厚生労働省が公表!外国人技能実習生の多い建設業での違反トップ3
「技能実習生に対する違反事例をよく聞くけど建設業は大丈夫?」
現在建設業で働いていたり、建設業への転職を視野に入れたりしているのであれば、業界について詳しく知っておきたいですよね。
とくに「違反」という悪い項目については、あなた自身や周囲が巻き込まれる可能性もあるので、詳しく知る必要があります。
本記事では、厚生労働省が公表した令和5年の「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」の内容を解説しています。
これは、厚生労働省が指導したり、重大な違反だから送検したりした、という内容をまとめたものです。
建設業での違反トップ3は下記の通り。
- 1位:割増賃金の支払
- 2位:健康診断結果についての医師等からの意見聴取
- 3位:年次有給休暇
これらが何故違反になるのか、あなたが管理者の立場であれば違反させていないか、具体例とともに学びましょう。
建設業は外国人技能実習生を多く雇っている
2024年7月31日に厚生労働省が公表した、令和5年の「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」。
技能実習生の実習実施者である会社がどのような違反をしていたかをまとめたものです。
建設業でも技能実習生が多く雇われており、違反状況を公表された業種の1つです。
建設業を含め、主な業種として下記が挙げられています。
- 機械・金属製造
- 食料品製造
- 繊維・衣服製造
- 建設
- 農業・畜産業
この5業種は、令和4年度における技能実習の計画認定件数が多い5業種です。
つまり技能実習生をたくさん雇っている業種と言えます。
建設業の場合は、技能実習生は職人さんが多いです。
技能実習生を含め、外国人のいない現場のほうが少なくなってきましたよね。
技能実習生が多い5業種の違反率は全体で73.3%だが建設業単体では80.8%
実習実施者である会社の監督指導・送検の結果、違反率は全体で73.3%でした。
さらに建設業だけで見ると、違反率は80.8%と他業種よりも高いことが分かります。
- 機械・金属製造:67.1%
- 食料品製造:72.5%
- 繊維・衣服製造:75.4%
- 建設:80.8%
- 農業・畜産業:79.7%
建設業は5業種の中で違反率No.1です。
外国人技能実習生が多いとされる5業種での違反率は全体で73.3%。
これだけでも多いのですが、建設業のみでは80.8%と業種内で1番高いです。
外国人技能実習生が多い建設業の違反項目
建設業での違反で多かった項目は次の3つです。
- 1位:割増賃金の支払(24.5%)
- 2位:健康診断結果についての医師等からの意見聴取(20.8%)
- 3位:年次有給休暇(18.6%)
それぞれの内容を詳しく説明します。
違反内容1位:割増賃金の支払い
最も多かった違反が、割増賃金の支払いです。
時間外(残業)や休日、深夜の割増賃金のルールは、労働基準法第37条で定められています。
時間外や深夜に労働させた場合には1.25倍、
法定休日に労働させた場合には1.35倍の割増賃金を支払わなければならないという決まりです。
例えば時給1,000円の週40時間労働で週45時間働いた場合、下記の計算になります。
~40時間:1,000円 × 40時間 = 40,000円
残りの5時間:1,000円 × 1.25 × 5時間 = 6,250円
これに違反したということは、割増して支払わなければならないのに、割増しなかったという意味です。
技能実習生の多い業種全体では16.5%の違反率に対して、建設業では24.5%の違反率。
10%近く建設業は違反が高かったことが分かります。
違反内容2位:健康診断結果についての医師等からの意見聴取
次に多かった違反内容は、健康診断結果についての医師等からの意見聴取です。
労働安全衛生法第66条では、労働者の健康確保を目的として健康診断を義務付けています。
さらに健康診断の結果に基づき、異常の所見があった場合は医師(または歯科医師)の意見を聞かなければなりません。
「高血圧だけどこの作業させて大丈夫?」「高所作業をさせるのに必要な措置はない?」のように、要観察や再検査の労働者には医師の意見が必要です。
この意見をもらわずにそのまま働かせると、違反となってしまいます。
この違反は建設業で20.8%。
技能実習生の多い業種全体では16.2%なので、建設業は約2%ほど高いのです。
違反内容3位:年次有給休暇
3番目に多かった違反内容が年次有給休暇です。
これに関しては、厚生労働省は具体的な内容を公表していません。
ただ、年次有給休暇に関するよく聞く違反は、5日取得させなかったという違反です。
昔は「有給休暇は病気の時に使う」という考えが多くありました。
また業務が忙しくなかなか使えない人もいます。
しかし、会社は有給休暇を付与してから1年の間に5日取得させなければならない、というルールがあります。
予測ですが、この5日取得を守らなかった会社が、違反として挙げられているのでしょう。
全体では12.6%の違反率である年次有給休暇。
建設業では全体よりも6%多い、18.6%です。
建設業の技能実習生に対する違反事例
建設業の技能実習生に対する違反事例が公表されています。
建設会社で働く技能実習生Aさん。
出張先のホテルの備品を壊してしまいました。
その賠償を会社が立て替え、立て替えた賠償額は2か月分の賃金相当額。
そのため会社は2か月間の賃金を払わなかったところ、労働基準監督署に申告がありました。
これに対して、労働基準監督署が調査を行い、「2か月分の定期賃金不払いについて、労働基準法及び最低賃金法違反」として是正勧告しました。
その後この建設会社は、技能実習生Aさんに対し、定期賃金の合計である約30万円を支払いました。
会社が給料を支払うことと、備品を壊したことは別で考えなければなりません。
物を壊したかどうかは別で、働いた賃金は払わなければならないのです。
まとめ:建設業では外国人技能実習生に対する違反が行われていた!
外国人技能実習生を多く雇っている建設業。
しかしこんなに違反が多いと、安心して働けない人も多いです。
建設業の違反について詳しく知り、あなた自身も働く仲間も守れるようになってください。
- 1位:割増賃金の支払(24.5%)
- 2位:健康診断結果についての医師等からの意見聴取(20.8%)
- 3位:年次有給休暇(18.6%)
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