積水ハウスの大工正社員雇用に対する影響は?|山本技建の社長との対談
積水ハウスが打ち出した「大工1,000人正社員雇用」計画が話題を呼んでいます。
自社雇用によって、人手不足を解消する狙いです。
しかし、現場からは、こんな声も聞こえてきます。
「あれはボード屋じゃないか」
「大工不足を招いたのはハウスメーカー自身では?」
賛否が渦巻くこのニュース。
そこで本記事では、浜松で職人を多数抱えながら工務店を経営する山本社長の意見を交えて、影響を考察します。
業界にとってプラスの影響があると考える、山本社長。
その理由と、他社施工や業界の動きについてまとめました。
山本社長が考える「積水ハウス大工1,000人雇用」の影響

山本社長は、まず大きな視点でこう語ります。
「業界として見れば、すごくいいことだと思う」
注目されることで、マイナスイメージの強かった建設業に対して、高校生や保護者の見方が変わるきっかけになるためです。
積水ハウスの名前が求人市場に出ることで、一条工務店や住友林業といった大手と並んで「山本技建」の名前も同列に目に入ります。
そういう間接的な効果を、山本社長は期待しているそうです。
SNS上での受け止め方は、業界内では批判が約9割。
「大工不足を呼んだのはハウスメーカーだろ」
「組み立て住宅を増やしたから大工がいなくなった」
このような声が大勢を占めました。
しかし山本社長は、外からの注目が「分母を増やす」観点では、明確にプラスと評価します。
「金額が合えばうちの職人を使ってほしい」と先手を打って挨拶回りを重ねているそうです。
ハウスメーカーの担当者から職人たちへ「山本工務店は条件がいい」と口コミが広がることを狙っています。
大手が内製化を進めるこの時期だからこそ、補完的なポジションで名前を売る——そう割り切って行動できる経営者の姿は印象的ですよね。
山本技建の技術や労働環境に関する秘密は、以下の記事で解説しています。
ハウスメーカーの正社員化以外にも、大工の雇用状況は変わってきているんですよ。
影響①:積水ハウス正社員大工による他社物件の施工

では、積水ハウスで育てた大工は、他社物件もこなせるのでしょうか?
「他社の工事を受けるなど新たな事業機会も狙える」としている積水ハウス。
しかし他社物件の施工には、業界の構造的な問題が浮かびます。
施工要領は会社ごとに異なります。
山本社長も「それぞれ現場が違うので」と、他社物件施工には厳しさを話しました。
「伝統的な技術を持たないのに大工なの?」の問いに、山本社長は大工だと肯定的な意見です。
「積水ハウスの家を立てる大工」の位置付けと印象を語ります。
そもそもハウスメーカーは、それぞれ独自の施工要領(施工マニュアル)を持っています。
これが品質担保の根拠になっており、例えば大和ハウスや住友林業とは違う施工要領です。
ただし現場によっては他社施工もできるのでは、と山本社長は考えます。
積水ハウスはボードを貼る施工のため、ビルやマンションには需要があるとの見方です。
影響②:大工自社雇用・正社員化の他社の動き

今後、他のハウスメーカーや工務店も「大工の正社員化」に追随するのでしょうか?
山本社長の見立ては「大手はできる、地場の工務店は難しい」。
その理由は、年間50〜60棟を建てる地域の工務店でも、毎年安定して採用できるとは限らないからです。
「今年3人取れたが来年は募集しない」では、来てくれる人材はいなくなるでしょう。
大手のように継続的な採用ブランドを作れるかどうかが、そのまま自社雇用の成否に直結します。
山本社長自身はすでにハウスメーカーへの営業もかけており、「外注大工として金額が合えば、うちの職人を使ってほしい」スタンス。
大手が内製化しきれない部分を、地場の職人集団が補完する。
そういうモデルへの移行が現実的だと語ります。
影響③:正社員大工1,000人雇用はビジネスとして成功するのか

積水ハウスの正社員大工には、年収800万円超えのケースも紹介されていました。
もし全員が800万円なら、1,000人で人件費だけで80億円になりますが、果たして成立するのでしょうか?
これには「全員が800万円ではないはず」との見方があります。
求人票の最高年収だけが、一人歩きしているパターンと同じです。
さらには積水ハウスが育てる大工がボード貼りなどの単純工程に絞られているなら、800万円は矛盾する、と指摘も。
一方で、今回の発表自体は「業界への注目を集める広報戦略」として成功しています。
追跡報道が少ないなかでも、建設業全体のイメージ底上げの意味では、1つの成果は出ているのかもしれません。
積水ハウスの大工正社員化の背景やSNSでの意見については、以下の記事で解説しています。
まとめ:大工正社員化の本質は、業界の再注目にある
積水ハウスの大工1,000人雇用は、業界内では批判が先行しました。
しかし山本社長が言うように、「分母が増えること」「業界に目が向くこと」の観点では、確実にプラスの波及効果をもたらしています。
大手が内製化を進めるなかで、地場の工務店は「自社の大工の価値」を改めてアピールするチャンスを得ています。
他社や地場工務店の今後の動きにも、注目していきたいですね。
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