スランプ試験が廃止される!?画像解析導入のメリット・デメリットや課題

現代の日本では、人手不足の影響で業務効率化が求められています。
工事現場でも効率向上を目的に、生コン(生コンクリート)のスランプ試験が廃止されるかもしれません。
生コンの柔らかさの指標であるスランプ値。
生産性向上を目的として、国土交通省がスランプ試験の廃止を検討しています。
2025年2月のコンクリート生産性向上検討協議会で挙がった話です。
本記事では、従来のスランプ試験を廃止した場合のメリット・デメリットや課題を紹介します。
生産性を向上させるのは重要ですが、簡単には廃止できない課題があります。
ぜひ最後までお読みください。
従来のスランプ試験
スランプ値は、スランプ試験によって算出されます。
生コンの柔らかさ、つまり流動性を調べています。
従来のスランプ試験は、バケツのような容器に生コンを入れます。
それをひっくり返して容器を引き上げ、生コンの沈下量を計測します。
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容器の高さから5cm下がれば、スランプ5です。
8cm下がった場合は、スランプ8となります。
つまり、生コンの頂点が何cm下がったか、これがスランプ値です。
スランプ試験には多くの人手が必要です。
これが生産性向上の妨げになっている、と国土交通省は考えています。
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- 施工業者
- 発注者
- 試験業者
さまざまな人間が試験に関わります。
従来のスランプ試験では生産性が上がらないと判断し、効率的にする方法を協議会で話し合いました。
生コンのスランプ試験については、以下のYouTube動画も参考にしてください。
生コンのスランプ試験|施工管理チャンネル by 株式会社ライズ
スランプ試験を廃止した場合の代替案
スランプ試験の代替案は、2つの方法が挙げられます。
情報化ミキサー(スマートアジテーター)と、AIでの画像解析です。
情報化ミキサー・スマートアジテーター
従来のコンクリートミキサー車に、さまざまな機器が付いたものです。
- プローブセンサー
- コントロールパネル
- レシーバ(演算装置)
- 車載タブレット
運ぶだけではなく、機器を取り付けて生コンの状態をデータ化しています。
これらの搭載により、生コンの状態を調べて表示しインターネットで遠隔共有できる仕組みです。
現場へ行くとスランプ試験をせずに、すぐコンクリート打設ができます。
参考:スマートアジテーター|GNN Machinery Japan株式会社
AIでの画像解析
生コンはシュートといわれる滑り台のようなものを使って、ポンプ車に渡します。
このときシュートを流れる生コンを撮影し、画像からスランプの解析をする方法です。
この方法も情報化ミキサーと同じく、従来のスランプ試験が不要になるのではないかと協議されています。
AIでの画像解析については、以下の動画でも詳しく解説しています。
すべての生コン車検査します!|施工管理チャンネル by 株式会社ライズ
スランプ試験を廃止し画像解析を導入した場合のメリットデメリットとは?
国土交通省では、2023年より生コンの画像解析試行工事を開始しています。
その結果、メリットとデメリットが明らかになりました。
画像解析のメリット
試行工事で分かったメリットは3点あります。
- 人員削減効果が高い
- 生コンの状態をリアルタイムで把握でき品質の確保・向上が期待できる
- 品質の変動状況を生産者と共有できる
従来のスランプ試験のように、何人もの人員を必要としない点は大きなメリットです。
画像解析のデメリット
試行工事では、デメリットも分かりました。
- 撮影時の日当たり具合で誤差が生じる
- 専門的な知識・技術を持った人員が必要
- 機器の設置・操作に大きな労力を要する
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画像解析ではこのようにシュートを流れる生コンを撮影します。
そのため日当たり具合によって、画像は変化しデータに誤差が生まれます。
誰でもできるわけではないので、知識が必要な点もデメリットです。
人員は減りますが、知識や技術を持つ人材が必要とされます。
さらにはインターネットカメラを取り付ける必要もあります。
カメラの設置には場所や角度の指定があるでしょう。
ネットワークへの接続も必要です。
画像解析は人員削減のメリットは大きいものの、技術や労力にデメリットがあります。
スランプ試験を廃止した代替案の課題
情報化ミキサーはプラントが用意すると想像できます。
しかし画像解析の場合は、どうでしょうか。
現場の設備負担や、専門知識を持った人が必要になります。
従来のスランプ試験の代替案は、小さい現場では実現が難しいといえます。
これは代替案の課題です。
また、情報化ミキサーもAIによる画像解析も全数検査です。
従来のスランプ試験では、○立米ごとに検査する、と決められています。
これは工場で製品を作るときにいくつか抽出して検査するのと同じ、抽出検査です。
そのため異常値が出た場合の対応が課題となります。
「すべてが規格値に収まるのか?」と、疑問の声も上がっています。
まとめ:従来のスランプ試験の廃止は簡単ではない!
従来のスランプ試験では、人員が必要なため生産性が上がりません。
一方で、情報化ミキサーやAIによる画像解析では、試験そのものに割かれる人員を削減できます。
スランプ試験の代替案には、小さな現場での実現や全数検査に対する課題があります。
そのため簡単に廃止できるものではないといえるでしょう。
コンクリートの基本については、以下の記事で説明しています。
あわせてお読みください。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。