共通仕様書と特記仕様書の違いって?土木工事の新人向けに分かりやすく解説
発注者から提示される仕様書には、共通仕様書と特記仕様書があります。
土木工事の新人であれば、この違いは知っておくべきです。
共通仕様書はすべての工事に共通したルールであるのに対し、特記仕様書は各工事に適用されるルールです。
これだけでは違いがよく分からないので、実際の仕様書を用いて説明します。
本記事を読むことで、それぞれの違いが明確になりますよ。
共通仕様書と特記仕様書の違いはルールの適用範囲
共通仕様書と特記仕様書は、ルールの適用される工事範囲が違います。
国土交通省の共通仕様書では、それぞれについて下記のように説明しています。
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共通仕様書:すべての工事に共通して決めているルール(発注機関ごとに存在)
特記仕様書:各工事で決めたルール
例えば国土交通省の共通仕様書では、下記のようなルールが定められています。
- 「監督員」という言葉の定義
- 工事中の地震発生時の対応方法
- 提出する書類の書式や頻度
これらは、国土交通省が発注するすべての工事に共通するルールです。
一方で特記仕様書は、各工事についてのみ適用される、個別のルールが記載されています。
国土交通省の共通仕様書は改定を重ねて総ページ数660
国土交通省の共通仕様書は、2024年11月現在は660ページあります。
土木工事共通仕様書の表紙を確認していただくと分かるとおり、何度も改定されています。
昔はインターネットが普及しておらず、共通仕様書は本でした。
とても分厚い本のため、書いてある場所を探すのに一苦労。
現在はインターネットで検索できるので、便利な時代になったと言えます。
国土交通省関東地方整備局では編ごとに確認できます。
>>共通仕様書はこちら
調べたいワードがあるときはpdfを開いた状態で「ctrl」+「F」で検索窓を出しましょう。
国土交通省の共通仕様書目次から分かるボリューム
共通仕様書の目次は70ページ以上あります。
目次のページ数から、共通仕様書のボリュームの大きさが分かるでしょう。
目次を一部ピックアップしてみます。
- 総則
- 土工
- 無筋・鉄筋コンクリート
- 基礎工
- 石・ブロック積(張)工
- 一般舗装工
- 擁壁工
- カルバート工
- ダム
- 橋梁下部
- トンネル(NATM)
- 仮設工
これでも一部分であり、総則に始まり、様々な工事について細かく分けられた目次構成となっています。
違い①:共通仕様書の具体的な内容
共通仕様書の具体的な内容を知ると、特記仕様書との違いがより分かるでしょう。
総則
総則に書かれている内容として、「諸法令の遵守」をピックアップします。
工事を行う際に守るべき法令が書かれています。
- 建築業法
- 労働基準法
- 道路交通法
上記のような法令を含み、合計数は80個ほど。
法令の内容は書かれておらず、法令名だけが記載されている形です。
施工計画書
工事の際に必要になる施工計画書についても、ルールが定められています。
施工計画書に記載すべきとされている項目として、一例を挙げます。
- 工事概要
- 計画工程表
- 現場組織表
他にも15個を超える項目について記載するのが、施工計画書のルールです。
コンクリート
コンクリートの打設については、気温や時間が決められています。
- 外気温が25℃を超える場合練り混ぜから打ち終わるまで1.5時間を超えない
- 外気温が25℃以下の場合練り混ぜから打ち終わるまで2時間を超えない
- コンクリートの運搬は1.5時間以内
さらに湿潤養生期間にも決まりがあります。
コンクリートが固まったから型枠から外すのではなく、定められている日数養生します。
その他
他にも様々なルールが書かれています。
- 鉄筋の重ね継手
- 継手位置
- 盛土の段切り
どの工事にも共通するルールです。
Aの工事は○○、Bの工事は△△、のように工事によって変わることはありません。
共通したルールなので、共通仕様書と呼ばれます。
違い②:特記仕様書の具体的な内容
特記仕様書は工事ごとに違ったルールが書かれています。
大きい工事であれば特記仕様書もボリュームが増えますし、小さな工事であればボリュームが減ります。
具体的な内容として、下記工事の特記仕様書を用いて説明します。
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特記仕様書に名称や場所が書かれているのは、各工事のルールのためです。
工事の着手
この工事は道路管理者と占用について調整中だったようです。
そのため、「監督職員の指示があるまでは工事着工不可」というルールが記載されていました。
占用についての調整が完了次第、監督職員から指示があるルールです。
受注者相互の協力
関連工事がある場合、それぞれの受注者が協力し合えると、スムーズに完了します。
この受注者相互の協力についても、特記仕様書に記載されるケースがあります。
今回例に挙げた工事は、道の駅「京丹波 味夢の里」と丹波綾部道路を合わせてオープン予定。
道の駅と道路と関連する工事の受注者同士で工程調整して進めるよう、特記仕様書に記載されています。
材料
工事に使う材料も、細かく指定があります。
この工事では再生材を使うよう指示があり、下記項目も指定。
- 資材名
- 規格
- 用途
再生材を使うのはよくあるパターンですが、細かくルールを記載します。
その他
他にも特記仕様書には様々なルールが書かれています。
- 建設発生土
- 交通誘導員
- 工事看板
すべてこの工事ならではのルールであるため、特記仕様書に記載されています。
新人は共通仕様書も特記仕様書も理解すべき
共通仕様書は、発注機関ごとに決められた全工事共通のルールです。
一方で特記仕様書は、工事ごとに決められたルール。
施工側は、各工事のルールを知る必要があるため特記仕様書をよく確認します。
ただし一般的なルールについては共通仕様書で確認しましょう。
意外とポイントになることが書かれています。
今回例として挙げた共通仕様書は、国土交通省のものです。
発注機関ごとに共通仕様書はありますが、「国土交通省に準ずる」というケースも多くあります。
下水工事のように国土交通省の担当でないものは、国土交通省の共通仕様書には記載がありません。
市町村・自治体の共通仕様書を確認しましょう。
特記仕様書に注目しがちですが、新人は同じくらい共通仕様書も確認するよう意識してください。
まとめ:共通仕様書と特記仕様書をしっかり読み込もう
工事に必要な仕様書には、共通仕様書と特記仕様書の2種類。
どちらも工事の発注者が準備します。
共通仕様書:すべての工事に共通して決めているルール
特記仕様書:各工事で決めたルール
工事のことが書いてあるので、特記仕様書ばかり確認しがちです。
新人のうちは、同じくらい共通仕様書も確認してください。
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