若者が建設業を離れる本当の理由とは?原因は世代間ギャップにあり!
この記事は以下の記事の続きです。
前の記事を読んでいない方は、こちらの記事もご覧ください。
前記事では、”建設業界はなぜ人手不足なのか”をテーマに、その原因と対策についてお話しました。
今回は少し角度を変え、”建設業に入った若者がなぜ離職してしまうのか?”という点にフォーカスします。
企業側・若者世代が抱える離職理由のギャップ
まず見て頂きたいのは、次の厚生労働省「雇用管理現状把握実態調査」(平成24年度)より引用した調査データです。
建設会社側が考える”若者が定着しない理由”と、若者世代が考える”建設業を離れた理由”が大きく異なることに注目してみてください。
(企業側が考える) 若年技能者が定着しない理由 |
(若者が考える) 仕事を辞めた1番の理由 |
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1位 | 作業がきつい | 雇用が不安定である |
2位 | (若年技能労働者の)職業意識が低い | 遠方の作業場が多い |
3位 | 現場での人間関係が難しい | 休みがとりづらい |
4位 | 労働に対して賃金が低い | 労働に対して賃金が低い |
5位 | 休みが取りづらい | 作業に危険がともなう |
特筆すべきは、企業側が考える離職理由の2位『職業意識が低い』です。
こちらはおそらくですが、次の若者世代の理由をすべてひっくるめて、企業側が”仕事の意識が低い”と捉えているのではないでしょうか。
- 1位:雇用が不安定である
- 2位:遠方の作業場が多い
- 3位:休みが取りづらい
ただ建設企業の大半を占める50代は、土曜日出勤や深夜残業が当たり前の時代を過ごしてきています。
一方、現在20代の若者はゆとり世代のど真ん中であり、そもそも土曜日は学校休みという時代を生きてきました。
なおかつ学生時代から”ワークライフバランス”という言葉を耳にしているため、仕事とプライベートは切り分けるべきという認識があるはずです。
そんな土壌で育ってきた世代ですから、然るべき待遇が整っていない場合はある程度主張していいと考えているでしょう。
そう思って見てみると、若者世代の退職理由のほとんどが待遇面に関するものであることが見えてきます。
つまり企業が考えているように、今の若者世代が特別やる気がないのではなく、仕事に対するそもそもの考え方に違いがあるということになります。
若者世代を繋ぎ留めるには、企業も意識改革を
ここまでで建設業を辞めた若者世代は主に”条件・待遇”を理由に挙げており、企業側は”若者の意識”の低さを重く見ていることがわかりました。
いわば本人は「条件が合わないから辞めた」思っているのに、企業側は「人間関係係が悪かったのかな」「あの子は辛抱が足りなかったんだな」と解釈しているのです。
この大きな乖離こそが、若者がなかなか建設業界に定着しない理由なのではないでしょうか。
したがって”若者世代はやる気がない”という考え方は昔から繰り返されてきたものではありますが、企業側も意識を変えなければ、若者離れはなかなか解消しないでしょう。
よって、新4Kでいう”希望”を若者に見せ続けるのも重要なことですが、やはり根本的な解決にはなりません。
新4Kとは、(給与・休暇・希望・カッコイイ)を表す新語です。
3K(キツイ・汚い・危険)に対して生まれたもので、建設業界が今後目指すべきイメージとされています。
昔は転職=悪という考えが少なからずあったものの、今では1社で働き通す若者の方が稀な存在です。
よって、若者は企業の考え方にギャップを感じた時点で転職活動に入ってしまうと考えておいた方がいいでしょう。
若者世代を惹きつける会社になるためには
若者世代の離職を防ぐには、企業の意識・体質・待遇を変えることが重要だとわかりました。
しかし具体的にどのように進めるべきか、ピンとこない方も多いでしょう。
そこで建設業界のために日々尽力していらっしゃる有名YouTuberさん3名を取り上げ、取り組みへのヒントを探ってみたいと思います。
