建設業界の入社数推移|直近5年の統計から人手不足の実態を読む
結論からいうと、建設業の入職者数はこの5年(※今回の記事では明確なデータの存在する2020年〜2024年で定義しております)で一直線に増えたわけではなく、
2022年に落ち込み、2023年に持ち直し、2024年に再び増加という流れです。しかも、人数が戻ってきたように見えても、高齢化や離職の問題が残っているため、「採れているから安心」とは言い切れません。
この記事では、厚生労働省の「雇用動向調査」などをもとに、建設業界の入社数推移を直近5年で整理しながら、採用市場でいま何が起きているのかをわかりやすく解説します。
採用担当者はもちろん、建設業界への転職を考えている方にとっても、現場のリアルが見えてくるはずです。
建設業界の入社数推移は、直近5年でどう変わったのか
まず押さえたいのは、「建設業界の入社数」は統計上では入職者数として把握される点です。
厚生労働省の雇用動向調査では、建設業の年間入職者数は、2020年277.1千人、2021年273千人、2022年220.5千人、2023年278.8千人、2024年294.0千人でした。2022年に大きく落ち込んだあと、2023年に回復し、2024年はこの5年で最も高い水準になっています。
2020年〜2022年は横ばいから減少、2023年以降は回復基調
2020年の建設業入職者数は277.1千人でした。
2021年は273千人前後で、ほぼ横ばい圏です。しかし2022年は220.5千人まで減っており、採用の勢いが一段弱まったことがわかります。特に2022年は、同年の離職者数287.1千人を入職者数が下回っており、人数面では明確な「離職超過」でした。
その後、2023年は278.8千人まで回復し、2024年は294.0千人へ増加しました。
2024年は離職者数250.3千人に対して入職者数が294.0千人となり、3年ぶりに入職者数が離職者数を上回ったと厚生労働省資料でも整理されています。直近では改善傾向が見られるものの、これは「人手不足が解消した」ことを意味するわけではありません。
直近5年の入社数推移を、ひと目で整理するとこうなる
建設業界の入社数推移を、読みやすく整理すると次の通りです。
直近5年の建設業入職者数
- 2020年:27.7万人
- 2021年:27.3万人前後
- 2022年:22.1万人
- 2023年:27.9万人
- 2024年:29.4万人
この数字から読み取れるポイントは明確です。
建設業界の入社数は不安定に上下しており、安定的に右肩上がりではないということです。特に採用計画を立てる企業側は、単年の増減だけでなく、離職や年齢構成とあわせて見る必要があります。
建設業界の入社数が増えても、人手不足が解消しにくい理由

「2024年は入職者が増えたのだから、採用環境は良くなっているのでは」と考える方も多いでしょう。
しかし結論としては、入社数の回復だけでは建設業界の人手不足は埋まりにくいです。なぜなら、建設業はもともとの就業者数が長期で減少しており、さらに高齢化も進んでいるからです。
厚生労働省系の建設業ポータルでは、建設就業者数は現在約477万人で、就業者のうち36.7%が55歳以上とされています。全産業の55歳以上割合32.4%と比べても高く、担い手不足が構造的な問題であることがわかります。つまり、毎年の入社数が多少増えても、退職や高齢化の波を打ち返すには十分ではない場面があるのです。
入職者数より離職者数が多い年がある
建設業界の採用を考えるうえで見逃せないのが、離職とのバランスです。
たとえば2022年は入職者数220.5千人に対し、離職者数は287.1千人でした。2023年も入職者数278.8千人、離職者数281.5千人で、わずかに離職超過です。2024年は294.0千人対250.3千人で改善しましたが、ここ数年ずっと余裕がある状態ではありません。
このため、採用担当者は「何人採れたか」だけでなく、何人定着したかまで見ないと実態を誤ります。
建設業界は現場環境や労働時間、処遇、資格取得支援の有無などで定着率に差が出やすく、採用数だけを追うと、結果的に採っては辞める状態に陥りがちです。これは中長期で採用コストを押し上げる要因にもなります。
高齢化で「補充採用」が必要な業界になっている
建設業界では、若手を増やす採用だけでなく、高齢層の退職を埋める補充採用の意味合いも強くなっています。
国の資料では、建設業の技能労働者数は2024年時点で300万人とされ、就業者全体の高齢化も進んでいます。技能承継の観点でも、単に人数を採るだけでなく、若手が育つ職場づくりが必要です。
ここで重要なのは、入社数の増減を「景気」だけで説明しないことです。
建設業界では、採用難と世代交代が同時進行しています。そのため、たとえ直近の入社数が増えても、将来の担い手確保という意味では、まだ道半ばといえます。
建設業界の入社数は、どんな人が支えているのか

