人手不足・若手不足が深刻化する建設業。学生から不人気な理由とは?
施工管理が人手不足とはよく言われるところですが、建設業界全体を見てもその傾向は顕著です。
しかしなぜ、建設業界はそこまで人手不足なのでしょうか?
今回は実際のデータを用いて、建設業界がどれくらい人手不足なのか、その原因は何なのかを解説します。
建設業の有効求人倍率
有効求人倍率とは、求職者1人あたりに何件の求人があるかを示したものです。
たとえば1人に対して10件の求人があれば、求人が余ることになりますよね。
つまり有効求人倍率が高いほど、人手不足ということが言えます。
そこで、まずは建設業界の有効求人倍率が他業界に比べてどの程度なのかを見てみましょう。
次のデータは、厚生労働省が出している”一般職業紹介状況(令和3年1月分)”です。
こちらによると、建設業全体の有効求人倍率は5.12倍となっています。
つまり、1人の応募者を5~6件の求人が取り合っているような状態ですね。
一方、全産業・全職業の有効求人倍率を見てみると、こちらは1.04倍。
コロナで少し減少していますが、コロナ前は1.70倍でした。
つまり1人あたりに1~2件の求人がある状態です。
これだけ見てみても、1人あたりの求人数が多い建設業が明らかに人手不足なのがわかります。
また、”建設業はものづくりをするという意味で製造業の1つ”だとよく言われます。
そこで製造業の中でも、生産工程におけるライン作業者の有効求人倍率を見てみると、こちらは1.30倍。
全職業の水準1.04倍と比べると少し高めですが、それでも建設業の5.12倍と比べると大きな差がありますよね。
つまり製造業の枠組みの中で見ても、建設業の人手不足は顕著ということです。
新卒者の建設業への入職状況
建設業界では、新卒の入職者が少ないことが問題になってきています。
こちらに関しては次のデータをご覧ください。
こちらは建設業における新規学卒者(高校・短大・大学卒業者を含)の入職者割合を示したものです。
平成26年のデータで少し古いのですが、当時から現在にかけても入職者数は3万5,000人~4万人と横ばい状態になっています。
平成7年のピーク時の入職者は8万人弱でしたから、それに比べると半分以下になってしまっています。
また一説では、新卒の就職者数のうち建設業界へ入るのは5.8%であるという話もあります。
つまり、5.8%=4万人ということになるのですが、一方で建設業の就業者割合は全産業の8%だとも言われています。
そうなると、新卒者の入職が8%に達していないために、建設業界は年々人手不が進んでしまっていると言えるでしょう。
ちなみに建設業における新卒の就職者は平成22年頃から増加傾向にあり、これは建設投資額がアップした時期と重なっています。
需要の増加に合わせて企業側も採用活動に注力したものの、結果は少し上がって、後は横ばいという感じですね。
よって、建設業界の人手不足は、新卒、要するに若い人が建設業に入ってきてないからということも大きな要因となっているのです。
職人の入職者も減少傾向?
建設業全体の就業者数は約500万人と言われていますが、そのうち圧倒的にボリュームが多いのが300万人存在する職人さんだとされています。
職人さんのような技能職は高卒者が多いのですが、高卒者の就業者数も現在、ピーク時の半分以下となっています。
つまり、建設業で圧倒的な割合を占める職人の新卒入職者が少ないことが、建設業界の人手不足に拍車をかけていると言えそうです。
建設業界は55歳以上の割合が多い!?
新卒者、つまり若い方が建設業界に入ってきていないという問題はすでに述べた通りです。
一方で、55歳以上の年代の方がどんどん増えてきているという現象が起きています。
次のデータをご覧ください。
こちらによれば、29歳以下の方が全体の1割程度しかおらず、55歳以上の方が3割以上となっています。
よく”担い手不足”と言われる建設業界ですが、若い人が入ってきてないために業界の年齢水準がどんどん高くなってきてしまっているのですね。
では、全産業と比べてみるとどうでしょうか。
別のデータを見ると、全産業における29歳以下の就業者割合は16.2%、55歳以上は29.2%となっています。
全体の産業よりも、建設業の方が55歳以上の比率が大きいのですね。
このように、どの産業も高齢化が進んではいるものの、建設業は若い人と高齢者層の比率の開きが顕著と言えます。
ちなみにこちらは平成27年のデータなのですが、おそらくこの開きは年々大きくなるでしょう。
なぜ若い人は建設業界に入って来ないのか?
ではなぜ、建設業界に若い人が入ってこないのでしょうか?
建設業未経験から業界へ入った者として、主に感じる理由を3つあげていきます。
1. 建設業界のイメージが悪いから
よく言われるところでは、建設=3K(キツイ・汚い・危険)というブラックなイメージが根強いことがあげられます。
特に大半の学生は求人票の情報しか見ないため、なおさらイメージが先行してしまうところはあるでしょう。
2. 残業・休日出勤が多いイメージがあるから
先述の内容とも重なるところですが、拘束時間についての不安は特に大きいかと思います。
たとえば施工管理であれば”残業が長い”。
職人さんであれば、日給月給の賃金体系がまだまだ多いと思うので”土曜日も仕事をしないと食べていけない”といったことですね。
少なくとも、建設業に”定時通りに終わる仕事”、”土日がきちんと休める仕事”というイメージはないでしょう。
3. 建設業=技能職と思われているから
意外に多い理由として、建設業界=大工というイメージを持っている方が多いこともあげられます。
特に建設業未経験の方や文系大学出身の方は、建設業の中でもどんな職種があるのか知らないのではないでしょうか。
少なくとも、施工管理という職業があることを知っている方は稀でしょう。
つまり、職種が知られない限り選択肢に入ることはないため、建設業界の仕事はすべて選択肢から除外されてしまうことになるのです。
以上3つの要因が、建設業界への人口流入を困難にさせていると思われます。
建設業界の希望の光?最近話題の”新4K”とは
近年、3K(キツイ・汚い・危険)に対して、新4K(給与・休暇・希望・カッコイイ)という新語が生み出されました。
これは今後の建設業界が目指すべきイメージとされ、すでに新4Kに関する取り組みも開始されています。
たとえば”給与”に関しては、国土交通省が打ち出している”建設キャリアアップシステム”があります。
“休暇”に関しては、建設業界全体が積極的に休暇を取る方向に向かっていますし、従業員の待遇面が改善されれば入札で有利になるような働きかけもなされています。
作業着も昔に比べればスタイリッシュな物が増え、建設業YouTuberも若くてカッコイイ方があえて顔出しをするなどしてイメージ戦略に貢献していますね。
これらの取り組み全体を総称して”希望”と捉えることもできるでしょう。
建設業界の人手不足解消に重要な”イメージ戦略”
いずれにせよ、建設業界で人手を少しでも増やすには、新4Kのイメージアップが重要となります。
特に、”カッコイイ”に関しては手を打ちやすいため、何かヴィジュアル面を打ち出せるプラットフォームを用意してみるのもいいでしょう。
そういう意味では、職人さんの個人的なSNSが火付け役になるといったこともあるかもしれません。
まとめ
今回は、建設業界の人手に関するさまざまなデータを紹介しながら、人手不足・若手不足の現状、その原因と対策についてお話しました。
次は、”建設業界の離職率の高さ”をテーマに、その理由と打開策について解説します。
この記事の続きは以下の記事になります。