標準労務費とは?建設業の見積・入札で必須の基準と活用方法【2025年最新版】
建設業の見積・入札において、今後確実に重要性が高まるのが標準労務費です。
2025年12月の改正建設業法全面施行に伴い、標準労務費は「守るべき基準」として制度化され、単なる参考値ではなく「契約や見積に必ず反映すべき最低ライン」となります。
この記事では、標準労務費の意味や役割、算出方法、技能者評価(CCUS)や最低制限価格との関係まで、最新情報を交えてわかりやすく解説します。
施工管理者・経理担当者・見積作成を担当する方は、実務に直結する知識としてぜひ参考にしてください。
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標準労務費とは?建設業で使われる基本的な考え方

そもそも労務費とは何か?(直接労務費・間接労務費)
労務費とは、工事を行う際に必要となる人件費に関わる費用全体を指します。建設業における労務費は、以下のように分類されます。
▼労務費の種類
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 直接労務費 | 職人・技能者・現場作業員への賃金(基本給・残業代・賞与など) |
| 間接労務費 | 社会保険料、福利厚生費、教育研修費、事務管理費など |
工事現場で実際に作業する技能者に支払う賃金だけでなく、企業が負担する社会保険料や福利厚生費なども労務費に含まれることがポイントです。
「標準労務費」と「実際労務費」の違い
| 項目 | 標準労務費 | 実際労務費 |
|---|---|---|
| 定義 | 国や都道府県が設定した、基準となる技能者の賃金水準 | 会社が実際に技能者へ支払った給与や各種費用 |
| 主な用途 | 見積・入札・契約・積算の基準 | 原価管理・経理処理・採用・実績の把握 |
| 性質 | 基準・最低ライン | 実績・現場の実情反映 |
標準労務費は「契約や見積の基準」として使い、実際労務費は原価管理や給与管理で使用するものです。
混同すると契約トラブルの原因になるため、役割の違いを明確にしておきましょう。
標準労務費の構成要素(賃金・社会保険料・福利厚生費・間接費)
標準労務費は単純な日当や基本給ではなく、以下の要素で構成されています。
▼標準労務費の主な構成項目
- 基本賃金(基本給・賞与・時間外労働など)
- 法定福利費(社会保険料・労働保険料)
- 法定外福利費(退職金制度・宿舎費・資格取得費)
- 間接費(現場管理費・教育研修費・採用費など)
つまり、「賃金+会社が負担する費用」すべてを含めた金額が標準労務費です。
ここが「単なる日当」との大きな違いです。
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建設業における標準労務費の役割と目的

公共工事の積算・予定価格の算定に使われる理由
公共工事では、国土交通省が毎年公表する公共工事設計労務単価と歩掛(ぶがかり)を基準に予定価格を算定します。
標準労務費はこの仕組みを法的に裏付ける役割を担い、以下の効果があります。
▼標準労務費が使われる理由
- 不当に安い入札を防止する
- 技能者の適正な賃金水準を確保する
- 質の高い工事を担保する
- 契約・見積の透明性を高める
これにより、「低価格競争で賃金が削られる」という旧来の課題を解消する狙いがあります。
企業ごとの労務費が違っても「標準」が必要な理由
実際の労務費は企業によって異なりますが、契約や入札では共通の基準値が必要です。
標準労務費が導入されたことで、以下の改善が期待されています。
- 見積の妥当性を判断しやすくなる
- 発注者と受注者の認識差を防げる
- 労務費の確保を前提とした契約になる
契約時に「技能者の賃金を適正に反映しているか」を確認しやすくなる点が大きな特徴です。
技能者の評価・賃金制度改革との関係(CCUS・賃上げ政策)
近年、CCUS(建設キャリアアップシステム)では、技能者のレベル・資格・実績がデータ化され、労務費単価と連動し始めています。
つまり、これからの賃金水準は「会社」ではなく、「技能者の実力」で決まる時代へ移行しています。
▼高い標準労務費を提示できる技能者
- 1級・監理技術者等の資格保有者
- CCUSレベル3~4の技能者
- 現場管理・教育ができる熟練者
標準労務費は、技能者の処遇改善・キャリアアップと密接に関係している制度です。
標準労務費の算出方法と計算式の基本

