建設現場の安全管理が変わる?顔認証と体調管理を連携する新システムが登場

建設現場では、作業員の安全を確保するために、日々の体調確認や入退場管理が欠かせません。
しかし、多くの協力会社が出入りする現場では、作業員の登録や管理に手間がかかり、安全管理を担当する施工管理者の負担も大きくなりがちです。
こうした課題を解決する新たな技術として、顔認証システムとウェアラブル型の体調管理システムを連携させる取り組みが注目されています。
2026年10月22日、株式会社GRIFFY、村本建設株式会社、株式会社キッズウェイの3社は、顔認証システム「FACEma」と体調管理ソリューション「GenVital LTE」を連携させる新システムについて、2026年12月下旬から提供を開始する予定だと発表しました。
すでに実際の建設現場でテスト運用が始まっており、建設現場の安全管理を効率化する技術として期待されています。
この記事では、新システムの仕組みや開発の背景、施工管理業務への影響、導入時の注意点について詳しく解説します。
顔認証と体調管理を連携する新システムとは?

GRIFFY・村本建設・キッズウェイの3社が共同開発
今回発表されたのは、以下の3社が共同で開発する連携システムです。
| 企業名 | 主な役割 |
|---|---|
| 株式会社GRIFFY | 体調管理ソリューション「GenVital LTE」の提供 |
| 村本建設株式会社 | 建設現場での実証試験への協力 |
| 株式会社キッズウェイ | 顔認証システム「FACEma」の提供 |
新システムの目的は、顔認証による入退場管理と、ウェアラブル端末による体調管理を結びつけることです。
従来、体調管理用の端末を利用する際には、作業員が変わるたびに管理システム上で利用者情報を登録・更新する必要がありました。
特に建築工事では、工程の進行に伴って現場に入る作業員が頻繁に入れ替わります。
このため、体調管理システムを導入しても、利用者登録が管理者側の負担になるという課題がありました。
今回の連携は、作業員の入場時に利用者登録を簡単に完了させることで、こうした負担の軽減を目指しています。
2026年12月下旬から提供開始予定
3社の発表によると、2026年10月6日から村本建設の工事現場でテスト運用が開始されています。
試験運用の規模は以下のとおりです。
- 大阪府内の建設現場:50台
- 京都府内の建設現場:20台
- 合計:70台
いずれも体調管理用の「GenVital LTE」を使用しています。
2026年10月24日時点では、連携システムは正式提供前の段階です。
今後、現場でのテスト運用を経て、2026年12月下旬からの提供開始が予定されています。
なお、顔認証システム「FACEma」と体調管理システム「GenVital LTE」は、それぞれ既存のサービスとして提供されています。今回新しく導入されるのは、両者の利用者情報を結びつける連携機能です。
新システムはどのように作業員の体調を管理する?
FACEma:顔認証で作業員を識別する
「FACEma(フェイスマ)」は、キッズウェイが提供する顔認証システムです。
現場に設置された端末で作業員の顔を認証し、入退場を管理します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録された技能者情報と連携する仕組みも備えています。
従来のようにカードを取り出して読み取らせる方法とは異なり、顔認証によって作業員を識別できる点が特徴です。
これにより、現場の入退場記録を効率的に管理できます。
GenVital LTE:ウェアラブル端末で体調を把握する
「GenVital LTE(ゲンバイタルLTE)」は、リストバンド型のウェアラブル端末を使った体調管理ソリューションです。
主に以下の情報を活用します。
- 作業員の心拍数
- 作業員の年齢
- 現場の暑さ指数(WBGT)
- 端末から取得する位置情報
これらのデータをもとに、体調管理判定アルゴリズムが熱中症などのリスクを評価します。
リスクが設定された基準を超えると、作業員本人と管理者にアラートを通知する仕組みです。
また、既存のGenVital LTEには、転倒通知やSOS通知、一定時間動かない状態を検知する機能なども追加されています。
つまり、単に心拍数を表示するだけでなく、作業員の異変に気づくための情報を管理者へ届けるシステムとなっています。
ただし、計測データによるリスク判定は医師による診断とは異なります。アラートが出ない場合でも体調不良が発生する可能性はあるため、本人への声かけや現場巡視は引き続き必要です。
顔認証とQRコードで利用者登録を簡素化
今回の連携で注目されているのが、利用者登録の仕組みです。
作業員は現場に入場する際、以下の流れで登録を行います。
- 「FACEma」で顔認証を行う
- 使用する「GenVital LTE」のQRコードを顔認証端末のリーダーにかざす
- 認証された作業員と端末の情報が紐づく
- 体調管理システム上の利用者登録が完了する
従来は管理者が手作業で利用者情報を更新していましたが、この操作を簡素化できます。
重要なのは、顔認証だけで全てが完結するのではなく、顔認証と端末のQRコード読み取りを組み合わせる仕組みであることです。
また、発表によると、GenVital側のクラウドがCCUSへ直接接続するわけではありません。体調管理に必要な識別情報として、氏名・年齢・性別を取得する設計とされています。
なぜ建設現場で顔認証と体調管理の連携が必要なのか?

