建設業界は高齢者に対して安全対策が不十分|高齢化による新たな課題
建設業界で一番重要とされていると言ってもいい、安全対策。
安全に作業することは、何よりも優先されています。
その安全対策について、高齢化により新たな課題が生まれました。
「身体機能が衰えた高齢労働者への安全対策が不十分」と訴えられたニュースです。
本記事では実際に起きた、高齢者の労働災害と高齢労働者の訴えを紹介します。
高齢者を雇っている企業のみなさんはぜひ一読し、安全対策について考え直しましょう。
建設業界で高齢者には安全対策が必要と思わせたニュース
2024年9月14日の日刊ゲンダイDIGITALに掲載されていたニュース。
高齢者には安全対策が別途必要だと、考えさせられる内容でした。
原告:68歳男性の測量士、建設業界での経験は40年以上
被告:元請企業、1次請け企業、2次請け企業(男性の雇用されていた会社)
2022年7月に千葉県内の建設現場である険しい山中で測量作業を実施。
最中にバランスを崩し、左膝骨挫傷を負いました。
現在も職場復帰できずにいます。
安全対策が不十分であることを理由に、計3社を訴えています。
参考:日刊ゲンダイDIGITAL|高齢化進む建設業界で二重三重のひずみ浮き彫り…69歳測量士が安全確保怠った建設会社を提訴
この男性のケースでは、急斜面での作業にもかかわらず「スパイク付きの靴」のような安全器具の提供がありませんでした。
そのため弁護団は、「身体機能が衰えた高齢労働者への安全対策が不十分」と訴えています。
建設業界を含め働く高齢者の割合は約2割
総務省の労働力調査データでは、昨年の雇用者全体に占める高齢者(60歳以上)の割合は、18.7%です。
雇用者の2割近くが、60歳以上の高齢者です。
さらに労働災害による休業が4日以上の死傷者数に占める高齢者の割合は、29.3%。
雇用者の割合よりも高い、約3割です。
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若い人と比較すると、高齢者は機敏ではありません。
高齢雇用者の割合が約2割に対して、労災を起こす割合が約3割と増えるのは、自然とも言えます。
今回のニュースでは「高齢労働者は身体機能が衰えているので、相応の安全対策をすべきだった」という訴えです。
このようなケースは今までになく、高齢化社会により出てきた課題と言えるでしょう。
今後は高齢者を働かせる場合は、身体機能が衰えている前提で安全対策しなければなりません。
高齢者の安全対策について弁護団の意見
弁護団は次のことを指摘しています。
仮にけがを負っても泣き寝入りすることが少なくない、高齢労働者の立場についてです。
- 作業でけがを負う
- 労災になる
- クビになる
- 再就職先がない
このような流れにならないよう、黙っているパターンもあるのだと弁護団は訴えています。
高齢者の安全対策についてユニオンの意見
弁護団だけでなく、今回のニュースになった男性を支援するユニオンも意見を出しています。
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大企業では労働組合があり、労働者と会社との間に立って交渉します。
中小企業のように労働組合がないとき、代わりに支援してくれる組織です。
社外の労働組合のイメージです。
ユニオンは下請企業の立場が弱いので、安全対策を含め意見できないことを指摘しています。
まとめ:建設業界では高齢者の身体機能の低下を考慮して安全対策を考えるべき
高齢労働者の割合は年々増え続けています。
「今まではしていなかった」ではなく、時代に合わせた対応が企業・経営者に迫られています。
- 高齢労働者は身体機能が衰えているという前提で安全対策が必要
- 下請企業は立場が弱く安全対策を含め意見できない
コンプライアンスの時代で、「○○さんには対策不要だけど××さんには対策が必要」というのも難しい言い方です。
しかし人手不足なので、高齢者の労働力も必要です。
安全対策については、働く人の身体能力・機能を考慮すべきでしょう。
建設業の人手不足についてはこちらの記事で解説しています。
あわせてお読みください。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。