地下埋設物の損傷事故を防ぐには?日建連の最新安全啓発から考える施工管理の注意点

建設現場での掘削作業には、地上からは確認できない危険が潜んでいます。
その代表的なものが、地中に埋設されたガス管、水道管、電力ケーブル、通信ケーブルなどの地下埋設物です。
これらを工事中に損傷すると、作業員の負傷だけでなく、ガス漏れや断水、停電、通信障害など、周辺地域の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
こうした事故を防ぐため、一般社団法人日本建設業連合会(日建連)は、2026年10月21日に「第46回地下埋設物安全旬間」に関する啓発ポスターを公開しました。
2026年度は、11月1日から11月10日までの10日間を「地下埋設物安全旬間」とし、現場での安全意識向上や事故防止対策の徹底を呼びかけています。
また、外国人作業員を含めた安全教育に活用できるよう、多言語の啓発ポスターも作成されています。
本記事では、日建連の最新の取り組みを紹介するとともに、地下埋設物の損傷事故が発生する原因や、施工管理者が注意すべきポイントについて解説します。
日建連が「第46回地下埋設物安全旬間」を実施

2026年11月1日から10日間にわたり安全対策を強化
日建連は、地下埋設物の損傷事故を防止するため、毎年「地下埋設物安全旬間」を実施しています。
2026年度の実施概要は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 第46回地下埋設物安全旬間 |
| 準備月間 | 2026年10月1日~10月31日 |
| 実施期間 | 2026年11月1日~11月10日 |
| 主な目的 | 地下埋設物に関する安全意識の向上と損傷事故の防止 |
| 主な活動 | ポスター掲示、現場点検、安全教育、講習会など |
日建連が公開した実施要領では、地下埋設物の状況を正確に把握し、それぞれの現場に適した作業方法と事故防止対策を検討することが重要とされています。
また、発注者や地下埋設物管理者との連携を強化することも、活動の重点項目に挙げられています。
地下埋設物に関する事故は、現場内だけの問題にとどまりません。
周辺住民や公共交通、企業活動などにも影響する可能性があるため、施工管理者には広い視点での安全管理が求められます。
2026年度は多言語の安全啓発ポスターを公開
今回の安全啓発では、多言語に対応したポスターも公開されています。
日建連の公式サイトでは、英語をはじめ、インドネシア語、タイ語、ネパール語、ベトナム語、中国語などのポスターがダウンロードできるようになっています。
建設現場では、さまざまな国籍の作業員が従事していることから、言葉の違いによる認識のずれを防ぐことも重要です。
例えば、日本語の安全指示を十分に理解できていない状態で掘削作業を進めると、埋設管の位置や接触リスクが正しく伝わらない可能性があります。
そのため、外国人作業員への安全教育では、母国語に対応した資料や図解などを活用することが効果的です。
ただし、ポスターを掲示するだけで安全が確保されるわけではありません。
施工管理者は、作業員が危険箇所と作業手順を理解しているか、実際に確認することが大切です。
地下埋設物の損傷事故はなぜ危険なのか?
地下埋設物とは?
地下埋設物とは、道路や建物の敷地などの地中に設置されている配管・ケーブル類などを指します。
代表的なものは、以下のとおりです。
| 地下埋設物の種類 | 損傷した場合に想定される影響 |
|---|---|
| ガス管 | ガス漏れ、火災、爆発など |
| 上水道管 | 漏水、断水、道路冠水など |
| 下水道管 | 排水機能の障害、周辺地盤への影響など |
| 電力ケーブル | 感電、停電、設備停止など |
| 通信ケーブル | インターネットや電話などの通信障害 |
これらは地域の生活や産業活動を支える重要なインフラです。
特にガス管や電力ケーブルの損傷は、重大な人的被害につながるおそれがあります。
また、直接損傷しなかった場合でも、工事に伴う振動や地盤変位などが埋設物に影響を与えることがあります。
施工管理者は、掘削位置だけでなく、周辺地盤や近接する埋設設備も含めて安全性を確認する必要があります。
損傷事故につながる主な原因
地下埋設物の損傷事故は、さまざまな要因が重なって発生します。
主なリスクとして、次のようなものが挙げられます。
- 埋設物の位置や深さを十分に確認していない
- 図面と実際の埋設状況に違いがある
- 試掘による確認が不十分なまま掘削を進める
- 重機のバケットや杭などが埋設物に接触する
- 埋設物管理者との協議・立会いが十分に行われていない
- 作業員への危険箇所の周知が不足している
特に注意したいのが、図面に記載された位置と実際の埋設位置が必ずしも一致するとは限らないという点です。
