公共工事で「CM方式」の導入が拡大!発注者と施工管理者の役割はどう変わる?

公共工事の発注・施工管理のあり方に変化が起きています。
国土交通省が2026年9月30日に公表した調査によると、公共事業における「ピュア型CM方式」の活用実績は増加傾向にあり、今回の調査で報告された実績は852件に達しました。
CM方式とは、専門的な知識を持つ第三者が発注者の立場から建設プロジェクトを支援する仕組みです。
発注者側の技術職員不足や公共工事の複雑化を背景に注目されていますが、施工管理者にとっても無関係ではありません。
CM方式が導入されると、工事の進捗報告や設計変更の協議、品質・コスト管理などに、どのような影響があるのでしょうか。
本記事では、国土交通省の最新調査をもとに、CM方式の仕組みや導入状況、発注者・CMR・施工管理者それぞれの役割について詳しく解説します。
CM方式とは?公共工事で注目される新たなマネジメント手法

CM方式とは「Construction Management(コンストラクション・マネジメント)方式」の略称です。
発注者から依頼を受けた専門家が、建設プロジェクトの計画・設計・発注・施工などの各段階で、工程・品質・コストなどの管理を支援します。
国土交通省が公共事業で活用を進めているのは、主に「ピュア型CM方式」です。
ピュア型CM方式の仕組み
ピュア型CM方式では、発注者の補助者・代行者として「CMR(コンストラクション・マネージャー)」が参加します。
CMRは技術的な中立性を保ちながら、発注者の立場でプロジェクト全体を支援します。
主な業務は次のとおりです。
- 設計内容や施工条件の検討
- 工事発注方式の検討
- 工程・進捗状況の確認
- 工事費や予算の管理
- 品質管理に関する確認・助言
- 発注者と設計者・施工者の調整支援
例えば、地方自治体が学校の建て替え工事を計画する場合、自治体の職員だけでは設計条件の整理や工事費の妥当性確認が難しいことがあります。
そこでCMRが専門的な知識を提供することで、発注者が適切な判断を行いやすくなります。
ただし、CMRは発注者を支援する立場であり、最終的な意思決定の責任は原則として発注者にあります。
また、CMRが施工会社の代わりに工事を完成させるという仕組みでもありません。
国交省の最新調査でCM方式の導入拡大が明らかに
活用実績は852件、前回調査から増加
調査結果は次のとおりです。
| 区分 | 前回調査 | 2026年度調査 |
|---|---|---|
| 建築事業 | 438件 | 599件 |
| 土木事業 | 216件 | 253件 |
| 合計 | 654件 | 852件 |
今回の調査では、49社から852件の有効回答が得られました。
なお、これらは過去の調査分や進行中の業務を含む累計の報告実績です。2026年度だけで852件の新規導入があったことを意味するものではありません。
また、回答企業数も前回と異なるため、単純な差分を新規導入件数とみなすことはできません。
そのうえで国土交通省は、2014年度の公共工事品質確保促進法改正以降、CM方式の活用が増加傾向にあると説明しています。
建築事業では学校・庁舎・病院が中心
建築事業のCM方式は、特に次のような公共施設で活用されています。
- 学校
- 庁舎
- 病院
- 体育館・競技場
- 公共ホールなど
このうち学校・庁舎・病院の3用途が、建築事業の実績全体の約6割を占めています。
また、発注者の多くは市区町村や政令指定都市、その他の公的機関です。
公共施設では建設費の管理だけでなく、将来的な維持管理や施設利用者への影響など、幅広い検討が求められます。
こうした複雑な条件を整理する役割として、CM方式の活用が進んでいると考えられます。
土木事業では災害復旧への活用も進む
土木事業では、福島県や宮城県など東北地方での活用実績が多く、全体の約7割を占めています。
また、今回の調査では、石川県内の市町が実施する災害復旧事業での活用実績も新たに確認されました。
災害復旧工事では、短期間に複数の工事を進めながら、工程や予算、関係機関との調整を行う必要があります。
そのため、発注者を技術面から支援するCM方式が有効な選択肢となっています。
さらに国土交通省は、近年、土木分野で新設工事や維持管理事業への活用も増えているとしています。
なぜ今、公共工事でCM方式が広がっているのか?
1. 発注者側の技術職員不足
地方自治体では、建築・土木分野の専門知識を持つ技術職員の確保が課題となっています。
特に小規模自治体では、限られた人数で複数の公共工事を担当することもあります。
CM方式を導入することで、外部の専門家の知識を活用しながら、工事の発注や工程管理を進めることが可能になります。
2. 建設プロジェクトの複雑化
近年の建設工事では、単に設計図どおりに施工するだけでなく、さまざまな条件への対応が求められます。
例えば、次のような事項です。
- 建設資材価格の変動
- 工期の適正化
- 労働力不足への対応
- 複雑な設備・施工技術への対応
- 設計変更や追加工事の調整
こうした条件を発注者だけで管理することが難しくなり、専門的なマネジメント支援への需要が高まっています。
3. 工事費や意思決定の透明性向上
公共工事では、税金を活用する以上、工事費の妥当性や発注手続きの透明性が重要です。
CMRが第三者の専門的な視点から設計・発注・施工を確認することで、発注者は判断に必要な情報を整理しやすくなります。
ただし、CM方式を導入すれば必ず工事費が削減されるわけではありません。
CMRへの委託費用も必要になるため、導入目的や支援範囲を明確にすることが重要です。
CM方式の導入で発注者と施工管理者の役割はどう変わる?