計算に使われる主な項目(基本給・各種法定福利費・賞与・間接費)
標準労務費を算出する際は、以下の項目を含めることが求められます。
▼計算に含めるべき主な項目
- 基本賃金(給料・賞与・時間外手当)
- 社会保険料(厚生年金・健康保険など)
- 法定外福利費(退職金・宿舎費・教育費)
- 会社負担の間接経費(研修・採用・管理費)
単なる「労務単価×歩掛」ではなく、企業が負担するコストも考慮することが重要です。
標準労務費の代表的な計算式例
▼標準労務費の基本計算式
標準労務費=(基本賃金+法定福利費+法定外福利費+間接費)×歩掛
例:鉄筋工(東京都)の場合
基本賃金:32,300円
法定福利費:6,000円
間接費:3,000円
歩掛:1.2
標準労務費=(32,300+6,000+3,000)×1.2=49,560円/日
この計算を工種別・人数・日数で反映して見積書に記載します。
技能者のグレードによる労務費の違い(技能者レベル・資格による差)
▼技能者レベルと労務単価のイメージ
| CCUSレベル | 技能レベル | 労務単価の目安 |
|---|---|---|
| レベル1 | 初級作業者 | 基本単価だけ |
| レベル2 | 一人前技能者 | 基本単価×+10〜15% |
| レベル3 | 職長技術者 | 基本単価×+25〜40% |
| レベル4 | 熟練・指導者 | 基本単価×+50%以上 |
資格やCCUSレベルが上がるほど、標準労務費も大きく増加する仕組みです。
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標準労務費と関連する制度・法律

最低制限価格との関係
最低制限価格制度では、不当に低い入札価格を排除し、適正な工事品質を確保することが目的です。
標準労務費はこの制度の基準の一部に組み込まれ、最低限確保すべき労務費として明示されるようになります。
労務単価(公共工事設計労務単価)との違い
| 項目 | 標準労務費 | 設計労務単価 |
|---|---|---|
| 役割 | 契約で下回れない基準 | 公共工事の見積基準 |
| 経費含有 | 福利費含まない | 福利費別途必要 |
| 対象 | 公共・民間両方 | 主に公共工事 |
設計労務単価はあくまで「参考単価」、標準労務費は「契約で守るべき最低ライン」です。
労務費の法的根拠(労働基準法・建設業法・発注者指針)
標準労務費は、以下の法律・指針を根拠として制度化されています。
- 改正建設業法(第19条の2)
- 労働基準法(最低賃金・労働条件の保障)
- 国交省・発注者指針(予定価格・契約方針)
標準労務費はどこで確認できる?最新の調べ方ガイド

国土交通省・各都道府県の公表資料
標準労務費は以下の機関から確認できます。
- 国土交通省(公共工事設計労務単価)
- 都道府県財務局
- 地方建設事務代理所(積算基準)
積算システム・建設物価・経審資料での確認方法
| ツール | 主な用途 |
|---|---|
| 建設物価 | 市場単価・労務単価の確認 |
| 積算システム(ATLUS・Gaia) | 見積・歩掛計算 |
| 経審資料 | 評点・社会保険加入状況 |
CCUSと連携した労務費管理の最新動向
- CCUS登録状況に応じた労務単価の適用
- 施工体制台帳との連携
- 経審での加点・年収データの活用
標準労務費が施工管理技士の年収・待遇に与える影響

技能者の評価が労務費単価に反映される仕組み
施工管理技士・技能者の処遇は、以下のように連動しはじめています。
- CCUSレベルが高い=標準労務費も高い
- 資格保有=経審・見積評価が上がる
- 社会保険加入=労務費単価の基準強化
施工管理技士が高い標準労務費を提示できる理由
施工管理技士は以下の理由で高単価を提示できます。
- 元請管理・監理技術者としての責任性
- 施工体制台帳の資格者に該当
- 賃金基準が法的に補償される
資格・キャリアが単価に直結する時代へ(経審・建設キャリアアップ)
資格や経験が“単価に直結する”時代へ移行しています。
「安く使われる時代」から「価値が価格になる時代」へ―。
標準労務費を活用する場面と実務例

積算・見積書作成で使うケース
- 公共工事・民間問わず適用
- 標準見積書に労務費内訳を記載
- 協力会社の見積比較にも活用
入札戦略・利益率の設計で使うケース
- 予定価格の算定
- 利益率と安全性の確保
- 不当ダンピングの防止
外注費・協力会社との交渉で使うケース
- 協力会社への契約説明
- 法定福利費の確保
- 「総額提示」ではなく「内訳交渉」
よくある質問(FAQ)
-
標準労務費を守らなかったら罰則はありますか?
-
直接罰則はありませんが、行政指導・許可取消などの可能性があります。
-
CCUSを登録しないと標準労務費に反映されませんか?
-
直接ではありませんが、CCUS未登録の場合、技能者のレベル評価が反映されにくく単価が低くなります。
-
民間工事でも標準労務費は必要ですか?
-
今後は民間工事にも適用が拡大しています。労務費の根拠として活用されます。
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まとめ|標準労務費は“積算”だけでなく、キャリアにも関わる重要な指標
標準労務費は、見積・契約の基準となるだけでなく、技能者の評価・キャリア・賃金に直接影響する重要な指標です。
これからの建設業界では、「コスト」ではなく「価値としての労務費」を考えることが求められます。