作業員の入れ替わりが多く、管理業務が複雑だから
建設現場には、複数の専門工事業者が関わります。
例えば、建築工事では次のように工程ごとに作業員が入れ替わります。
- 基礎工事:土工・鉄筋工・型枠工など
- 躯体工事:鉄筋工・型枠工・コンクリート関連業者など
- 仕上げ工事:内装工・設備工・電気工など
現場によっては、同じ日に複数の協力会社が入退場を繰り返すこともあります。
こうした環境では、体調管理端末の利用者情報を正確に更新し続けることが重要です。
しかし、管理者が一人ずつ登録する方法では、人数が増えるほど作業負担も大きくなります。
顔認証と体調管理の連携によって、登録の手間を減らし、安全確認に時間を使いやすくなることが期待されます。
熱中症対策の重要性が高まっているから
建設現場で体調管理が注目される理由の一つが、熱中症対策です。
厚生労働省が公表した2025年の確定値によると、職場での熱中症による死傷者数は1,803人でした。
これは死亡者と4日以上の休業を伴う負傷者を合わせた人数で、統計開始以来最多となっています。
また、2025年6月1日には改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑熱作業を対象に、熱中症の重篤化を防ぐための対応が強化されました。
事業者に求められる主な対策は以下の3つです。
- 熱中症が疑われる作業員を早期に発見するための報告体制の整備
- 作業からの離脱や身体冷却など、重篤化を防ぐ手順の作成
- これらの体制・手順を関係作業者へ周知すること
ウェアラブル端末は、こうした安全管理を補助する技術として活用が期待されます。
ただし、システムを導入するだけで法律上の熱中症対策義務を満たせるわけではありません。
報告体制の整備や緊急時の対応手順などは、引き続き現場ごとに確保する必要があります。
熱中症対策の基準について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
顔認証と体調管理の連携で施工管理はどう変わる?

