専任の主任技術者・監理技術者は兼任できる?施工管理が知るべき「専任合理化」の実務

/

「専任の主任技術者・監理技術者は1人1現場」が原則――そんな常識が、令和6年12月施行の建設業法改正で大きく変わりました。技術者不足が深刻化するなか、一定の要件を満たせば、主任技術者・監理技術者が複数現場を兼任できる「専任合理化」制度がスタートしています。

ただし、誰でも自由に兼任できるわけではありません。請負金額、現場間の距離、ICT環境、連絡員の配置など、実務では細かな条件を正しく理解して運用することが欠かせません。制度を誤解したまま活用すると、かえって法令違反や現場管理上のリスクにつながるおそれもあります。

この記事では、専任合理化の基本概要から、専任特例1号や営業所技術者等の兼任ルール、ICT活用要件、実務上の注意点までをわかりやすく整理します。施工管理として押さえておきたい最新ルールを、実務目線で確認していきましょう。

専任合理化とは?令和6年12月施行の建設業法改正のポイント

建設業界の深刻な技術者不足を背景に、令和6年12月13日より建設業法が改正され、現場技術者の専任合理化制度が新たにスタートしました。これまで原則として「1人1現場」だった主任技術者・監理技術者の配置ルールが、一定の条件下で緩和されることになりました。

この改正により、情報通信技術(ICT)を活用した遠隔管理体制を整備することで、経験豊富な技術者が複数の現場を効率的に管理できるようになります。従来の専任配置が原則だった工事でも、要件を満たせば最大2現場まで兼任が可能となり、限られた人材リソースの有効活用が期待されています。

専任合理化は、単なる人手不足対策ではなく、デジタル技術を駆使した現場管理の効率化を目指す制度です。現場にいなくても適切な指示や確認ができる環境を整備することで、技術者の働き方改革と建設業界全体の生産性向上を実現することが狙いです。

専任合理化制度の3つの柱

専任合理化制度には、以下の3つの主要な改正ポイントがあります:

  • 専任特例1号:主任技術者・監理技術者の複数現場兼任(最大2現場)
  • 建設業法第26条の5新設:営業所技術者等の専任現場兼任
  • 専任技術者の名称変更:「営業所技術者等」への統一

これらの制度を適切に活用することで、建設会社は技術者配置の柔軟性を大幅に向上させることができます。

専任特例1号の要件と適用条件

専任特例1号は、建設業法第26条第3項第1号・第4項に規定される新制度で、一定の条件を満たすことで主任技術者・監理技術者が最大2現場まで兼任できる画期的な仕組みです。

この制度を適用するためには、8つの要件すべてを満たす必要があります。どれか一つでも欠けると専任特例1号は利用できず、従来通りの専任配置が必要となります。

請負金額と兼任現場数の制限

請負金額の上限は、各工事が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)である必要があります。工事途中で請負代金が増額され、この金額を超えた場合は、即座に専任配置に戻さなければなりません。

兼任できる工事現場数は2現場以下と定められています。これは「専任が必要な現場」と「専任不要の現場」を組み合わせる場合でも同様で、合計2現場が上限となります。3現場以上の兼任は一切認められていません。

距離・移動時間の要件

工事現場間の距離については、技術者が1日の勤務時間内に巡回可能で、かつ移動時間が片道おおむね2時間以内である必要があります。この判断は、自動車などの通常の移動手段を前提として、確実に実施できる範囲で行われます。

災害や事故等の緊急時においても、迅速に対応できる距離であることが重要なポイントです。

下請次数と連絡員配置の要件

下請次数は3次までに制限されており、工事途中で4次下請が発生した場合は、専任特例の適用を中止する必要があります。

各工事現場には連絡員の配置が必須となります。連絡員は、主任技術者・監理技術者との連絡その他必要な措置を講じる役割を担い、土木一式工事や建築一式工事の場合は、当該工事に関する実務経験を1年以上有する者でなければなりません。

営業所技術者等の専任現場兼任(建設業法第26条の5)

