下請が言う「それ聞いてない問題」──施工管理が最初に潰すべき認識ズレの正体
現場で頻発する「それ、聞いてないです」という一言。
この瞬間、空気が一気に重くなり、施工管理として胃が痛くなる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、この「それ聞いてない問題」を下請側のワガママや責任転嫁で終わらせず、
なぜ起きるのか、どう防ぐべきか、起きてしまった後にどう対処すべきかを、施工管理目線で整理します。
結論から言えば、「それ聞いてない」は施工管理の仕事の結果です。
だからこそ、構造を理解すれば、確実に減らせます。
なぜ現場で「それ聞いてない」が頻発するのか
下請が悪いわけではないケースが多い理由
結論から言うと、「それ聞いてない」は下請の怠慢ではなく、情報伝達の構造的な欠陥で起きることがほとんどです。
建設現場は、元請・一次下請・二次下請…と多重構造になっています。
情報は上から下へと伝言ゲームのように流れ、その過程で抜け・歪み・解釈違いが発生します。
- 元請では「当然」と思っている前提
- 施工管理が暗黙知として扱っている条件
- 過去現場では常識だったルール
これらは、下請にとっては初耳であることが珍しくありません。
口頭・慣習・空気で進む建設業の怖さ
建設業界では今もなお、
「前もこうだったから」
「普通わかるでしょ」
といった口頭・慣習・空気で物事が進みがちです。
しかし、
口頭=記録が残らない
慣習=人によって解釈が違う
空気=伝わったか確認できない
この3つが重なると、「言った」「聞いてない」は必然的に発生します。
情報は出しているのに「伝わっていない」現実
施工管理側はこう思いがちです。
「ちゃんと説明した」
「資料も渡した」
しかし重要なのは、出したかどうかではなく、相手に同じ前提が共有されたかです。
資料を渡しても、
・どこが重要かわからない
・自分の工事に関係あるか判断できない
・変更点に気づけない
この状態では、情報は「存在しているだけ」で、伝わっていません。
「それ聞いてない」が起きやすい典型パターン
工程・工期に関する認識ズレ
最も多いのが、工程に関するズレです。
- 元請:全体工程を見て調整している
- 下請:自分の工種の予定しか見ていない
結果として、
「その日までに終わる前提だと思っていた」
「そんなタイトな工程とは聞いていない」
という衝突が起きます。
作業範囲・施工分担の曖昧さ
図面に明確に書かれていない部分ほど、トラブルになります。
- どこまでが誰の工事か
- 仮設・養生・復旧は含むのか
- 他工種との取り合いは誰がやるのか
ここを曖昧にしたまま進めると、
現場で初めて問題化します。
安全・ルール変更が共有されていない
KYルールや安全基準の変更も要注意です。
- 朝礼で一部の人にしか伝えていない
- 元請内では決まっているが下請に降りていない
その結果、
「そんなルール聞いてない」
「昨日まではOKだった」
という反発が生まれます。
急な段取り変更が前提化している現場
人手不足の現場ほど、
急な変更が常態化しています。
変更そのものよりも問題なのは、
「変更して当然」という前提で共有を省くことです。
施工管理がやりがちな“火種を残す対応”
「前も言ったよね」で済ませてしまう
これは最悪の一言です。
相手にとっては、
- いつ
- 誰から
- どの内容を
聞いたのかが不明確です。
この一言は、問題解決ではなく対立を深めるだけです。
忙しさを理由に説明を省略する
施工管理が忙しいのは事実です。
しかし、説明を省いた結果、
- 手戻り
- クレーム
- 人間関係悪化
が起きれば、もっと忙しくなります。
説明は「余裕がある時にやる仕事」ではありません。
元請内では共有できていると勘違いする
社内で共有=現場全体で共有、ではありません。
元請の常識は、下請の常識ではない。
ここを取り違えると、確実にトラブルになります。
「それ聞いてない」を防ぐのは契約後ではなく契約前
着工前に必ずすり合わせるべき項目
着工前のすり合わせで最低限必要なのは以下です。
- 作業範囲・除外範囲
- 工程の前提条件
- 他工種との取り合い
- 変更が起きた場合のルール
これを曖昧なまま着工しないことが重要です。
施工条件・制約事項を最初に全部出す重要性
後出し条件は、必ず不信感を生みます。
- 夜間作業の可能性
- 搬入制限
- 騒音・近隣対応
「まだ決まっていない」ことも含めて共有する方が、結果的に信頼されます。
後出しになりやすい内容ほど最初に共有する
トラブルになりやすい内容ほど、
最初に出す勇気が施工管理には求められます。
施工管理が持つべき「説明責任」の考え方
説明したかではなく、伝わったかで判断する
説明責任の基準は、
自分が話したかどうかではありません。
相手が
「理解し、判断できる状態になったか」
が基準です。
下請目線で噛み砕いて説明できているか
専門用語や社内略語は、極力使わない。
- なぜ必要なのか
- 何が変わったのか
- 何をしてほしいのか
を、下請目線で説明することが重要です。
言質を取るのではなく、合意を作る意識
「言ったよね?」ではなく、
「この認識で合っていますか?」
合意形成を意識したコミュニケーションが、
トラブルを未然に防ぎます。
それでも起きる「それ聞いてない」への現実的な対処
感情論に入らず事実と経緯を整理する
まずやるべきは、
- 何が
- いつ
- どの経路で
伝わっていなかったのかを整理することです。
感情論に入ると、解決は遠のきます。
責任追及よりも着地点を先に考える
現場では、正しさより工事を前に進めることが優先です。
- 今どうすれば進むか
- 誰が何を負担するか
着地点を先に決める姿勢が信頼につながります。
次に同じことを起こさない仕組みに変える
再発防止までやって、初めて施工管理の仕事です。
- 共有方法の見直し
- 記録の残し方の改善
- ルールの明文化
ここまで踏み込むことで、現場は変わります。
「それ聞いてない」が多い現場の末路
下請との信頼関係が崩れる
一度失った信頼は、簡単には戻りません。
- 言われたことしかやらない
- 協力しなくなる
現場の雰囲気は確実に悪化します。
工程・品質・安全すべてに悪影響が出る
コミュニケーション不全は、
工程遅延・品質低下・安全リスクに直結します。
最終的に施工管理が一番苦しくなる
板挟みになり、
責任を背負い、
現場の不満を一身に受ける。
「それ聞いてない」が多い現場ほど、
施工管理が消耗します。
「それ聞いてない」が起きない現場がやっていること
説明・共有を「作業」として組み込んでいる
説明を善意に頼らず、
業務プロセスとして組み込んでいるのが特徴です。
決定事項を必ず形に残している
- 図面
- 議事録
- チャット履歴
形に残すことで、「言った言わない」を防ぎます。
下請と「同じ前提」で現場を見ている
同じ情報、同じ視点、同じ前提。
これが揃ったとき、現場は驚くほどスムーズに回ります。
まとめ|「それ聞いてない」は施工管理の仕事の結果である
「それ聞いてない問題」は、
下請の問題ではなく、施工管理の仕事の積み重ねです。
だからこそ、
- 防ぐことも
- 減らすことも
- 改善することも
施工管理次第で可能です。