2023年から完全実施!建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
この記事は以下の記事の続きです。
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国土交通省の声明によれば、建設業界では2023年より次の4つの新制度が始まるとされています。
- BIM/CIM
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)
- 建設業退職金共済制度(建退共)
- 社会保険の加入確認
すでに他記事でBIM/CIMについては解説しました。
そして実は、『3. 建設業退職金共済制度(建退共)』と 社会保険の加入確認』は『2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)』の実施に関連した制度なのです。
そこで今回は、『2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)』にフォーカスし、その概要と導入における問題点などをお話します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、職人の「待遇改善」を目的するシステムのことです。
物理的に言えば、現場に入退場を記録するカードリーダーを設置し、作業員達にタッチを行ってもらうことになります。
現状は「手続きが面倒くさい」、「操作がやりづらい」、「UIが悪い」等、あまり良い話が聞こえてきませんが、きちんと稼働されれば成果が出るとの見込みから、国土交通省は来年から”あらゆる工事でのCCUS完全実施”を明言しています。
“あらゆる工事でのCCUS完全実施”の詳細
国土交通省の資料にて”あらゆる工事でのCCUS完全実施”と書かれていることから、「工事を行うすべての企業が建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入しなくてはいけないの?」と思った方も多いでしょう。
しかし民間工事の場合、導入は決して強制ではありません。
建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入が必須となるのは、次の2パターンです。
- 公共工事
- 外国人を雇用する場合(特定技能制度、技能実習制度を含む)
民間工事でも、外国人の雇い入れをする場合は建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入が必須であることに注意してください。
モデル工事から見える建設キャリアアップシステム(CCUS)の実態
国土交通省では、実際に発注した工事で「CCUS義務化モデル工事」を行っています。
こちらの工事では、建設キャリアアップシステム(CCUS)の義務化を進めるため、特記仕様書に「以下のような状況を達成するかどうかで、工事の点数を決める」と記載されています。
- CCUSの現場登録を行うとともに、カードリーダーを設置すること(大前提)
- 事業者の登録率90%達成
- 技能者の登録率80%達成
- 就業履歴蓄積率(カードタッチ率)50%達成
補足すると、”事業者の登録率90%”とは、要するに元請けと全下請けを含めて90%以上が登録されていなくてはいけないということです。
つまり、ほぼほぼ全社が登録されていなければいけません。
また、”技能者登録率80%”は、職人が100人いたら80人は登録しなければならないということです。
要するに、ただカードリーダーを設置して記録体制を作ればいいというわけでなく、項目別にある程度の目標パーセンテージを決めて運用しなければならないということになります。
特記仕様書とは、工事物の品質を確保するために、工法や使用機材など、施工の技術面や細かい部分について記載した書類です。
工事の内容説明や注意事項など、標準的な項目を記載した”標準仕様書”とは異なり、特記仕様書には図面に記載できないような詳しい情報まで記載されます。
特記仕様書の主な内容は次の5つです。
- 工事の目的
- 工事の範囲
- 工事の工程
- 事前協議の概要
- その他工事に関する詳細など、重要度の高い情報
CCUSの問題点
現状、現場はまだまだアナログなところが多く、そんな中で建設キャリアアップシステム(CCUS)のシステム運用体制が整うかと言われると、甚だ疑問です。
さらに、職人を雇う下請け業者が就業履歴などのデータ管理をする必要がある点も見逃せません。
例えば、職人がカードリーダーにタッチし、就業履歴・業務記録が蓄積されていくとなると、誰がどんな仕事内容をしていたのか、別にデーア入力をしなくてはなりません。
複数の職人がいれば当然、”A親方は大工”、”B親方は鉄筋”という風に仕事内容も異なってくるため、データの区分けをし、カードリーダーのIDとの連携が必要になるでしょう。
さもなければ、職人が現場に入れないといったトラブルも発生しかねません。
一方、”カードタッチ達成率”が50%と低く設定されている以上、カードタッチをする人・しない人の区分けの管理も必要です。
このことから、建設キャリアアップシステム(CCUS)導入における管理側のアナログ・デジタル双方の対応は免れないと思います。
建設キャリアアップシステム(CCUS)は来年度から導入できるのか
ここまでで、元請けは建設キャリアアップシステム(CCUS)に対応するための体制を整える必要性があり、職人を雇う下請けは”業務内容の入力”などのデータ管理の必要性があるとわかりました。
職人はカードタッチをするだけで、従来と大きな変わりはないと思いますが、元請け、下請けにおいては相応の手間がかかることでしょう。
特に、建築は土木と比べて工種が多いため、より一層大変になると予想されます。
こうなってくると、日本建設業連合会に加入しているような大手のゼネコンを除き、民間ではなかなか導入が進まないでしょう。
また、いくら国土交通省が先陣を切っているとは言え、地方自治体もいきなり来年度から追随することは難しいはずです。
今後は国土交通省が先行してある程度導入を進め、少し間を置いてから地方自治体が後に続き、徐々に運用自治体が増えていく流れになるのではないでしょうか。
ただし、国土交通省から受注している会社は間違いなく、令和5年度(2023年4月1日)から建設キャリアアップシステム(CCUS)の対応が必要となりますので、心しておいてください。
まとめ
今回は、国土交通省が明らかにしている2023年スタートの新制度の中から、建設キャリアアップシステム(CCUS)について解説しました。
ポイントは次の通りです。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、職人の待遇改善を目的としたシステム
- 具体的には入退場記録ができるカードリーダーを設置することになる
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)導入には、達成すべき目標値が定められている
- 管理側はデータ入力等、手間が増える可能性がある
- 一部の民間工事や、国土交通省から工事を受注している場合は令和5年度より対応必須
建設キャリアアップシステム(CCUS)導入は、職人はともかく、元請け、下請けには骨の折れる作業となりそうです。
即時対応を求められても慌てないよう、今から心づもりをしておきましょう。
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