素人でもすぐわかる!工事費算出(積算)4つのポイント【前編】
工事費用といえば〇千万、〇億など、膨大な金額がかかるもの。
金額が圧倒的すぎて「どんな風に算出(積算)されているのかまったく想像できない!」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はキホンのキを押さえながら、初心者の方でもわかるように積算のポイント説明していきます。
工事費の種類
まず、工事費用は主に次の4種類に分かれていることを覚えておきましょう。
- 直接工事費
- 共通仮設費
- 現場管理費
- 一般管理費
あとは”歩掛”という用語、それから積算には”積み上げ”という方法と、率で計算する方法があることをざっくりと頭に入れておいてください。
詳しくは順に説明していきますので、まずは用語の確認のみで大丈夫です。
実際に工事費用を算出してみよう
大前提として、工事費用は次の要素等によって算出方法が大きく異なります。
- 大きな工事か、小規模工事か(規模の違い)
- 建築・土木・電気・設備・機械のいずれか(工事内容の違い)
- 元請けか、下請けか(立場の違い)
さらに民間工事となると会社によっても算出方法が異なり、これらすべてを網羅しようとすると非常に大変です。
よって今回は、積算が最もシンプルな”公共の土木工事”を例に挙げて説明していきたいと思います。
まずは次のような工事内容をイメージしてみましょう。
1m四方のサイコロ状のブロックを10個作り、完成した後は、数十m先の工事現場へ移動・設置する。
ブロックの材質はコンクリートで、中には鉄筋が入っている。
では、次のパートから実際にこちらの工事費用を積算していきます。
直接工事費の算出方法
1つ目は直接工事費の算出です。
直接工事費は、文字通り”直接的な工事費”を表し、主に機労材(きろうざい)から構成されています。
機労材とは、機械の”機”、労務の”労”、材料の”材”を総称したものです。
たとえば”機”であれば、工事に使用するユンボやショベルカーなどの機械類。
“労”は鉄筋を組み立てる、型枠を建て込むといった作業に対する費用のこと。
“材”は、今回のコンクリート工事の例であれば、コンクリートや鉄筋などの材料費のことです。
つまり、この機労材を求めていくと、直接工事費が算出されるということになります。
材料費の算出方法
それでは、機労材の”材”から求めていきます。
工事内容を改めて確認してみましょう。
1m四方のサイコロ状のブロックを10個作り、完成した後は、数十m先の工事現場へ移動・設置する。
ブロックの材質はコンクリートで、中には鉄筋が入っている。
コンクリートの材料費を求めるために、まずはブロックの体積を求めます。
ブロック1個あたりの体積は、1m×1m×1m=1m³です。
1立米とも言いますね。
それを10個作るのですから体積のトータルは10立米です。
これで材料の数量がわかりました。
そして1立米当たりのコンクリートの値段が1万5,000円すると、10立米のコンクリートの値段は15万円です。
さらに、今度はコンクリート中に入っている鉄筋の費用を求めてみましょう。
コンクリートの中に鉄筋が入ってるものは、だいたい1立米あたり約150kgの鉄筋が入っていると言われます。
では、1つのブロックの中に150kgの鉄筋が入っているとしたら?
10個では1,500kg、つまり1.5tですね。
1tあたりの鉄筋が10万円だとすると、1.5tで15万円。
すると材料費のトータルは、コンクリート15万円+鉄筋15万円=30万円だとわかります。
これで機労材の”材”が求められました。
労務費の算出方法と歩掛
次は機労材の”労”を求めます。
先ほど費用を割り出したコンクリートと鉄筋を組み立てるための費用ですね。
コンクリートブロックを作るには、型枠を作り、そしてその中にコンクリートを流し込む工程が必要です。
では、サイコロ状のコンクリートブロックを作る場合、コンクリートを流し込む枠は一体いくつ作ればいいでしょうか?
正解は5面です。
サイコロは6面ですから、流し込む上の部分だけを除いて5面ですね。
1つの面は1平米ですから、1つのコンクリートブロックあたり5平米。
10個分のブロックを作るには、50平米分の枠が必要になります。
ここから労務費を導き出すのに必要なのが”歩掛”です。
歩掛を使って労務費を導き出す方法
A親方という型枠屋さんがいたとしましょう。
A親方は腕がいいので、1日あたりの日当は5万円です。
そしてこのA親方が1日仕事をすると、型枠が10平米ほど完成するとされています。
1日5万円で10平米の型枠ができるということは、1平米あたりいくらで出来るということになりますか?
答えは5,000円ですね。
さらに細かく言うと、A親方が1日あたり10平米分の作業ができるのだとしたら、1平米あたりA親方は何人必要でしょうか。
答えは0.1人で、まさにこれが歩掛です。
歩掛とは、いわば「作業に対してA親方が何人必要か」を数値化したものなのです。
この歩掛は国土交通省で平均値が出されており、公共工事の単価はそれをもとにして決められています。
労務費はこの歩掛が重要になるので、これを機にぜひ頭に入れておいてください。
改めて整理すると、10個のコンクリートブロックを作るには50平米の型枠が必要でした。
そして1平米あたりの労務費は5000円なので、50平米分で25万円。
結果、型枠の労務費のトータルは25万円ということになります。
では、鉄筋の場合はどうでしょうか?
鉄筋1t当たりの歩掛が6万円だとしましょう。
鉄筋は1.5t必要ですから、6万円×1.5t=9万円ですね。
さらにコンクリートを流し込む作業の費用も求めなければなりません。
1立米のブロックが10個で10立米分の作業が必要です。
このとき1立米あたりの歩掛が1,000円だとしたら、1,000円×10立米=1万円ですね。
よって、労務費の内訳は次の通りになります。
- 型枠の組み立て費…25万円
- 鉄筋の組み立て費…9万円
- コンクリートの打設費…1万円
すべてをトータルして35万円。
これで機労材の”労”が求められました。
機械経費の算出方法
直接工事費の最後は機労材の”機”ですが、こちらはシンプルです。
ここまでで作ったコンクリートブロックを移動させるにはクレーンが必要となります。
クレーンを1日借りるには、10万円かかることがわかりました。
よって、機械費=10万円で終わりです。
まとめ
今回は工事費用の算出プロセスの中でも、直接工事費=機労材にフォーカスし、実際の算出方法を解説しました。
ただ、工事費用はもちろんこれだけでは求められません。
残り3つ(共通仮設費・現場管理費・一般管理費)の算出方法については次の記事で解説します。
この記事の続きは以下の記事になります。