既存の配管が移設されていたり、過去の工事に関する記録が十分に残っていなかったりする場合も考えられます。
そのため、図面を確認しただけで埋設物の位置を確定したと判断せず、必要に応じて現地調査や試掘などを行うことが重要です。
施工管理者が徹底すべき5つの事故防止対策
地下埋設物の損傷事故を防止するためには、着工前の調査から施工中の確認、作業終了後の管理まで、一貫した対策が必要です。
ここでは、施工管理者が特に注意したい5つのポイントを紹介します。
① 着工前に埋設物の位置・種類・深さを確認する
まず重要なのが、工事着手前の事前調査です。
施工管理者は、発注者や地下埋設物管理者から必要な図面・資料を入手し、工事範囲に存在する埋設物を確認します。
確認すべき主な項目は、次のとおりです。
- 埋設物の種類
- 埋設されている位置・深さ
- 管径や設備の仕様
- 工事範囲と埋設物との離隔
- 必要な防護措置
- 管理者への連絡方法
また、複数の配管やケーブルが集中する場所では、埋設物同士の位置関係も把握する必要があります。
図面や資料に不明点がある場合は、埋設物管理者への確認を行い、必要な調査方法について協議することが大切です。
② 試掘で実際の埋設状況を確認する
図面上で位置を把握した後は、必要に応じて試掘を行い、実際の位置や深さを確認します。
試掘とは、本格的な掘削に先立ち、埋設物の位置などを確認するために地盤の一部を掘り起こす作業です。
地下埋設物の近くで重機を使用する場合、接触による損傷事故が発生する可能性があります。
そのため、埋設物に近接する範囲では、関係者と確認した施工方法に従い、手掘りなど適切な方法で慎重に作業を進める必要があります。
試掘によって埋設物が確認された場合は、管種や位置、深さなどを記録し、作業員全員で情報を共有します。
また、地上にマーキングする場合は、その表示が工事期間中も確認できる状態に保たれているか注意が必要です。
日建連の「地下埋設物現場点検時における指導事項集」でも、試掘や布掘りで確認した埋設物のマーキングを継続して管理することが指導事項として挙げられています。
③ 埋設物管理者との協議・立会いを徹底する
地下埋設物の安全管理では、設備を管理する事業者との連携が欠かせません。
例えば、ガス管であればガス事業者、水道管であれば水道事業者など、埋設物ごとに管理者が異なります。
施工管理者は、関係する管理者と工事方法や施工順序、必要な防護措置などについて事前に協議することが重要です。
また、管理者の立会いが必要な作業については、立会いの日時や対象範囲、確認事項を明確にしておく必要があります。
日建連の指導事項集でも、管理者との打合せや立会いについて記録を作成・保存することが重視されています。
特に、施工計画を変更する場合は注意が必要です。
当初の計画では埋設物に影響しない作業であっても、施工方法や重機の配置が変わることで、新たなリスクが生じる可能性があります。
そのため、変更時には埋設物への影響を再確認し、必要に応じて関係者と協議することが大切です。
④ 重機作業時の接触防止対策を徹底する
地下埋設物の近くでは、重機の動きにも十分な注意が必要です。
バックホウによる掘削だけでなく、杭打ち、杭抜き、地盤改良、土留め設置などの作業でも、埋設物を損傷する可能性があります。
特に注意したいのは、重機オペレーターが埋設物の位置を正確に把握しているかという点です。
施工管理者は、作業前の打合せで危険箇所を共有し、必要な接触防止対策を確認します。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
- 埋設物の位置を図面と現地表示で共有する
- 重機の作業範囲や接近禁止範囲を明確にする
- 必要に応じて誘導員や監視員を配置する
- 埋設物付近では合意した安全な作業方法を徹底する
- 作業条件が変わった場合は、一度作業を止めて再確認する
こうした対策によって、重機オペレーターの判断だけに依存しない安全管理体制を構築することが重要です。
⑤ 緊急時の対応方法を事前に決めておく
どれだけ注意していても、事故のリスクを完全になくすことはできません。
そのため、施工管理者は地下埋設物を損傷した場合の対応方法も事前に決めておく必要があります。
例えば、ガス管や電力ケーブルなどの損傷が疑われる場合は、作業を中止し、作業員を危険区域から退避させたうえで、関係する埋設物管理者や必要な緊急機関へ速やかに連絡することが基本です。
損傷した設備に不用意に近づいたり、専門の管理者による判断を待たずに補修・操作したりすることは避けなければなりません。
日建連の指導事項集でも、昼夜それぞれの緊急連絡先の整備や、緊急資材の管理などが指導事項に含まれています。
事故発生時に混乱しないよう、緊急連絡体制や退避方法について、作業員全員に周知しておくことが重要です。
日建連の資料から考える施工管理のチェックポイント

