女子大や専門学校で建築学部・学科が新設されている!その理由と人気の背景

建築学部・学科といえば理系男子が多いイメージ…そんな印象を持っていませんか?
実は今、女子大学や専門学校で建築系学科の新設が相次いでいます。
- 武庫川女子大学建築学部:2020年開設
- 共立女子大学建築・デザイン学部:2023年開設
- 日本女子大学建築デザイン学部:2024年開設
- 渋谷ファッション&アート専門学校建築クリエーター科:2025年開設
でもなぜ、今になって女子大やファッション系の専門学校が建築に力を入れ始めたのでしょうか。
その理由には、建設業界を悩ませる人手不足も関係しています。
そこで本記事では、女子大学に建築系学科が集まる理由を解説しています。
先述した人手不足の他に、建築士の受験要件や資格志向も理由です。
髙木健次さんの建設ビジネスを参考に、女子大の建築系学科について読み解きましょう。
渋谷ファッション&アート専門学校の場合

渋谷ファッション&アート専門学校は、2025年4月に「建築クリエーター科」を新設しました。
もともとはファッションを中心とした専門学校でしたが、その後アート系学科も増やし、さらに建築分野に進出するという流れです。
建設ビジネスの著者である髙木さんは、なぜおしゃれな若者が集まる専門学校に建築系学科を新設したのか聞きました。
建築士の受験要件の緩和も、背景です。
若手建築士を育てる点には、企業のニーズもあると考えました。
建築士の受験資格は、2020年に法改正されました。
従来は実務経験が必要でしたが、現在では指定学科を修了すれば受験が可能です。
さらに一級建築士の40%以上が60代以上である現状も、専門学校の回答に理由として挙げられました。
建設ビジネスの中では書かれていませんが、学校にも少子化で人が集まらないような課題があるでしょう。
学校は学生を集めて、最終的に就職させなければなりません。
しかし建築系であれば、求人もたくさん来ます。
また、学科名を「建築クリエーター科」とした点も特徴的です。
ファッションやアートからの延長線上で建築を学ぶイメージを打ち出し、既存の学生層や志望者をスムーズに取り込もうとしています。
共立女子大学の場合

共立女子大学は2023年4月に「建築・デザイン学部」を新設しました。
1学年の定員は120名で、建築コースが6割、デザインコースが4割の構成です。
この新学部は、受験生から非常に高い人気を集めています。
同大学他学部の受験倍率が2倍前後であったのに対し、建築・デザイン学部は6倍に達しました。
その理由として、「一級・二級建築士の受験資格を得られる」点が大きく評価されたことが挙げられます。
さらに共立女子大学の先生によると、女子生徒の資格志向の高まりも背景にありました。
建築分野は資格によってキャリアを形成しやすく、将来性を見据えた進学先として選ばれやすい傾向が強まっています。
女子大学や専門学校で建築系学科の開設が増えている理由

女子大学や専門学校が相次いで建築系学科を新設しているのは、複数の要因が重なった結果です。
リケジョへの注目と建設業界の人手不足が重なった今、建築系学科の新設が増えています。
リケジョへの注目
「理系女子(リケジョ)」という言葉は2010年頃から使われています。
リケジョのワードがネットやニュースで取り上げられ、注目を集めました。
その結果、理系に興味を持つ女性が増えました。
つまり2010年以降、リケジョは増えています。
建設業界の人手不足
2010年頃は、建設業界不況の時期でした。
そのためリケジョのワードが流行っても、建設系の学科は増えなかったのでしょう。
しかし現在は、人手不足で建設業界は困っています。
さらに建築士資格の緩和があり、指定学科の価値は高まりました。
新設された建築学科の今後

「女性ばかりだから」を理由に、共学ではなく女子大学の建築系学科を選ぶ人もいるでしょう。
共学では男性の割合が高く、女性の割合は1割にも満たないケースもあります。
そのため共学ではなく、女子大学での建築系学科新設が増えていると考えられます。
新設された建築系学科は、現在のところ高い志願者を集めており、順調なスタートを切っているようです。
しかし、今後の課題も考えられます。
建築士が増えるだけで良い、となるのは問題です。
現場を理解していない学校が増えてしまうと、実際の建設現場とのギャップが生まれる可能性があります。
かっこいいイメージは間違いありませんが、泥臭い作業もたくさんこなしている側面もあるためです。
今は受験者が集まっていますが、10年後に同じ状態が続くとは限りません。
今後の動きに注目です。
まとめ:人材不足で女子大学や専門学校に建築系学科が増えている
近年、女子大学や専門学校が建築系学科を次々と新設しています。
さまざまな背景がありますが、大きく分けて以下の3点が理由です。
- 法改正による資格取得要件の緩和
- 建設業界の人手不足
- 女子生徒の資格志向の高まり
そして学校経営上の戦略といった複数の要因が絡んでいます。
事例からも分かるように、「資格が取れる」「就職に強い」などの明確なメリットは学生を惹きつけてるでしょう。
ただし、教育が資格取得に偏りすぎると、現場で活躍できる人材が育たない危険性もあります。
建築系学科が単なるブームで終わらず、業界全体の発展につながるかは、今後の動きに注目です。
建築士以外にも、女性は建設業界で活躍できます。
例えば施工管理です。施工管理を女性におすすめする理由は、以下の記事で解説しています。
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