みずほ銀行が示す職人の派遣解禁の解決策|雇用と安全管理の課題はどうなる?
建設業の人手不足が深刻化するなか、職人(技能労働者)の派遣は現在、法律で禁止されています。
その禁止理由としてみずほ銀行は雇用の不安定化、そして指揮命令系統の複雑化と安全管理の困難の2つを挙げています。
では、この2つの懸念に対して、みずほ銀行はどんな「打ち手」を提案しているのでしょうか。
そこで本記事では、みずほ銀行が示す提案内容を、現場目線での妥当性とあわせて整理します。
結論から言えば、みずほ銀行の提案は「雇用の不安定化」には現実的に応えられているところがあります。
しかし、「指揮命令・安全管理」にはまだ現場感覚とのズレが残るのではないでしょうか。
派遣解禁の是非を考えたい人は、ぜひ参考にしてください。
職人の派遣は「雇用の不安定化」を解決できる

みずほ銀行は、禁止理由の1つ目「雇用の不安定化」について、その前提が現在の市場環境では大きく変化していると指摘します。
派遣禁止の根拠とされた「雇用の不安定化」という懸念は、現在の市場環境に照らし合わせると、その前提が大きく変化している。まず、需給バランスについては第 2 章で述べた通り、建設業界は足下から今後長期にわたって、需要が供給を上回る深刻な人手不足が継続すると考えられる。
引用:建設業界における人手不足の解消に向けた打ち手|みずほ銀行 産業調査部
深刻な人手不足で、職人は「仕事を選べる」立場になっている
建設業界は、長期にわたって需要が供給を上回る人手不足が続くと見込まれています。
職人側から見れば、仕事を選べる立場にあるわけです。
派遣の働き方は、そのまま失業や不当な短期雇用に直結する時代ではありません。
超人手不足の今、「派遣=不安定」のイメージは、時代とズレてきているのが実態です。
「常用型派遣」なら、雇用は安定する
みずほ銀行が前提とするのは、派遣会社が正社員として職人を雇う「常用型派遣」です。
正社員派遣であれば、派遣会社は仕事の有無にかかわらず給料を払う必要があります。
派遣会社は派遣法による縛りが多く、賃金の下限や福利厚生がきちんと整備されている会社も少なくありません。
小規模な工事会社よりも、財務面や待遇が充実した派遣会社もあります。
職人にとっては雇用が安定したうえで、請負に加えて派遣の選択肢が増え、働き方が多様になるでしょう。
CCUSの利用で適正な処遇で働ける
さらにみずほ銀行は、派遣でも適正な処遇で働けるようになる、とも述べています。
CCUS(建設キャリアアップシステム)でスキルが可視化されていると考えるからです。
2025年の改正建設業法では、CCUSレベル別年収と適正な賃金について目安が設定されました。
建設業法改正で「標準労務費」が定められ、職人の賃金をCCUSの水準に乗せなければなりません。
このルールは、派遣会社だろうと工事会社だろうと同じように適用されます。
最低賃金のような枠組みであり、どこで働くかに関係なく、CCUS水準の給料を払う必要があるのです。
資格を多く持っていればレベルが上がるように、そもそものシステムに課題も残っています。
さらに土木と建築でも導入状況が変わっており、「机上の空論」と考える意見もあるのです。
職人の派遣で「指揮命令・安全管理」は解決するのか

2つ目の禁止理由「指揮命令系統の複雑化と安全管理の困難」について、みずほ銀行はDX(IT技術の活用)で解決できると提案します。
派遣禁止のもう一つの根拠である「指揮命令系統の複雑化と安全管理の困難化」についても、IT 機器を用いたコミュニケーション効率化やセンサーによる危機感知等のDX推進がリスクを低減する有効な手段になると考えられる。
引用:建設業界における人手不足の解消に向けた打ち手|みずほ銀行 産業調査部
かつては、口頭や紙が現場のコミュニケーションの中心でした。
しかし近年は、多くの現場でスマートフォンやタブレットで情報共有しています。
チャットグループの中で指揮命令が完結すれば、他から指示が飛んで混乱しないと考えているのでしょう。
さらに安全管理については、ウェアラブルカメラやセンサーデバイスなどの技術に期待を寄せています。
ウェアラブルカメラやセンサーデバイスといった技術は、現時点では一部の先進的な現場での試行や、特定の危険作業に限定して導入されているのが実情である。しかし、これらの技術は将来的に現場の安全管理を飛躍的に向上させるポテンシャルを秘めている。
引用:建設業界における人手不足の解消に向けた打ち手|みずほ銀行 産業調査部
ただし現場を知る人からは、多くの疑問も出ています。
- 指揮命令の混乱は今でも起きているのではないか
- チャットとウェアラブルカメラを置くだけで複雑な現場の安全管理まで解決できるのか
- 現場を知らない机上の論理ではないか
例えば、ウェアラブルカメラは「見える化」には役立ちます。
しかし危険を予測してその場で止める判断は、これまで人の目と経験が担ってきた部分です。
技術だけで置き換えられるかは、現場を知る人ほど疑問に思うでしょう。
まとめ:職人の派遣は、建設業の課題をどこまで解決できるか

みずほ銀行の提案を整理すると、2つの禁止理由への答えは対照的です。
「雇用の不安定化」については、深刻な人手不足と常用型派遣(正社員派遣)の仕組みを踏まえれば、解禁に向けた条件は整いつつあるでしょう。
一方で「指揮命令・安全管理」については、どうでしょうか。
ITツールやウェアラブルカメラで解決できるとする論理は、現場感覚とのズレが残ります。
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