① 作業員の登録・管理にかかる手間を削減できる
従来、体調管理端末の利用者が変わる場合は、管理者が情報を更新する必要がありました。
新システムでは、作業員が入場時に顔認証とQRコードの読み取りを行うことで登録できます。
これにより、利用者の登録漏れや更新作業の負担を減らせる可能性があります。
ただし、実際にどの程度の時間短縮につながるかは、今回の発表では示されていません。
導入効果を判断するには、現場ごとの運用結果を確認する必要があります。
② 作業員の体調リスクを把握しやすくなる
施工管理者にとって、安全管理で難しいのは、作業員一人ひとりの体調を常に把握することです。
特に大規模な現場では、全ての作業員の状態を直接確認し続けることは困難です。
GenVital LTEのようなシステムを活用すれば、心拍数や暑さ指数などのデータをもとに、異変の兆候を把握するための情報を得られます。
例えば、作業員に体調リスクを示すアラートが出た場合、管理者が本人の状況を確認し、必要に応じて休憩や作業中止を判断するといった対応が考えられます。
安全管理が「巡視や声かけだけに頼る方法」から「人による確認とデータを組み合わせる方法」へ広がることが期待されます。
③ 異常発生時の初動対応を支援できる
GenVital LTEには、転倒やSOS発信などを管理者へ知らせる機能があります。
端末から取得した位置情報を確認することで、異変が起きた作業員の居場所を把握する際にも役立ちます。
例えば、広い敷地の現場で転倒通知が発生した場合、管理者が対象者の位置や通知時刻を確認し、近くの職長に状況確認を依頼するといった運用が考えられます。
ただし、通知が正常に届くためには通信環境や端末の装着状態も重要です。
機器の故障や通信障害に備え、従来の緊急連絡体制も維持する必要があります。
④ 施工管理者の仕事が「記録」から「判断」へ変化する
顔認証やウェアラブル端末が普及すると、これまで人が行っていた記録・確認作業の一部をデジタル技術が補助するようになります。
一方で、データを取得することと、適切な安全対策を実施することは別の問題です。
例えば、熱中症リスクが高いことをシステムが知らせても、実際に作業を止めるか、休憩を増やすか、担当作業を変更するかは現場の状況を踏まえて判断する必要があります。
今後の施工管理者には、デジタル技術を使う能力だけでなく、データを安全対策に結びつける判断力がより重要になると考えられます。
新システム導入で注意したい5つのポイント
① 個人情報の取り扱いを明確にする
顔認証データや体調に関する情報は、取り扱いに配慮が必要です。
特に顔特徴データを利用する場合、個人情報保護法に基づく適切な管理が求められます。
個人情報保護委員会は、顔特徴データなどを扱うシステムについて、アクセス権限の制限や管理責任者の設定、漏えい防止策などの重要性を示しています。
導入時には、少なくとも以下を確認しておくことが大切です。
- どの情報を取得するのか
- 誰がデータを閲覧できるのか
- データを何の目的に利用するのか
- いつまで保存するのか
- 協力会社の作業員へどのように説明するのか
安全管理のためのシステムであっても、取得した情報を無制限に利用してよいわけではありません。
② アラートが出ない場合でも体調確認を続ける
ウェアラブル端末が示すリスク判定は、作業員の体調を確認するための補助情報です。
数値に異常がなくても、本人が体調不良を訴える場合があります。
そのため、システム導入後も朝礼時の体調確認や作業中の声かけ、現場巡視を継続することが重要です。
③ アラート発生時の対応者を決めておく
通知が届いても、誰も対応しなければ安全対策にはつながりません。
導入前に、次のようなルールを決めておく必要があります。
- 一次対応を行う担当者
- 担当者が不在の場合の連絡先
- 作業中止や休憩を判断する責任者
- 緊急時の救急要請手順
- 対応内容の記録方法
システムが異変を知らせ、人が状況を確認して対応するという役割分担を明確にすることが大切です。
④ 機器の装着・通信環境を確認する
GenVital LTEは、作業員がリストバンド型端末を装着して利用する仕組みです。
そのため、端末の装着忘れや充電不足などがあると、期待する情報を取得できない可能性があります。
また、地下や建物内部など、通信環境によっては確認が必要な場所もあります。
導入前には、実際の作業場所で適切に利用できるかを検証することが望まれます。
⑤ 費用対効果を実際の運用で確認する
今回の連携システムについて、2026年10月24日時点の発表では、具体的な利用料金や導入による作業時間削減率は示されていません。
施工管理者や建設会社が導入を検討する際には、次の項目を比較することが重要です。
- 顔認証端末の導入・利用費用
- ウェアラブル端末の必要台数
- 通信費やシステム利用料
- 利用者登録にかかる時間の変化
- アラート確認や対応に必要な人員
システムの機能だけでなく、実際の現場で継続的に運用できるかを検討する必要があります。
施工管理者が今から準備しておきたいこと
顔認証と体調管理の連携が今後普及する可能性を踏まえると、施工管理者は次のような準備を進めておくとよいでしょう。
| 確認項目 | 具体的な対応 |
|---|---|
| 入退場管理 | 現在の管理方法と登録作業の負担を確認する |
| 体調管理 | 朝礼・巡視・熱中症対策の運用を整理する |
| 緊急対応 | アラート発生時の連絡先と対応手順を定める |
| 個人情報 | 顔認証・体調データの取り扱いルールを確認する |
| 通信環境 | 地下や屋内を含め、利用予定場所の通信状況を確認する |
| 導入効果 | 費用、登録時間、管理工数などの比較項目を決める |
重要なのは、新しい技術が登場したからといって、すぐに全ての現場へ導入する必要があるわけではないことです。
まずは現在の安全管理業務を整理し、どこに負担や課題があるのかを明確にすることが先決です。
そのうえで、新しいシステムが自社の課題解決につながるかを判断するとよいでしょう。
よくある質問
Q1. 顔認証だけで作業員の体調を測定できるのですか?