建設業界の入社数を深く見ると、誰が入ってきているのかも重要です。
厚生労働省資料では、2024年の建設業入職者のうち、約72%を転職入職者が占めるとされています。つまり、建設業の採用は新卒中心というより、中途採用が大きな柱です。
建設業界の入社は「転職入社」が中心
建設業入職者の職歴別状況では、建設業は全産業平均よりも転職入職者の割合が高い傾向があります。
これは、異業種からの流入だけでなく、建設業内での会社間移動も一定数あるためです。企業にとっては経験者を採りやすい面もありますが、そのぶん待遇や働き方で比較されやすい市場とも言えます。
採用活動で応募が集まりにくい企業は、求人票の出し方だけでなく、比較対象になっている他社との差を見直す必要があります。
給与、休日、残業管理、資格支援、キャリアパスの見せ方が弱いままだと、転職市場では埋もれやすくなります。建設業の採用は、いまや「待てば来る」時代ではありません。
新規学卒者は一定数いるが、爆発的には増えていない
一方で、新規学卒者の流入もゼロではありません。
厚生労働省の建設業ポータルでは、建設業への新規学卒者の入職者数は、2009年の2.9万人を底に、直近では4万人前後で推移しているとされています。回復はしているものの、急増しているわけではなく、若手採用だけで人手不足を埋めるのは難しい状況です。
つまり、建設業界の入社数を支えているのは、新卒の大量流入ではなく、中途採用と一定の学卒入職の組み合わせです。
採用戦略としては、新卒一本足打法よりも、未経験中途、経験者、若手育成層など、複数の入口を持つほうが現実的です。
建設業界の入社数推移から、採用担当者が考えるべきこと

ここまでの数字を踏まえると、建設業界の採用で大切なのは「母数が少ない中でどう選ばれるか」です。
2024年は入職者数が29.4万人まで回復しましたが、就業者全体の高齢化や長期的な担い手不足という構造は変わっていません。だからこそ、採用広報や職場改善の差が、以前よりも結果に直結しやすくなっています。
採用数の確保には、求人条件の見せ方が重要
建設業界では、「人が来ない」のではなく、比較された結果として選ばれていないケースも少なくありません。
とくに転職者が多い業界では、賃金水準、年間休日、残業時間、資格取得支援、現場配置の考え方などが応募判断に直結します。現場の魅力を言語化できていない会社ほど、採用競争で不利になりやすいです。
また、若手に対しては「何を学べるか」「どこまで成長できるか」を示すことも欠かせません。
単に「人手が足りないから来てほしい」ではなく、入社後の育成ルートが見える採用が、これからの建設業界では強くなります。
これからは採用数より定着率がさらに重要になる
採用難の時代において、1人採る価値は以前より大きくなっています。
そのため、採用担当者は入社数だけでなく、早期離職率や配属後のフォロー体制まで含めて設計する必要があります。建設業界では、入職者数と離職者数の差が小さい年も多く、定着しない採用はそのまま人手不足の固定化につながります。
採用→育成→定着の流れを一本で考えることが、これからの建設業界では欠かせません。
入社数推移の数字は、その必要性をはっきり示しています。単年で増えた減ったを見るだけでなく、自社の採用体制を見直すきっかけとして活用することが重要です。
まとめ
建設業界の入社数推移を直近5年で見ると、2020年27.7万人、2021年27.3万人前後、2022年22.1万人、2023年27.9万人、2024年29.4万人という流れでした。
2022年に落ち込んだあと、2023年・2024年は回復しています。ただし、就業者全体の高齢化、離職者数とのせめぎ合い、若手不足という課題は依然として重く、単純に「採用が戻った」とは言えません。