下請け重層化問題はなぜ起こる?国土交通省が考える4つの理由とは
前記事では、2022年より国土交通省が下請けの重層化問題改善に向けて本格的に動き始めたことをお伝えしました。
しかし、そもそもなぜ下請けの重層化は起こるのでしょうか?
国土交通省は、その原因を次の4パターンに分けられると分析しています。
- 専属型
- 繁忙期型
- 代理店型
- その他
今回は、こちらの4パターンがそれぞれどんな内容なのかを確認しながら、下請け重層化問題の根本と、業界の実状に迫っていきます。
下請け重層化問題の原因 ①専属型
国土交通省の資料によると、専属型は「建設投資の減少等により、直用技能者を外注したことに伴う重層化」と定義されています。
具体的な例は次の通りです。
A社は、ゼネコンから工事を受注する一次下請け会社とイメージしてください。
そしてA社は、以前は技能者を直接雇っていました。
この段階であれば、下請け階層は一次までで全く問題ありません。
しかし、雇っていた技能者達が独立し、別で法人を作ってしまいました。
すると当然、彼等に仕事を頼もうとすれば、外注扱いとして1つ下請け階層が増えることになります。
A社が一次、技能者達の法人が二次ということですね。
なぜこのような事態になったかというと、「建設投資の減少等により」とあり、つまり景気の悪化が原因です。
景気が良いときは一次下請けであるA社が職人を20人直接雇えたのですが、景気が悪くなれば当然、20人分の人件費は大きな負担となります。
よって、ある程度経験を積んだ職人さんには独立してもらったという流れです。
そもそも、多くの職人さんは独立が既定路線のようなところがありますから、キャリアパスとしては不自然ではありません。
ただこのように不景気を原因として下請けの階層が増えてしまうことを、国土交通省は”専属型”と捉えているのです。
下請け重層化問題の原因 ②繫忙期型
繁忙期型とは、「繁忙期における労務を確保するために、下請け発注を行うことに伴う重層化」のことです。
さっそく例を見てみましょう。
これは、当たり前といえば当たり前の話ですよね。
昨今、建設業界の、特に公共工事は1年の中でまんべんなく工事を発注しましょうという”平準化”を図っています。
ただ実際のところはどうしても閑散期と繁忙期の波があり、民間工事では特にその傾向が顕著です。
すると会社側は当然、閑散期に合わせて人を雇い、繁忙期に人手が必要になった際は外注で賄おうと考えます。
よって、繁忙期に外注をすると下請けの階層が増える。
これが国土交通省の言う”繁忙期型”です。
下請け重層化問題の原因 ③代理店型
代理店型は「資材の調達を行う商社、または代理店が”施工体制に入る”ことに伴う重層化」を指します。
よくある例は次の通りです。
これは、建設資材メーカーの代理店や商社が、資材調達の一次下請けとして施工体制に入っているパターンです。
本来であえば材料の納入などを行うだけなのに、なぜか施工体制に入っていて、余計な下請け階層が増えているということですね。
実際、A社は材料調達はしているものの、実際に資材を現場で据え付ける労務は二次下請けであるB社が行っています。
これは実はよくあるパターンで、なぜなら商社・代理店が施工体制に入れば、材料を売った利益にプラスして施工を担う分の利益が出るからです。
ただフタを開けてみれば施工に関してはB社任せなのですから、これは丸投げとして問題視されるべきところであり、国土交通省もその通り指摘しています。
メーカーを一次下請けに入れると、元請け側にメリットがあるの?
結論から言うと、メリットはあります。
たとえば、工事で使う材料にメーカーの指定があったとしましょう。
それも自社で扱ったようなことがない、少し特殊な材料だとします。
そこで、メーカー側から「うちを下請けとして施工体制に入れてもらえれば、後は施工も含めて全部やりますよ!」と言われたら、元請けとしては非常に気が楽ですよね。
よって、「それなら、施工体制に入れておこう」となるのです。
それから今はどうかわかりませんが、材料や製品によっては「下請けに入れてもらうことが決まりです」と断言するメーカーもいました。
まとめ
今回は”下請け重層化が起こる原因”をテーマに、国土交通省が考える次の4つの原因を取り上げました。
- 専属型
- 繁忙期型
- 代理店型
- その他
現状、『①専属型』と『②繁忙期型』に関しては、致し方ないという部分も多く、具体的な方針は示されていません。
しかし法的にも問題視されている『③代理店型』は、排除の方針で動いているようです。
次の記事では、『④その他』のパターンについて見ていきますので、ぜひ引き続きご覧ください!
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
理解を深めたい方はこちらの動画もご覧ください。