いいえ。
今回のシステムでは、顔認証システム「FACEma」が作業員を識別し、ウェアラブル端末「GenVital LTE」が心拍数などの情報を取得します。
両者を連携させることで、利用者登録の手間を軽減する仕組みです。
Q2. 新システムはいつから利用できますか?
2026年10月22日の発表では、2026年12月下旬からの提供開始が予定されています。
2026年10月24日時点では、村本建設の現場でテスト運用中です。
Q3. 導入すれば熱中症対策の義務を満たせますか?
システムを導入するだけでは、法律上必要な対策が完了するわけではありません。
熱中症の早期発見に向けた報告体制、重篤化を防ぐための対応手順、関係者への周知などは、引き続き必要です。
Q4. 施工管理者の仕事は減りますか?
利用者登録などの事務作業については、負担軽減が期待されます。
ただし、削減できる時間は現場の規模や運用方法によって異なり、今回の発表時点では具体的な削減率は公表されていません。
また、アラート発生時の対応判断など、施工管理者が担う役割は引き続き重要です。
Q5. 顔認証や体調管理システムは建設現場で義務化されていますか?
今回紹介した顔認証とウェアラブル端末の連携システムについて、全国の建設現場への導入が一律に義務付けられているわけではありません。
一方、一定の暑熱作業については、労働安全衛生規則に基づく熱中症対策が義務付けられています。
技術の導入と法律上の義務は区別して考える必要があります。
顔認証の次はAI・建設DX!これからの現場管理を関連記事でもチェック

今回の顔認証と体調管理の連携は、建設DXが単なる業務効率化から、作業員の安全を支える段階へ広がっていることを示す事例といえます。
今後は、ウェアラブル端末やAI、現場カメラなどを組み合わせ、施工管理者の判断を支援する技術がさらに増えていく可能性があります。
建設業界の新技術や安全管理の最新動向を知りたい方は、ぜひ施工管理チャンネルMAGAZINEの関連記事もご覧ください。
建設DXの導入事例から、熱中症対策、現場監督の働き方まで、実務に役立つ情報を幅広く紹介しています。
まとめ
建設現場の安全管理では、作業員の体調を適切に把握し、異変が起きた際に迅速に対応することが重要です。
今回発表されたGRIFFY・村本建設・キッズウェイの連携システムは、顔認証とウェアラブル型の体調管理システムを結びつけ、作業員の利用者登録を簡素化する取り組みです。
2026年10月6日から村本建設の現場で70台規模のテスト運用が行われており、2026年12月下旬からの提供開始が予定されています。
この技術によって、利用者登録などの作業負担が軽減されれば、施工管理者が現場の安全確認や異常発生時の対応に時間を使いやすくなる可能性があります。
一方で、機器の導入だけで安全管理が完結するわけではありません。
作業員への声かけ、現場巡視、緊急時の対応、個人情報の適切な取り扱いなど、人が担うべき役割も残ります。
これからの施工管理で重要なのは、デジタル技術に安全管理を任せきりにすることではなく、技術が提供する情報を適切な現場判断につなげることです。
顔認証と体調管理の連携は、そのための新しい選択肢の一つになるでしょう。