日建連では、地下埋設物の事故防止に役立つ複数の資料を公開しています。
その一つが、2025年12月に発行された「地下埋設物現場点検時における指導事項集(第3版)」です。
この資料には、1998年度から2024年度までに行われた現場点検における指導内容が整理されています。
施工管理者が参考にできる具体的な指摘事項として、次のようなものがあります。
- 埋設物管理者との協議記録を残す
- 埋設物の位置を示すマーキングを適切に維持する
- 作業員への埋設物事故防止教育を実施する
- 緊急連絡先を昼夜ともに確認できるようにする
- 埋設物の点検結果や不具合の是正状況を記録する
- 埋設物付近で使用する防護設備を適切に管理する
これらは特別な最新機器を必要とする対策ばかりではありません。
むしろ、日々の施工管理で確認できる基本的な事項が中心です。
地下埋設物の事故防止には、新しい技術の導入だけでなく、こうした基本的な管理を確実に実施することが重要といえます。
現場の安全管理に役立つチェックリスト
地下埋設物の損傷事故を防止するため、施工段階ごとに確認したい項目をまとめました。
| 施工段階 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 着工前 | 埋設物の図面・資料を入手しているか |
| 事前調査 | 位置・深さ・種類・管理者を確認しているか |
| 施工計画 | 埋設物への影響と防護方法を検討しているか |
| 試掘 | 現地の埋設状況を確認しているか |
| 作業開始前 | 重機オペレーター・作業員に危険箇所を周知しているか |
| 掘削中 | 埋設物との接触防止対策を実施しているか |
| 防護・維持管理 | 防護設備や点検記録を適切に管理しているか |
| 施工変更時 | 埋設物への影響を再確認しているか |
| 緊急時 | 連絡先・退避方法・対応手順が共有されているか |
※実際の施工では、現場条件、発注者との協議内容、埋設物管理者の指示、適用される基準等に従って対策を実施してください。
このようなチェックリストを活用することで、確認漏れを防ぎやすくなります。
また、作業員への教育や日々の打合せでも、危険箇所と対策を継続的に共有することが重要です。
地下埋設物の事故防止で重要なのは「情報共有」

地下埋設物の損傷事故を防ぐうえで、施工管理者が特に意識したいのが情報共有です。
例えば、現場管理者が埋設管の位置を正確に把握していても、その情報が重機オペレーターや協力会社の作業員に伝わっていなければ、事故を防ぐことは難しくなります。
また、試掘によって新しい埋設物が発見された場合、その情報を関係者全員に共有する必要があります。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
作業前のKY活動で埋設物の位置を確認する
KY活動(危険予知活動)では、その日に実施する作業の危険箇所を確認します。
地下埋設物に近接する作業では、埋設物の位置や作業手順、重機の接近範囲などを具体的に共有することが大切です。
図面だけでなく現地で確認する
図面上の位置を説明するだけでなく、実際の施工場所で埋設物の位置やマーキングを確認することで、作業員の理解を深められます。
変更事項を速やかに共有する
掘削範囲や施工順序、重機配置などが変更された場合は、埋設物との位置関係に問題がないか再確認します。
変更内容が関係者に伝わっていない状態で作業を進めないことが重要です。
地下埋設物の安全管理では、「確認したこと」だけでなく「関係者全員が理解していること」が事故防止につながります。
見えない危険から現場を守るために!施工管理の安全対策をもっと学ぼう

地下埋設物の損傷事故は、現場の作業員だけでなく、周辺地域の生活にも影響を及ぼす可能性があります。
こうした事故を防ぐためには、日々の安全管理に加え、建設業界で共有されている事故防止策や最新の安全対策を学び続けることが重要です。
施工管理チャンネルMAGAZINEでは、今回のような地下埋設物の事故防止に加え、建設現場の安全管理、施工技術、法改正、建設DXなど、施工管理者に役立つ情報を幅広く発信しています。
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まとめ
日建連は、2026年11月1日から11月10日までの10日間を「第46回地下埋設物安全旬間」とし、地下埋設物の損傷事故を防止するための安全啓発活動を実施します。
地下埋設物には、ガス管や水道管、電力ケーブル、通信ケーブルなどがあり、損傷すると周辺地域にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
そのため、施工管理者は次のような対策を徹底することが重要です。
- 着工前に埋設物の位置・種類・深さを確認する
- 必要な試掘を行い、現地の埋設状況を把握する
- 埋設物管理者との協議・立会いを適切に実施する
- 重機作業時の接触防止対策を徹底する
- 緊急時の対応方法を事前に共有する
また、事故防止には、現場管理者だけでなく、協力会社や作業員を含めた情報共有が欠かせません。
日建連が公開しているポスターや施工管理資料なども活用しながら、現場全体で安全意識を高めることが大切です。
地下埋設物は目に見えない設備だからこそ、事前の調査と確認を徹底し、事故の未然防止につなげていきましょう。











