建設業界では口頭契約がよくある!?口約束による金額や施工体制のトラブル紹介

建設業界では、口頭契約で工事を進めるケースがあります。
この口頭契約により、金額や施工体制のトラブルが後を絶ちません。
建設業取引適正化センターは、建設工事の請負契約をめぐるトラブルの相談窓口です。
ここに寄せられた相談が公表されているので、本記事でいくつか紹介します。
令和5年度の相談事例100件のうち、30件が口頭契約によるトラブルでした。
時間の制約や工期によっては、口頭契約せざるを得ない状況もあるでしょう。
トラブル時に備えてエビデンスを残すよう、建設業取引適正化センターは助言しています。
口頭契約事例①:元請けから下請けに変えられた
口頭契約で施工したところ、いつの間にか契約者が変わっていたトラブルがあります。
マンションの内装工事を、見積書のみで口頭契約。
元請けとして受注・施工しました。
完成後に発注者Aからは、別の建設業者Bに施工させて代金を支払ったと通知されました。
建設業者Bに代金請求するように言われ、約330万円が未払いです。
相談者は発注者であるAと、元請けとして口頭契約しています。
施工して完成後に、他の建設業者であるBと契約書を結んだ話をされ、請求先もBであると明かされました。
相談者は発注者Aの元請けではなく、建設業者Bの下請けになっています。
建設業界以外の人は、「いつの間に?意味が分からない」と思うでしょう。
しかし建設業界に長く勤めていると、似たような事例を聞くケースもあります。
口頭契約が故の悲劇で、元請けから下請けに勝手に変えられるトラブルです。
口頭契約事例②:施工後に値引きされた
口頭契約で施工し、勝手に金額が変えられるトラブルもあります。
マンションの内装工事を、1次下請けとして口頭契約。
160万円で請け負い、施工しました。
支払い請求をすると、理由もなく120万円に値引きされていました。
契約金額にまつわるトラブルは、口頭契約ではよくあるパターンです。
1,000万円が800万円になったり、2,000万円が1,500万円になったりするケースもあります。
施工中はさまざまな変更があるので、完成しないと最終的な原価が分かりません。
最初は支払うつもりだったとしても、「だめだ儲かっていない」と施工後に判明。
「申し訳ないが、これしか支払えない」、このような状況になります。
建設業取引適正化センターは口頭契約での値引きについて、弁護士への相談を助言しています。
- 契約内容
- 工事内容
- 交渉経過
これらを取りまとめ、無料法律相談を利用するとスムーズでしょう。
工事は最終的なコストが見えにくい面があります。
口頭契約では金額のトラブルは多くあるので、気を付けましょう。
口頭契約事例③:請求先がレンタルオフィスで住所不明
口頭契約はトラブルになりがちなので、避けるのが賢明です。
さらに口頭契約だけではなく、もう少し事前に相手方を調べるべきだったのでは?と思われる事例もあります。
ビルの足場組立工事を、口頭契約に基づき2次下請けで施工。
代金約40万円が支払われません。
1次下請けであるC社に請求書を郵送したところ、戻ってきました。
C社の住所はレンタルオフィスで、現在の所在地が確認できません。
契約時は与信を審査・チェックします。
与信とは、取引相手の支払い能力について信用を与えることを意味します。
たとえ金額が低くても、相手先の調査は必須です。
これについて建設業取引適正化センターは、他の事例と同じく弁護士への相談を助言しています。
このときに必要となるのが、根拠となる資料です。
- LINEのやり取り
- チャットやメールの履歴
- 工事写真
エビデンスを残しておくと、未払い時の証拠になります。
言った・言わないを避けるためにも、口頭契約ではチャットやメールなどのエビデンスを残しましょう。
口頭契約事例④:工事費1,800万円が未払い
1,000万円以上の金額でも、口頭契約するケースがあります。
ビルの冷媒配管工事を、口頭契約に基づき3次下請けで施工。
相手となる2次下請けD社の見積条件指示が不適切でした。
D社が予定していた1,100万円程度よりも過大となる、約2,800万円の工事量を施工しました。
900万円の支払いを受けましたが、残りの1,800万円が未払いです。
当初は1,100万円の見積もりだったとはいえ、この金額を口頭契約する事実に他業界の人は驚くでしょう。
金額の大小は関係なく、建設業界では口頭契約がよくあります。
支払われないトラブルも、よく耳にします。
まとめ:建設業界の口頭契約はよくある!エビデンスを残して!
建設業界では、口頭契約は珍しくありません。
大抵は、すでに何度か取引をした相手でしょう。
完工に向けて、慌ただしく工事は進みます。
契約書や見積書を交わして進めるとレスポンスが悪く、口頭契約が増えます。
チャットやメールなどのエビデンスを残し、不測の事態に備えましょう。
建設業取引適正化センターだけでなく、公的機関はトラブルを公表しています。
国土交通省に寄せられたクレームは、以下の記事で紹介しています。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。