ、3次元で国土を把握できるようにする取り組みです。
国土地理院では2028年度末までの全国整備を目指しています。
3次元データが整備されれば、
- 防災シミュレーション
- まちづくり
- ドローン飛行ルートの検討
- インフラ管理
など、さまざまな場面で利用できます。
測量業者の数は減っている一方で、社会が必要とする位置情報や3次元データの量は、むしろ増えていく可能性があります。
ここに、これからの測量業を考える大きなポイントがあります。
これから施工管理者にも「測量データを扱う力」が必要になる
測量のデジタル化が進むと、施工管理者にも変化が求められます。
もちろん、施工管理者全員が測量士になる必要はありません。
しかし、
「測量会社に測ってもらって、数字だけ受け取る」
という関わり方だけではなくなっていくでしょう。
3次元測量が当たり前になれば、
- 点群データとは何か
- 座標が何を表しているのか
- 3次元設計データとどうつながるのか
- ICT建機でどう利用するのか
- 出来形管理にどう使うのか
といったことを施工管理側も理解する必要があります。
施工管理者自身がデータを取得する場面も増えるかもしれません。
実際、ICT施工ではドローンなどによる3次元測量から設計、ICT建機による施工、出来形管理までを一連のデータでつなぐ考え方が進められています。
これからの施工管理では、
「測量をする人」と「施工を管理する人」の境界が今より近づいていく
可能性があります。
測量会社減少は「建設業の未来」を映している
2025年度末の測量業者数は10,924業者。
2003年度の14,750業者から約26%減少し、22年連続で減りました。
これは決して小さな変化ではありません。
一方で、測量という仕事自体がなくなっているわけでもありません。
ドローン。
レーザースキャナー。
GNSS。
3次元点群。
BIM/CIM。
ICT施工。
建設現場がデジタル化するほど、正確な位置情報や3次元データは重要になります。
つまり現在の測量業界では、
「業者数は減っている。しかし測量の重要性は高まっている」
という変化が起きています。
これは測量業界だけの話ではありません。
人が減っていく中で、これまでと同じ仕事量をどう維持するのか。
熟練者が担っていた仕事をデジタル技術でどう補うのか。
専門会社に任せていた仕事と施工管理の境界をどう変えるのか。
建設業全体がこれから向き合う課題が、測量の世界ではすでに表れ始めているとも考えられます。
まとめ|測量会社が減る時代、施工管理も変わる
測量は建設工事の「入口」です。
どれだけ高度な建設機械があっても、どれだけ優れた設計図があっても、現地の位置や高さを正しく把握できなければ工事は始まりません。
その測量を担う登録業者は、22年間連続で減少しています。
だからといって、測量の仕事がなくなるわけではありません。
むしろ建設DXが進むことで、測量は、
「現場を測る仕事」から「建設に必要な3次元データをつくる仕事」
へと変化しつつあります。
そして、そのデータを実際の施工へつなげるのが施工管理です。
これまで以上に測量会社と施工会社がデータでつながり、少ない人数で現場を動かしていく。
測量業者22年連続減少という数字は、単なる一業種の企業数減少ではありません。
建設業がこれからどうやって人手不足と向き合い、技術で現場を支えていくのか。
その未来を考えるうえで、象徴的な数字なのではないでしょうか。
参考資料
国土交通省「測量業は22年連続減少、建設コンサルタント、地質調査業は横ばい」
国土交通省「測量業者登録制度とは」
国土交通省「i-Construction」
国土交通省「i-Construction 2.0」
国土地理院「3次元電子国土基本図の提供を開始!」
