【建設業の闇】埋め合わせから倒産へ|負債11億円で破綻した防水工事会社
建設業の現場では、過去にこんな言葉が飛び交うこともありました。
「この現場は赤字だけど、次で埋め合わせするから」
聞き慣れた言葉かもしれません。
しかしその言葉を信じ続けた結果、負債11億5,500万円を抱えて破産した会社があります。
そこで本記事では、日経トップリーダー「破綻の真層」に掲載された防水工事会社の倒産事例を紹介。
建設業の下請け構造が孕む、危うさを解説します。
参考:元請けから「赤字案件ばかり受注」の建築会社 信用不安で破産へ|日経ビジネス
防水工事会社の倒産の経緯

2025年5月に、さいたま市の建築工事会社が破産開始決定を受けました。
負債総額は、約11億5,500万円。
そもそも倒産した会社は、2001年に設立。
当初は健康器具の販売や写真撮影、結婚相談所の運営を手がける、建設業界とは縁遠い事業をしていた会社です。
防水工事から事業拡大
2007年、20代半ばの社長が買収し、防水工事を主軸とした建築分野に参入。
特定の元請建築会社との取引を太く育て、着実に成長してきました。
転機は参入から数年後。
主要取引先の元請から「新築工事全般も受けてみては」と声がかかります。
社長はこれを成長のチャンスと捉えて、事業を拡大しました。
2020年3月期には売上が4億7,000万円と、前期のほぼ倍に跳ね上がりました。
元請からの赤字工事案件
しかし、膨らむ売上の裏では、じわじわと赤字が積み重なっていました。
元請から流れてくる案件の多くが、最初から採算の合わない赤字工事だったのです。
「この現場の赤字は、他の現場の利益で補填する」そう言われ、断れずに続けていました。
見積もり条件の明確化を強く求めると、「うちを信用していないのか」と関係が壊れかねない。
元請との縁が、そのまま仕事の量に直結していたのではないかと推測されています。
累計赤字は6億8,000万円に達しました。
しかし地元金融機関からの借り入れ、池袋や渋谷への支店開設で、経営基盤の拡大を図ります。
元請との取引打ち切りへ
さらに2024年1月、赤字案件を押し付け続けてきた元請との取引を打ち切りました。
正しい判断のように見えましたが、その元請は赤字を量産しながらも「最大の取引先」。
信用不安が生じ、金融機関からの追加融資を受けられなくなりました。
2024年6月には協力会社への外注費支払いが滞り始め、別現場の着手金を他の支払いに充てるという「自転車操業」に突入。
2025年春、経営は限界を迎えました。
倒産の原因

この会社は、売上の大部分を特定の元請会社に依存する状態にありました。
取引を切る前に、他の取引業者を作れなかったため、銀行からの信用不安が生じています。
今回の破綻・倒産について、建設業界の構造的な問題にも指摘が挙がります。
価格や支払いの交渉を避けてしまったり、無理な要求を飲んでしまったりするのです。
この会社は2024年3月期の売上高は、28億9,000万円。
しかしそのうち営業利益は、わずか148万円であり、有利子負債は7億円近くにまで急増しました。
社長が繁華街で大盤振る舞いしていたと証言する声もあり、急激な売上の伸びで間違った金銭感覚となってしまったのではと考えられます。
どちらかというと、良い意味で使われる「義理と人情」。
記事内では義理と人情の風習が指摘されていますが、これは「パワハラではないか」の見方もあります。
赤字案件取引の現状

「次の現場で補填する」「他の案件で埋め合わせする」
このような言葉は、現代ではほとんど聞かれません。
建設業法の改正(2025年12月)により、赤字や原価割れの受注は請け負った側にも責任が問われるようになりました。
この法律が適用される前のため、倒産した会社は違法として問われません。
そもそも法整備が現場に浸透するまでには、時間がかかる点も問題でしょう。
同じような取引を続けている会社は、今もあるかもしれません。
まとめ:下請を「依存させる」建設業界の構造
この事例が示すのは、一社への依存が会社の命取りになるという現実です。
取引を打ち切る判断そのものは正しかったが、切る前に次のお客さんを作っておくべきだったのでしょう。
今、建設業界では下請の発言力が少しずつ上がってきています。
あえて大手との取引を持たず、自ら元請になれる現場を探す会社も増えてきました。
しがらみの構造は、確かに変わりつつあります。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。
