建設業は週休二日制が導入できる?働き方に関する現場のリアルな声
あなたは現在、週休二日制で働いていますか?
建設業では週休二日制を推進していますが、なかなか進まないのが現状です。
現場で働く人たちは週休二日制について賛成しているのか?と聞かれると、そうでもないことが分かりました。
代わりの人がいないのような人手不足、低賃金、など課題はたくさんあるからです。
本記事では建専連のアンケート結果を元に、現場のリアルな声を紹介します。
週休二日制と建設業、どのような課題があるのか一緒に考えていきましょう。
建設業の週休二日制に関する調査結果
建設業界では週休二日制を推進しています。
では実際に働く人たちはどのように思っているでしょうか。
一般社団法人建設産業専門団体連合会のアンケート結果を元に紹介します。
建専連とも言われます。
とび・大工・左官・塗装などの職人の会社で構成される団体です。
「働き方改革における週休二日制、専門工事業の適正な評価に関する調査結果」という名目で実施されました。
調査期間は令和5年10月16日~12月15日。
有効回収数は858件でした。
建設業の週休二日制に対する現場の声6選
アンケート内で「週休二日制に関する意見・要望」を集めると、約250件の回答がありました。
その回答を集約すると、6つの分類とその他、合わせて7つに意見が分けられます。
- 第1位:元請次第、業界全体としても取り組むべき(76件)
- 第2位:労務単価、賃金アップが優先されるべき(62件)
- 第3位:実現は困難(25件)
- 第4位:法律や政策で週休二日制を定めるべき(19件)
- 第5位:適切な工期設定や工期の平準化が必要(17件)
- 第6位:必要ではない(12件)
具体的な意見や要望を、各項目に分けて紹介します。
現場の声①:元請次第・業界全体で取り組むべき
週休二日制について、「元請次第」や「業界全体で取り組むべき」のような回答が一番多く、76件ありました。
具体的な意見は下記の通りです。
- 元請が工期に間に合わず土曜出勤せざるを得ない
- すべての元請が閉所しないかぎり下請は休暇を取得できない
- 現場は休みでも加工場で加工するよう言われる
- 土日祝の休みを導入しても民間工事が土日祝に行われる
自社で週休二日制を導入していても、元請次第では出勤せざるを得ない状況が多くあります。
そのため業界全体で取り組まなければ、下請である専門工事会社の週休二日制実現は厳しいと言えます。
現場の声②:賃金アップが優先
週休二日制について2番目に多かった意見が、労務単価や賃金アップを優先すべきとの声でした。
この意見は62件あり、具体的な内容は下記の通りです。
- 週休二日制が導入されると週6日の給料を5日換算して支払わなければ維持できない
- 週5日の元請の現場に行く人は土曜日だけ他の現場へ行ってもらっている
- 1日あたり6/5(1.2)倍の給与を支払うだけの単価が要求できれば可能だが厳しい
週6日の場合:週6日×4週=24日出勤
週5日の場合:週5日×4週=20日出勤
日給で計算する文化が根強く、残りの4日分の補填ができません。
その分単価アップに元請が応じてくれればいいですが、すべての元請が対応するとは考えられませんよね。
さらに単価については下記の意見もありました。
- 厳しい法律に合わせた中身の見直し・ベースアップも必要
- 真面目に週休二日制に取り組んでも発注額が以前のままなので単価が合わない
国や業界が推進するように週休二日制を導入しても、単価が据え置きのため会社が苦しい状況になっています。
週5日でも給与の支払いができるような、単価や賃金のベースアップが必要です。
現場の声③:実現は困難
週休二日制の実現は困難である、という意見が25件ありました。
- 閑散期は可能だが繁忙期は難しい
- 土日に稼働が止まる工場の工事現場もありそうでない現場と足並みを揃えるのが大変
- 土日指定もあり断れない
- 人員が少なく代わりがいない
元請やある程度大きな会社であれば、代わりの人員がいて交代で休日が取れます。
職人のような専門工事会社は少数の社員で構成されることが多く、そのため代わりの人員がいないのです。
職人の人手不足は深刻なので、週休二日制の実現が困難と言えます。
職人の人手不足については下記記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
現場の声④:法律や政策で定めるべき
週休二日制の実現に関して、法律・政策で週休二日制を定めるべきという意見もあります。
これには19件の回答があり、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- 建設業全体が義務化しない限り導入できない
- 現場が動いていては休めないので法律で週休二日制を義務にしてほしい
- 土曜日の現場稼働については労基署への届け出必須のような法的措置が必要
第1位の意見と同じく元請次第で土曜日出勤となる下請会社。
「無理です」「できません」と言えないからこそ、義務化が必要です。
建設業全体・法律で定めない限り、週休二日の実現は難しいと言えます。
現場の声⑤:適切な工期設定が必要
適切な工期の設定や工期の平準化が必要、と考える意見が17件ありました。
- 工程を2割長くしてほしい
- 仕上げ業者のため最後は工期優先で休みが取得できない
- 管理者は交代すればいいが業者は交代するほど余裕がない
内装やタイル業のように、工程の最後に作業する場合、前工程のしわ寄せで苦しみます。
工期の終わりは決まっているので、工程が最後になればなるほど人員増員して終わらせるしかありません。
週休二日制にするには、余裕を持った適切な工期設定が必要です。
現場の声⑥:必要ない
週休二日制は必要ない、という回答は12件ありました。
具体的には下記のような意見があります。
- 週休二日制にすると賃金が減る
- 労働者から週休二日制を希望する声をあまり聞かない
- 技能者レベルの休暇は埋められるが職長レベルは代わりがいない
- 人手不足なのに週休二日制にどのように取り組むべきなのか分からない
人手不足と低賃金に悩まされている建設業。
例えば型枠大工の給与が低い話を、以前下記記事で説明しました。
このような状況で最初に取り組むべきは「週休二日制」なのか?と疑問視する声もあります。
そのため週休二日制は必要ない・望まないという意見も出てくるのです。
建設業の週休二日制に対するその他の意見
上記で紹介した意見の他にも、興味深い回答がありました。
- 働きたい人と休みたい人で2極化している
- 民間企業は休日を自由にし働く人が選択できれば良い
- 休むと給与が減るのでUberEatsのような働き方をプラスしているのが実態
- 年間を通して休日日数が週休二日制と変わらないような取得方法が良い
同じ建設業で働く人々の中にも、様々な意見がありますね。
まとめ:建設業の週休二日制実現には課題が多い
建設業の週休二日制を実現について、現場からは下記の意見があります。
- 第1位:元請次第、業界全体としても取り組むべき(76件)
- 第2位:労務単価、賃金アップが優先されるべき(62件)
- 第3位:実現は困難(25件)
- 第4位:法律や政策で週休二日制を定めるべき(19件)
- 第5位:適切な工期設定や工期の平準化が必要(17件)
- 第6位:必要ではない(12件)
週休二日制を導入する前に、人手不足や低賃金の課題も多いのが現状です。
とくに労働単価・賃金を見直さない限りは、週休二日制に対する反対の声も上がり続けることでしょう。
この記事の内容は、以下の動画で解説しています。あわせてご覧ください。