建設業法第26条の5の新設により、営業所技術者等が専任を要する工事現場の主任技術者・監理技術者を兼務することが可能になりました。これまで営業所の契約業務に専念していた技術者が、条件を満たせば現場管理も担当できる画期的な制度です。

この制度の導入により、中小建設業者においても限られた技術者を効果的に活用し、営業所運営と現場管理の両立が可能となります。ただし、既存の「営業所近接工事」特例との併用は認められていないため、適用する制度を慎重に選択する必要があります。

営業所技術者等兼任の主要要件

営業所技術者等の専任現場兼任には、専任特例1号とほぼ同じ要件が設けられていますが、以下の点で違いがあります:

工事契約の制限:当該営業所において締結された建設工事に限定されます。他の営業所で契約した工事の兼任は認められません。

兼任現場数:1工事現場までとなり、専任特例1号の2現場より少なくなります。

距離要件:営業所から工事現場までの距離が、1日で巡回可能かつ移動時間がおおむね2時間以内である必要があります。

直接的・恒常的雇用関係の必要性

営業所技術者等が現場兼任する場合は、当該建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要です。これは、営業所の責任体制と現場管理の責任を明確化するための重要な要件です。

派遣社員や業務委託契約による技術者では、この要件を満たすことができないため注意が必要です。

ICT活用要件と情報通信機器の設置義務

専任合理化制度の核心となるのが、ICTを活用した遠隔管理体制の構築です。これにより、技術者が現場に常駐しなくても適切な施工管理が可能となります。

情報通信技術の措置としては、現場作業員の入退場が遠隔から確認できるシステムの導入が必要です。CCUS(建設キャリアアップシステム)やCCUSとAPI連携したシステムが推奨されていますが、その他のシステムでも遠隔確認機能があれば利用可能です。

情報通信機器設置の具体的要件

現場状況の確認のためには、映像・音声の送受信が可能な情報通信機器を設置し、安定した通信環境を確保する必要があります。一般的なスマートフォンやタブレット端末、WEB会議システムでも、要件を満たせば利用可能です。

ただし、山間部等の工事現場で通信環境が不安定な場合は、この要件に該当せず、専任特例の適用ができない可能性があります。通信品質の事前確認が重要です。

人員配置計画書の作成・保存義務

専任特例を適用する場合は、人員の配置を示す計画書を作成し、工事現場に備え置くとともに、営業所で帳簿保存期間と同じ期間保存する必要があります。

計画書には、建設業者の名称・所在地、技術者の氏名、労働時間の見込み・実績、工事内容、請負代金額、移動時間、下請契約の状況、連絡員の情報、ICT措置の内容、情報通信機器の設置状況など、詳細な情報を記載する必要があります。

実務運用における注意点と制約事項

専任合理化制度を実際に運用する際には、いくつかの重要な制約と注意点があります。これらを理解せずに制度を適用すると、法令違反となる可能性があるため、慎重な運用が必要です。

専任特例制度の併用禁止

専任特例1号と専任特例2号(監理技術者補佐を活用した兼任制度)の併用は一切認められません。同一の技術者が両制度を同時に利用することは法律で禁止されています。

また、営業所技術者等の専任現場兼任制度と、従来の「営業所近接工事」特例の併用も不可能です。どちらか一方の制度を選択して適用する必要があります。

工事途中での要件変更への対応

工事進行中に専任特例の要件に適合しなくなった場合は、即座に専任配置に切り替える必要があります。例えば、請負代金の増額、4次下請の発生、通信環境の悪化などが該当します。

要件の継続的な監視と、変更時の迅速な対応体制を整備することが重要です。要件違反の状態が続くと、建設業法違反として処分の対象となる可能性があります。

標識掲示の変更

専任特例1号を適用している工事現場では、建設業許可票の「専任の有無」欄に非専任(情報通信技術利用)と記載する必要があります。従来の「専任」表記とは異なるため、現場での掲示ミスがないよう注意が必要です。

