公共工事の費用増額を左右する30%ルールの目的と例外ケース|知らないと困る?

公共工事の契約金額が、途中の設計変更や追加仕様などで増額されるケースは珍しくありません。
しかしその増額には「30%ルール」と呼ばれる、一定の制限があるのをご存知でしょうか?
このルールでは、当初契約金額の30%を超える増額を認めていません。
予算の適正管理や入札の公平性を守るため、30%ルールには重要な役割があります。
本記事では、公共工事に関わる人なら知っておきたい「30%ルール」について説明します。
- 具体的な内容
- このようなルールが設けられた目的
- 例外的に30%を超える増額が認められるケース
これらを理解し、公共工事の知識を深めましょう。
30%ルールの概要
工事の途中で設計変更により契約金額を増額する際、30%までと上限が決められています。
これを30%ルールといいます。
公共工事を1億円で受注。
工事途中で、障害物発生や図面の修正などの変更が発生しました。
このとき工事費が増えるなら、1億3,000万円まで、がルールです。
公共工事の予算が大幅に膨らむのを、防ぐ目的で設けられたルールです。
自治体によっては30%を超えるとき、議会承認が必要なケースもあります。
予算を組み、税金で工事するからこそ、工事費用の増額にはルールが設けられています。
30%ルールの目的・理由
30%ルールの起源は、1969年(昭和44年)に当時の建設省から出された官房長通達に遡ります。
- 北海道開発庁
- 国土庁
- 運輸省
- 建設省
これらが母体となり、2001年1月6日に国土交通省が設置されました。
変更による増額分が30%を超える場合は別工事にするよう、通達がありました。
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変更見込金額が請負代金額の三〇%をこえる工事は、現に施工中の工事と分離して施工することが著しく困難なものを除き、原則として、別途の契約とするものとする。
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ちなみにこの30%ルールは、法律や政令といった法規命令ではありません。
旧建設省(現在の国土交通省)からの通知に基づいたものです。
公共工事を発注する役所での内部的なルール・目安です。
予算管理の観点
1億円の工事が1億5,000万円や2億円になった場合、予算管理が大変です。
このような工事ばかりになると、予算に対して疑問を抱かれてしまうでしょう。
予算を立てる意味もありませんし、国民からの信頼も失ってしまいます。
入札の公平性の担保
入札の公平性を担保する意味も、30%ルールには含まれています。
A社入札価格:9,000万円
B社入札価格:8,000万円
C社入札価格:7,000万円→決定
しかし予定価格1億円に対して、工事費は2億円まで増額してしまいました。
A社やB社は「そんなに増えるなら、もっと低い額で入札した」と不公平感を抱いてしまいます。
工事費用の増額上限がなければ、公平性が担保できなくなります。
これを防ぐために、一定の歯止めとして30%の基準が設けられました。
30%ルールの例外
30%を超えて工事費用を変更しているケースもあります。
「施工中の案件と別工事にできないものを除く」方針があるからです。
トンネル工事で例えます。
トンネルを掘っているとき、湧水が出てきたり地盤が柔らかかったりする場合があります。
このとき、防水対策・地盤改良が必要になるでしょう。
トンネル掘削工事をA社がしているのであれば、B社やC社は追加工事の対応はできません。
別工事にするのは物理的に難しい状況・ケースです。
進行中の工事と一体的に追加工事を実施するほうが、効率的かつ安全なケースは、例外とされています。
当初契約額の30%を超える増額であっても、やむを得ないものとして認められるでしょう。
まとめ:30%ルールには予算管理と入札時の公平性を担保する目的があった!
公共工事における30%ルールは、予算の適正な管理と、競争入札制度の公平性を維持する目的があります。
30%以上工事費が増額するならば、基本的には別の工事として取り扱います。
公共工事の施工管理で働く人は、ぜひ知っておいてくださいね。
公共工事で働く新人であれば、共通仕様書と特記仕様書の違いも知っておいてください。
詳しくは以下の記事で説明しています。
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