社員が魅力に感じるか会社づくり~ヨッシー親方さんの場合~
いわゆる”保温屋さん”のヨッシー親方は、建設業界にかかるネガティブなイメージの払拭やキャリアの見える化に注力されています。
ご本人のお人柄もあり、さらに社員が安心できる制度を意識して作り込まれているので、ヨッシーさんと話すと「この会社で働きたい…!」と思う方が多いようです。
それもヨッシーさんの根底に「建設業界および自分の会社に入ってくれた人を大切にしたい」という思いがあるからでしょう。
よって、採用に関する意識を根本的に変えたいとお考えの方は、ヨッシーさんの会社を1つのベンチマークにされるといいかもしれません。
ヨッシー親方の動画はコチラです。
保温屋とは、熱絶縁工事全般を行う技能者のことです。
商業施設やビル、マンション、工場といった施設に張り巡らされているダクトや配管に断熱材を巻きつけていく作業が主な仕事となります。
断熱剤はグラスウールやスチロール剤など軽量のものが多く、なおかつ狭い場所で施工することも多くあるため、保温屋は筋力よりむしろ手先の器用さが重視される職種です。
したがって、華奢な男性や力のない女性にも適した仕事とされています。
「カッコイイ」を発信する~電気屋優Tuberさんの場合~
電気屋優Tuberさんは”建設業はカッコイイ”というメッセージをどんどんと発信していくべきだと常々おっしゃっています。
現代の若者はSNSを見るのがもうそれが生活の一部になっており、転職のための情報収集もInstagramやTwitter経由で行う人は多いです。
したがって、SNS戦略は企業側にとって大きなキーとなるでしょう。
昨今は職人さんがTwitterで発信をされているパターンが目立ちますが、1点残念なのは、ほとんどの方が個人で活動されているということです。
そこで会社が若者へのPRという目的をしっかりともってSNSでカッコイイを発信されれば、若者が入職するきっかけづくりになるのではと思います。
そういう意味でいうと、職人の仕事は施工管理に比べて絵になるものが多いので、チャンスも沢山あるのではないでしょうか。
たとえば綺麗なピッチで鉄筋が並んでいる写真を「1時間で仕上げた」というコメント付きで投稿すれば、映える投稿としてバズを狙ったり、認知を高めたりといった効果も期待できそうです。
ただ、写真の撮影・投稿に関しては無断で行わず、必ず現場のルールに従うようにしましょう。
電気屋優Tuberさんの動画はコチラです。
安定した就労環境~石男くんの場合~
若者の離職理由1位は、雇用の不安定さでした。
よって、安定した就労環境が重要であることが間違いなく、その点については職人全員を社員化した石男くんが参考になるのではと思います。
若者世代はやはり職の安定性を意識するため、1人親方として働く気概のある人よりは、社員で就労したいという職人さんの方が多いでしょう。
また現状の建設業界も下請け問題やインボイス制度などによって、1人親方が減少していく流れの最中にあります。
これを機に、若者世代の採用も視野に入れて、職人さんの社員化および企業のイメージ改善を同時に進めていってもいいかもしれません。
石男くんの動画はコチラです。
下請け問題とは、下請け企業が多ければ多いほど末端起業の利益率が悪くなる問題を指します。
たとえば、とある現場で4次下請けまであった場合、末端の職人さんは満足のいく報酬が得られません。
したがって現在は、なるべく2次くらいまでに下請けを制限することで中間で抜かれるお金を減らし、職員さんへの還元が増やそうという流れが取られています。
まとめ
今回は”若者世代が建設業から離れる本当の理由”をテーマに、企業が考える若者の離職理由と若者の心の内を比較し、そのギャップを取り上げました。
若者の離職を防ぐには当事者の心情を理解し、できるだけネガティブな要素を取り除いていくしかありません。
従来の考え方や体質を一新するつもりで臨んでいきましょう。
この記事が採用改革のお役に立てれば幸いです。