CM方式の導入によって重要になるのが、関係者の役割分担です。
公共工事では、主に発注者・CMR・施工者の3者が関わります。
| 立場 | 主な役割 |
|---|---|
| 発注者 | 事業方針の決定、予算の確保、契約、最終的な意思決定 |
| CMR | 発注者への技術的助言、工程・品質・コストなどのマネジメント支援 |
| 施工者・施工管理者 | 施工計画の作成、現場の工程・品質・安全管理、工事の実施 |
※具体的な業務範囲や権限は、契約条件などによって異なります。
発注者は意思決定に集中しやすくなる
CM方式では、専門的な調査や検討をCMRに支援してもらうことで、発注者が必要な情報を踏まえて判断しやすくなります。
例えば、設計変更によって工事費が増加する場合、CMRが技術面やコスト面の検討を支援することが考えられます。
ただし、CMRに業務を委託したからといって、発注者がすべての責任から解放されるわけではありません。
CMRは発注者と施工者をつなぐ役割を担う
CMRは、発注者の立場から工事全体の状況を把握し、専門的な助言や関係者間の調整支援を行います。
例えば、工事の遅延が懸念される場合には、施工者から提出された工程情報を確認し、発注者に対応案を示すことがあります。
ただし、CMRが施工者にどこまで直接指示できるかは、契約上の権限によって異なります。
施工管理者の現場管理責任はなくならない
施工管理者にとって、特に注意したいのがこの点です。
CM方式が導入されても、施工者が負う工程管理・品質管理・安全管理などの責任が自動的にCMRへ移るわけではありません。
また、建設業法に基づく主任技術者・監理技術者の配置義務も、CMRの参加によってなくなるものではありません。
施工管理者は従来どおり、施工計画や現場の安全確保、品質管理などを適切に実施する必要があります。
なお、建築士法などに基づく「工事監理」とCM方式によるマネジメントも別の業務です。
施工管理者が今後意識すべき4つのポイント
CM方式を採用した公共工事では、施工管理者の実務にも変化が生じる可能性があります。
1. 工程管理の根拠を説明する力が重要になる
CMRが工程の進捗状況を確認する場合、施工管理者には工程計画と実績の違いを説明する機会が増える可能性があります。
例えば、工程の遅延が発生した際には、単に「作業が遅れています」と報告するだけでは十分ではありません。
遅延の原因や今後の対応、工期全体への影響などを整理することが重要です。
2. 設計変更や追加工事の記録がより重要になる
公共工事では、設計変更や追加工事が発生することがあります。
その際には、変更が必要となった背景や施工条件、費用・工期への影響を明確にする必要があります。
CMRが検討を支援する場合でも、施工管理者が正確な現場情報を提供できなければ、適切な判断につながりません。
そのため、施工記録や協議内容の管理が一層重要になると考えられます。
3. 発注者・CMRとの連絡体制を明確にする
CM方式が導入されると、従来の発注者・施工者間の連絡にCMRが加わります。
このとき注意したいのが、指示や承認の流れです。
例えば、CMRから工法変更について意見が出された場合、それが正式な施工指示に当たるのか、発注者への提案なのかを確認する必要があります。
施工管理者は、誰が正式な指示権限を持っているのかを事前に把握し、認識の違いによるトラブルを防ぐことが重要です。
4. 品質管理情報を共有しやすい形に整理する
CMRが品質管理に関する確認・助言を担当する場合、施工者から提出される品質記録や検査資料などが重要になります。
施工管理者には、現場の状況を第三者にも理解できるよう整理することが求められます。
写真管理や検査記録、施工条件の変更履歴などを適切に管理しておくことが、円滑な情報共有につながります。
CM方式を導入した現場で確認したい注意点

CM方式にはメリットがある一方で、運用上の課題もあります。
特に重要なのは、発注者・CMR・施工者の権限や責任を曖昧にしないことです。
施工管理者は、工事開始前に次の事項を確認しておくとよいでしょう。
- CMRが担当する具体的な業務範囲
- 発注者とCMRの権限分担
- 正式な指示や承認を行う担当者
- 工程・品質・コストに関する報告先
- 設計変更や追加工事の協議・決定手順
また、CMRが関与することで、すべての調整が自動的に効率化されるわけではありません。
関係者が増える分、情報共有の方法が整理されていなければ、かえって協議に時間がかかる可能性もあります。
そのため、CM方式の効果を十分に発揮するには、関係者間の役割分担と情報共有の仕組みを明確にすることが重要です。
CM方式だけじゃない!施工管理の最新動向をもっと知りたい方へ

CM方式の導入拡大に加え、建設業界では働き方改革や建設DX、新たな発注制度など、施工管理の仕事に関わる変化が続いています。
こうした変化に対応するためには、最新ニュースを把握するだけでなく、制度の背景や現場実務への影響まで理解しておくことが重要です。
施工管理チャンネルMAGAZINEでは、建設業界の最新ニュースや制度改正、現場で役立つ知識をわかりやすく解説しています。
日々の業務や今後のキャリアに役立つ情報を、ぜひほかの記事でもチェックしてみてください。
まとめ
国土交通省が2026年9月に公表した調査では、公共事業におけるピュア型CM方式の活用実績が増加傾向にあることが示されました。
特に、学校・庁舎・病院などの公共建築や災害復旧事業を中心に、発注者を専門的な立場から支援する仕組みとして活用されています。
CM方式の導入によって、発注者と施工者の間にCMRが加わり、プロジェクト全体の工程・品質・コスト管理を支援する体制が整えられます。
一方で、CMRが参加しても、施工管理者が担う現場の工程管理・品質管理・安全管理などの重要性は変わりません。
むしろ、正確な施工記録や工程情報を整理し、発注者やCMRに説明する力が、これまで以上に重要になる可能性があります。
今後、CM方式を採用する公共工事に携わる際には、関係者の役割や権限を正しく理解し、円滑な施工管理につなげることが大切です。