専任合理化を活用した現場管理戦略

専任合理化制度を効果的に活用するためには、単に要件を満たすだけでなく、戦略的な現場管理体制の構築が重要です。ICTの導入と人材配置の最適化により、従来以上の品質・安全・工程管理が可能となります。

連絡員の戦略的活用

連絡員は単なる連絡係ではなく、技術者の右腕として現場管理を支援する重要な役割を担います。工程会議や品質検査が複数現場で同時進行する際は、連絡員が現場側で適切に対応し、遠隔にいる技術者との円滑な連携を図ります。

優秀な連絡員を育成・配置することで、専任特例制度の効果を最大化できます。連絡員の複数現場兼務も可能なため、効率的な人材活用が期待できます。

ICT環境の段階的整備

専任合理化に必要なICT環境は、一度に完璧な システムを導入する必要はありません。まずは基本的な通信機器とシステムから導入し、運用しながら段階的に高度化していくことが現実的です。

CCUS導入、WEB会議システム活用、遠隔監視カメラ設置など、自社の規模と予算に応じた最適な組み合わせを選択することが重要です。

人材育成との連携

専任合理化制度は、ベテラン技術者の知見を複数現場に展開し、若手技術者の育成を加速させる絶好の機会でもあります。経験豊富な技術者が複数現場を管理することで、より多くの若手に指導機会を提供できます。

連絡員として配置される人材も、将来の主任技術者・監理技術者候補として計画的に育成することで、中長期的な人材不足解決に貢献できます。

まとめ:専任合理化で実現する建設業界の未来

専任合理化制度は、建設業界が直面する技術者不足と働き方改革の課題を同時に解決する画期的な制度です。ICTを活用した遠隔管理により、限られた人材で複数現場を効率的に管理できるようになりました。

制度の成功には、8つの要件を確実に満たすことはもちろん、連絡員の育成、ICT環境の整備、そして継続的な要件管理が不可欠です。単なるコスト削減ではなく、技術者の専門性を最大限に活かし、建設業界全体の生産性向上を目指すことが重要です。

今後は、専任合理化制度を戦略的に活用する企業と、従来の管理手法に固執する企業との間で、競争優位性に大きな差が生まれる可能性があります。

今すぐ始める専任合理化への第一歩

専任合理化制度の導入を検討している建設会社の皆様へ、まずは以下の行動を推奨します:

自社の工事規模と技術者配置の現状分析を行い、専任特例適用の可能性を検証してください。ICT環境の整備状況と必要な投資額を算定し、段階的な導入計画を立案することが重要です。

また、連絡員候補の人材育成と、要件管理のための社内体制整備も並行して進めましょう。専任合理化制度は単なる制度変更ではなく、建設業界のデジタル化と働き方改革を推進する重要な転換点です。

制度の詳細な運用方法や最新情報については、国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルを定期的に確認し、適切な制度活用を心がけてください。今こそ、未来の建設業界を見据えた戦略的な取り組みを開始する時です。

 

施工管理 専門の転職エージェントに登録すれば有利な転職ができます。

  • 業界30年以上の歴史と信頼
  • 役員クラスのコネクション
    で有利な転職
  • 給与交渉も無料で代行

株式会社ライズは施工管理専門の転職エージェントサービスを提供しています。転職エージェントサービスにご登録いただくと、施工管理の転職に精通した専属エージェントが、ご希望に沿った求人をリサーチし、あなたのご経験やスキルを求める企業をご紹介します。ご希望があれば、職務経歴書の添削や面接対策・給与交渉まで代行するなど、あらゆる転職サポートを無料で受けることができます。

ライズの強みは、業界30年の実績により、多くの取引先企業の役員クラスと幅広いコネクションを持っている点です。役員クラスから直接お預かりしている非公開求人を多数取り扱っているため、普通では出会えない好条件の求人をご紹介することが可能です。さらに、専属のエージェントを経由して、あなたの魅力を企業側へプッシュしてもらえるため、お一人で選考を受けるよりも内定の可能性を一気に高めることができます。

まずはお気軽に以下のボタンより転職エージェントサービスにご登録ください(無料)

\転職エージェントに/