給与も休みもこんなに違う!?土木と建築の深刻な格差10個!
同じ建設業界でも、土木と建築の格差が広がっていると話題です。
今回は具体的に土木と建築の違い10項目を取り上げながら、格差の実態に迫ります。
これから建設業界に入る方、建設業界の未来に不安を抱いている方はぜひご覧ください。
建築と土木の格差1. 週休二日
建築と土木の格差1つ目は”週休二日”です。
まず土木については、次の国土交通省の資料を見てください。
週休二日の工事の実施がどんどん増えていることがわかりますね。
公共工事、つまり土木でこのような状況が実現できているのは、公共工事が税金で賄われるからです。
週休二日にするということは、1週間に2回、現場を閉所としなくてはならず、その分工期は長くなります。
工期が長くなれば、現場事務所の維持費や人件費、リース代など、諸経費が増えるのがデメリットです。
しかし公共工事の場合は、発注者が役所であるため、費用をカバーしてでも業界のよりよい未来を重んじる傾向が強いのです。
一方、建築工事はどうでしょうか。
発注者は民間の不動産会社やデベロッパーです。
民間企業にとって、週休二日を導入することで工期が長くなり、費用も高くなるとすれば、それはデメリットでしかありません。
よって、当然それは受け入れがたいということになります。
このように週休二日は、土木と建築の典型的な格差の1つなのですね。
建築と土木の格差2. 賃金アップ
建築と土木の格差2つ目は”賃金アップ”です。
こちらも国土交通省の資料を見てみましょう。
“総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置”とは、入札時の加点のことです。
たとえば公共工事の入札において、A社とB社が競り合いました。
A社は特に賃上げは行っていませんが、B社は賃金を何%以上か上げているとしましょう。
すると、会社規模や提案内容、入札金額が両社同じであっても、B社の方が少し評価が上がるというのが入札時の加点措置なのです。
国は現在、このような賃上げに対する優遇措置を率先して行っています。
では民間ではどうでしょうか?
民間の建築工事の場合、建設会社が競り合っても、社員の賃上げをしたか否かで受注に有利になることはまずありません。
あくまで「良いものを作れるか」「安くできるか」「早く作れるか」が業者選定の基準だからです。
よって、公共工事の土木に携わってる人は賃上げの評価によって給料が上がる可能性がありますが、建築はそのようなことはありません。
これが給与面の格差に繋がっているということです。
建築と土木の格差3. 請負金額
建築と土木の格差3つ目は”請負金額”です。
請負金額とは、建設会社が工事を受注する金額を指します。
土木工事は公共工事なので、国のルールに則った入札制度があります。
このルールの1つで、役所が工事を発注する際に、独自に取った見積もりのことを”予定価格”と言います。
たとえば道路建設工事を発注する際、役所が「これは1億円くらいだな」と見積もりを出したら、それが予定価格ということです。
その後、この1億円という数字を隠したまま、各社に図面を頒布して見積もりをしてもらいます。
そして、「9000万円で出来ます」「8000万円で出来ます」と手を挙げてもらう中で、最低金額を提案した業者が落札できるという仕組みです。
ただ、入札金額は安ければいいわけではありません。
極端な例ですが、予定価格が1億円の工事で「うちは1,000万円で出来ます!」という業者がいたら、ちゃんとできるのか不安になりますよね?
このようなことがないように、下限は予定価格の7割程度というのが従来のセオリーでした。
しかし次の国土交通省のデータの通り、昨今は下限金額が非常に高い傾向にあるのです。
落札率が高いために、下限金額も自ずと引き上げられていることがわかるでしょうか。
落札率が90%以上ということは、ほぼ予定価格に近い価格で落札できているということです。
つまり公共工事が主である土木は、工事の請負金額が高い傾向にあるということが言えます。
一方、民間の建築工事は自由競争であるため、安ければ安いほど工事が取りやすいという傾向が根強くあります。
となると、工事の請負金額に関しても、建築より土木の方が有利であることは明白でしょう。
建築と土木の格差4. 工事設計労務単価
建築と土木の格差4つ目は”工事設計労務単価”です。
工事設計労務単価とは、職人さんの1日当たりの労務単価を指します。
機(き)・労(ろう)・材(ざい)とは、工事金額を構成する機械、労務、材料のことです。
- 機械:ユンボなどの重機を使う費用
- 労務費:大工さんなど職人さんの人件費
- 材料:工事に使うコンクリなどの資材費
このうち工事設計労務単価は、労務費に該当します。
次の資料を見ても明白ですが、公共工事における職人さんの労務単価は約10年前からずっと右肩上がりです。
さらに昨今の落札率は9割以上となっていますから、設計労務単価が上がれば上がるほど、工事請負金額も引き上げられていきますね。
では民間の建築工事はどうかと言うと、こちらは設計労務単価に準じて積算をする必要はルール上にありません。
たとえどこかの不動産会社が「設計労務単価が〇円くらいなので、これ以上の金額を貰わないと…」と申し出たところで、他社が「うちなら●円でできますよ」と言えばそちらが落札するでしょう。
設計労務単価が年々上がっている土木に比べれば、建築の請負金額が上がるチャンスはかなり低めです。
これはつまり、土木の職人さんが賃金がどんどん上がっていくのに対して、建築の職人さんは横ばいという現象も引き起こす可能性があります。
末端の職人さんまで単価が反映されるのかという疑問はあるものの、理屈としては建築より土木の方が賃上げは有利と言えるでしょう。
まとめ
今回は”土木と建築の格差”をテーマに、格差を生み出す原因となっている土木と建築の違いについて紹介しました。
記事内で紹介した内容は次の4つです。
- 週休二日
- 賃金アップ
- 請負金額
- 工事設計労務単価
残り6つの格差については次の記事で取り上げますので、引き続きご覧ください。
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
理解を深めたい方はこちらの動画もご覧ください。
この記事の続きは以下の記事になります。